7項目のリストは、読んで確認できます。40項目のリストは、読み終わる前に手が動きます。境目はどこかにあり、それを超えるとリストは確認の道具から提出物に変わります。
提出物になったリストには、二つの症状が出ます。①作業前に一括で印を付ける。②前回の控えを見ながら写す。どちらも現場の怠慢ではなく、項目数に対して確認の時間が割り当てられていないことへの適応です。
そして最悪なのは、この状態で記録だけが残ることです。確認していないのに確認した記録がある。問題が起きたときに、記録が役に立たないどころか説明を難しくします。
『その項目は、判断を要するか』。これだけです。
判断を要しない項目とは、見ればすぐ分かる、あるいはやらなければ次の工程に進めないものです。『電源を入れる』『部材を用意する』。やっていなければ作業が止まるので、リストで確認する必要がありません。
逆に残すのは、見落としても作業が進んでしまう項目です。『前回と仕様が変わっていないか』『指定の材質かどうか』『この寸法は公差内か』。気づかずに通過できるものだけが、チェックリストの対象です。
この基準を当てると、多くのリストは半分以下に減ります。
ただし、全部を判断基準で切ってはいけません。
法令や許認可で記録が義務づけられているもの、顧客との契約で確認を約束しているもの、安全に直結するもの。この三つは対象外です。判断を要さなくても残します。
実務の進め方としては、先にこの三つを別の枠に分けてしまうことです。分けたあとで、残りに判断基準を当てる。順番を逆にすると、削る作業の途中で不安になって全体が止まります。
そして分けた結果、リストが二枚になることを恐れないでください。義務の記録と、判断の確認は目的が違います。一枚に混ぜているから、どちらも機能しなくなっています。
削ることへの反対は、必ず一つの形で来ます。『それで漏れたらどうするのか』。
これに対する答えは、確かめる仕組みです。
①削った項目を捨てずに残す。別の紙に『いま確認していない項目』として記録しておく。
②三か月、不具合の内容を記録する。件数ではなく内容です。削った項目が原因の不具合が出たかどうかだけを見ます。
③出たら戻す。出なければそのまま。三か月で一件も出なければ、その項目は元々確認されていなかったということです。
この手順があると、削る決定が実験になります。賭けではなくなるので、現場も社長も納得します。
残した項目も、書き方で効き方が変わります。
①動作ではなく、判断を書く。『寸法を測る』ではなく『寸法が図面の公差内か』。測ったかどうかではなく、結果を問う形にします。
②数値を入れる。『適切な温度か』ではなく『40度から45度か』。適切かどうかの判断を現場に投げると、人によって答えが変わります。
③印ではなく値を書かせる。チェックの印は写せますが、実測値は写せません。書く手間は増えますが、項目を減らした分で吸収できます。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。チェックリストの膨張は、どの会社でも起きました。
いちばん効いたのは、項目を足すときのルールを決めたことでした。一つ足すなら、一つ削る。上限を決めておくと、足す提案のときに『どれを削るか』という議論が自動的に発生します。削る議論は、足す議論より中身が濃い。
失敗もありました。いきなり全部のリストを見直そうとしたことです。現場に10種類以上あって、どれから手を付けるか決まらないまま半年が過ぎた。いちばん記入回数が多い一枚から始めるべきでした。効果がすぐ見えるからです。
もう一つ。削った結果、現場から項目の追加提案が出るようになりました。それまでは、増えることが決まっているものに誰も意見を言わなかった。減らせると分かった途端に、リストが自分たちの道具になった。これは想定していませんでした。
GEARで伴走する場合、新しい様式を作るところから入りません。いま記入回数がいちばん多い一枚を選び、義務の項目を別枠に分け、残りに判断基準を当てるところから始めます。半日で終わります。
そのうえで、削った項目の保管、三か月の不具合記録、戻す判断の基準まで。一つ足すなら一つ削るというルールを運用に置くところまでを設計に含めます。法令・許認可・契約で記録が求められる項目については、個別の確認とセットで進めてください。
まずは無料の業務ムダ診断で、いま現場のどこに手間が溜まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に手を入れる一枚を一緒に選びます。
※本記事の手順および項目数は、中小企業の現場でよくある状況をもとにした一般的な整理であり、特定の企業の実例ではありません。本文中の数値はすべて説明のための仮設例です。法令や許認可、顧客との契約により記録・確認が義務づけられている項目は削減の対象外です。対象範囲の判断は個別にご確認ください。