初任給の引き上げ自体は広がっています。平均の引き上げ額は9,462円でした。ただし規模による差があり、乗り切れない会社がある。
ここで考えるべきは、どこで比べられるかです。求人票は、給与・休日・勤務地を並べて比較するための書式です。比較の土俵に乗った時点で、条件の良い側が有利になります。
では何を出すか。仕事の中身です。求人票の『業務内容』欄には、抽象的な一文しか入りません。実際に一日どう動くのか、何が難しくて、何が面白いのか。ここは条件の欄には書けません。
そしてこれは、会社が書くと嘘くさくなる領域でもあります。だから本人に語ってもらう必要があります。
すでにやっている会社も多く、そして多くが読まれていません。原因は三つです。
一つ目、答えが会社の言葉になっている。『成長できる環境だと感じています』『風通しの良い職場です』。これは本人の言葉ではなく、聞き手が期待した答えを本人が推測して返したものです。
二つ目、良いことしか書いていない。読む側は、都合の良い話だけの記事を信じません。難しかったこと、向いていない人の話が一つもない記事は、広告として読み飛ばされます。
三つ目、仕事が書かれていない。人柄や雰囲気の話に終始し、実際に何をしているのかが分からない。応募を検討する人が知りたいのは、自分にできそうかどうかです。
聞き方を変えるだけで、中身は変わります。抽象的な問いを捨てて、時間と場面を指定します。
『昨日の朝、出社して最初にやったことは何ですか』。一日の流れが、具体で出てきます。
『直近で一番手こずった仕事は何でしたか』。難しさが、実例で出てきます。
『入社前に思っていたのと違ったことはありますか』。ここで出てくるのが、いちばん読まれる部分です。
『どういう人だと、この仕事はつらいと思いますか』。向き不向きを本人に言ってもらう。これを載せる会社は少なく、載せた会社は信用されます。
逆に聞かない問いは、『会社の魅力は何ですか』です。この問いは、本人に会社の広報を代行させています。
①本人に公開前の確認を取る。修正の申し出があれば必ず反映します。ここを省くと、二人目以降の協力が得られません。
②きれいに整えすぎない。話し言葉の癖は、多少残したほうが本人らしくなります。整った文章ほど、会社が書いたように見えます。
③退職した場合の扱いを決めておく。記事は残ります。公開時に、退職時は取り下げるという合意を取っておくと、後で揉めません。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。社員の取材記事は、各社で作ってきました。
効果が出たのは、応募数ではなく面接の中身でした。記事を読んで来た応募者は、仕事の具体的な部分について質問してきます。こちらも説明の手間が減り、入社後のずれが小さくなりました。
そして、書く相手を入社2〜3年目に絞ったことが効きました。ベテランの話は、応募者にとって遠すぎます。入社してすぐの困りごとを覚えている人のほうが、読む側の位置に近い。
もう一つ気づいたのは、取材が社内にも効くことです。日々の仕事を言葉にする機会は、普段ありません。取材を受けた本人が、自分の仕事を説明できるようになる。これは採用の副産物というより、人材育成に近い効果でした。
BEACONで伴走する場合、記事の体裁から入りません。まず質問票を作るところから始めます。昨日の朝、直近で手こずったこと、入社前との違い、向いていない人。この四つが入っていれば、誰が聞いても中身は出ます。
そのうえで、対象者の選び方、公開前の確認の取り方、退職時の扱い、そして面接で記事の話が出たかどうかを記録するところまで。発信の効果は、応募数より面接の質に先に出ます。
まずは無料の情報発信診断で、いま自社の強みがどこで止まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に取材する一人を一緒に選びます。
※背景データは、帝国データバンクが2026年2月18日に公表した『初任給に関する企業の動向アンケート(2026年度)』において、2026年度の初任給を前年度から引き上げると回答した企業が67.5%で前年度の71.0%から3.5ポイント低下したこと、規模別では大企業65.6%・中小企業68.2%・小規模企業50.0%であり小規模企業が全体を17.5ポイント下回ったこと、平均引き上げ額が9,462円であったことを参照しました。同調査は2026年2月5日から9日にかけて実施されたものです。本文中の取材手順は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。