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#情報発信#ブランディング#集客・新規
Branding Column · 2026.08.15

紙は引いても、記者は残る
── 地元メディアとの付き合い方(想定事例)

2026年8月6日、産経新聞社が東北6県での産経新聞とサンケイスポーツの発行を、11月30日で休止すると発表しました。輸送コストの上昇などが理由とされています。紙の縮小は続いていて、同社は2024年に富山県での発行を休止し、2025年には夕刊フジなども休刊しています。ただ、今回の発表で見落としてはいけない点があります。取材拠点は維持する方針だということです。紙が減っても、地域を取材する人がいなくなるわけではありません。むしろ枠が減るぶん、誰の話が載るかの選別は厳しくなる。以下は想定事例です。

1.【before】年に一度、リリースを送っては落ちていた

従業員40名の食品加工会社。年に1〜2回、新商品が出るたびに地元紙の県版あてにリリースを郵送していました。結果はほぼ全敗。たまに小さく載る年もありましたが、何が良くて何が悪かったのかは分からずじまいです。

社長の認識は「うちみたいな規模だと相手にされない」でした。実際には、受け取る側の事情は少し違います。地域面を担当する記者は、同時に事件も行政も高校スポーツも追っています。初めて名前を見る会社から、封筒で新商品の案内が届いても、確認に使える時間がない。悪意ではなく、優先順位の問題です。

そして冒頭のような紙の縮小が進むほど、限られた枠は「確実に記事にできる相手」から埋まっていきます。確実というのは、内容が良いという意味ではなく、裏が取りやすく、連絡がつき、話が早い相手という意味です。

枠は確実に記事にできる相手から埋まる。内容の良さより、話の早さ。

2.ネタを持ち込む前に、関係を作るとはどういうことか

誤解されやすいので先に書きます。接待や個人的な付き合いの話ではありません。記者にとって価値があるのは、その地域で何が起きているかを教えてくれる相手です。

地域の記者は、担当エリアの動きを常に探しています。ところが取材網が縮んでいる以上、自力で拾える範囲には限りがある。そこに、業界の内側にいる人が定期的に情報をくれるなら、それは相手にとっての戦力です。自社の宣伝ではなく、業界の動きとして渡す。この関係ができてから自社の話をすると、扱いがまったく変わります。

3.【turn】この会社が始めた、四つのこと

売り込みではなく『情報源』として一度会いに行く
リリースを送る前に、県版の担当記者へ挨拶に行きました。持って行ったのは自社の資料ではなく、業界のいまの動き――原料相場、同業の廃業、季節の需要変化――をまとめたA4一枚。用件は『何かの折に役に立てば』だけ。売り込みでない訪問は、相手の警戒を解きますポイント:最初の訪問では、自社の話を一切しない
媒体ではなく『人』で覚え、異動を追う
地方の記者は数年で異動します。会社としての関係より、個人との関係のほうが実務上は効く。名前と連絡先を記録し、異動の挨拶が来たら後任にもつなぐ。異動先で別の担当になった記者が、後々効いてくることもありますポイント:連絡先は会社ではなく、個人名で管理する
自社の話でない情報も渡す
同業の新しい取り組み、地域で起きている変化、組合で出た話題。自社が主役でない情報を渡せる会社は、極端に少ない。だから覚えられます。しかも記者がその取材をする過程で、情報源としてこちらの名前が出る機会も生まれます。ポイント:自分が載らない情報こそ、関係の投資になる
載らなかった時に、次の一手を用意する
見送られたときこそ差が出ます。『またよろしくお願いします』で終えず、今回は何が足りなかったかを一度だけ聞く。時期が悪かったのか、地域性が弱かったのか、写真がなかったのか。理由が分かれば次の持ち込み方が変わり、聞かれた側もこちらを本気だと認識しますポイント:断られた直後が、いちばん学べる瞬間

4.学び ── 露出は成果ではなく、関係の結果

この会社が最初に地域面に載ったのは、関係を作り始めて半年後でした。しかも載ったのは新商品ではなく、原料高のなかで地元農家との取引を続けているという話。自社が売り込みたかった内容とは違いましたが、記事の中で会社の姿勢は十分に伝わりました。

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。地域で商売をしていると実感するのは、地元メディアに載ることの価値は、集客より信用の側にあるということ。取引先の担当者が社内で稟議を書くとき、金融機関が評価するとき、求職者の家族が会社名を検索したとき。第三者が書いた記事は、自社サイトの100ページ分より重いことがあります。

紙の縮小は今後も続きます。ただ、取材する人が地域からいなくなるわけではない。媒体が減るほど、そこに載る一本の価値はむしろ上がります。枠が減る時代に効くのは、うまいリリースではなく、先に作っておいた関係です。

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※背景データは、産経新聞社が2026年8月6日に東北6県での産経新聞およびサンケイスポーツの発行を2026年11月30日で休止すると発表したこと、輸送コストの上昇などを理由に挙げつつ取材拠点は維持する方針であること、同社が2024年に富山県での発行を休止し2025年に夕刊フジなどを休刊していること=各社の報道を参照しました。本文中の会社・人物は、よくある状況をもとに構成した想定事例です。