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#意思決定#人手不足#業務効率化#財務・資金繰り
Operation Column · 2026.08.02

外注か内製かを
『時給』で決めてはいけない
── 最低賃金1,500円時代の判断軸

『外注は高い。うちでやったほうが安い』——中小企業でもっともよく聞く意思決定であり、2026年においてもっとも危うくなった意思決定でもあります。2026年7月28日、最低賃金の改定目安は全国加重平均で55円引き上げ、1,176円と示されました。7月21日に閣議決定された骨太方針2026には、2030年代前半のできる限り早期に全国平均1,500円という目標が明記されています。同じ2026年上半期、人手不足倒産は227件と過去最多。この環境で外注費と自社の時給を並べて比べると、ほぼ確実に間違った側に倒れます

1.『内製のほうが安い』が成立していた条件は、もう揃っていない

内製化の計算は、たいていこう組まれます。外注に月30万円払っている業務がある。社内でやればパート1人で回せそうだ。時給1,200円で月120時間なら14.4万円。半分以下になる、だから内製化しよう——。

この計算が正しかったのは、賃金がほとんど動かず、募集すれば人が採れた時代です。その二つの前提が、今どちらも外れています。

Key Number · 前提が外れた三つの事実
① 最低賃金の改定目安は全国加重平均55円引き上げの1,176円(2026年7月28日)。現行の1,121円から一段上がります。
② 骨太方針2026・日本成長戦略に2030年代前半のできる限り早期に全国平均1,500円が明記。上がる方向は政策として確定しています。
③ 2026年上半期の人手不足倒産は227件で過去最多。業種別では建設業が65件で最多。採用の失敗が倒産理由になる時代です。

つまり今日の時給で計算した内製化は、将来の人件費を先に買う契約に近い。しかも、その先の単価は自社で決められません。加えて日本商工会議所の調査では賃上げを実施・実施予定の企業が71.3%。最低賃金の水準以前に、採り続けるための賃金が上がっていきます。

2.本当の論点は金額ではなく、固定費か変動費か

ここが逆張りの核心です。外注と内製の違いは、価格ではありません。やめられるかどうかです。

外注は変動費です。仕事が減れば止められ、増えれば積める。一方、内製は人件費であり固定費で、仕事が半分になっても給与は半分にできません。同じ金額でも、両者はまったく違う性質のものを買っています。単価だけを並べるのは、賃貸と購入を家賃と月々の返済額だけで比べるのと同じです。

外注と内製の差は値段ではなく、やめられるかどうかにある。

とくに受注量に波のある会社——建設、製造の受託、季節性のある小売や飲食——では、ピークに合わせて人を持つと、閑散期に固定費だけが残ります。だから判断はこうなります。波の谷の分だけ内製で持ち、山の部分は外注で受ける。全部を内製にする必要も、全部を外に出す必要もありません。

3.想定事例 ── 内製化して、3年で外に戻した会社

Case · 想定事例
従業員35名の住宅設備工事会社。図面作成を外注しており、月の支払いは平均28万円。『社内にCADができる人を1人採れば半分で済む』と判断し、正社員を1名採用した。

1年目は狙い通り。ところが2年目、受注が落ちた四半期に手が空いた。3年目、その社員が退職。図面の作り方は本人の頭の中にしかなく、引き継ぎ資料は残らなかった。結局、以前の外注先に戻したが、単価は上がっていた。3年前に切った関係だったからだ。

この会社が失ったのは、差額の積み上げではありません。波を吸収する余力と、外部との関係と、社内に残るはずだった知識——三つ同時です。そして内製化の判断そのものは、当時の計算としては合っていました。間違っていたのは計算ではなく、計算する項目でした

4.時給の代わりに使う、三つの判断軸

その業務は、客が自社を選ぶ理由に触れているか
値段でも納期でもなく、お客様が自社を選び続けている理由に直結する業務——見積の速さ、現場の段取り、品質判定、顧客との接点。ここは高くても内製に寄せる。逆に誰がやっても結果が同じ業務は、外に出しても競争力は落ちません。最初の一手:直近の受注理由を顧客に3件聞き、どの業務が効いたかを特定する
やった経験が、会社に残るか・個人に残るか
内製化の最大の価値は安さではなく学習が社内に蓄積すること。ただし手順が書かれていなければ、蓄積するのは会社ではなく個人で、退職とともに消えます。手順書とセットでない内製化は、内製化ではなく属人化です。最初の一手:内製化するなら、初月に手順書を作る工数を計画に入れる
仕事量の波は、谷でも人を養えるか
見るべきは繁忙期ではなく過去3年で一番暇だった月。その水準でも十分に仕事があるなら内製、そうでないなら谷の分だけ内製・残りは外注に分ける。ピーク基準で人を採ると、閑散期に固定費だけが残ります。最初の一手:過去36か月の受注額を並べ、最小月を確認する

三つのうち二つ以上が内製に振れたときだけ内製化する。この一行を先に決めておくと、目先の単価差に引きずられなくなります。

5.私たちが9社を回して選んでいる、第三の道

BEYONDはコンサルティング会社ではなく、9社の中小企業を自分たちで経営している当事者です。人が採れない痛みも、外注費が上がる痛みも、自社の損益として引き受けてきました。その中でたどり着いたのは、外注か内製かの二択で考えないこと。実際に効いたのは第三の道——『判断は内製、作業は外注』という分け方でした。何を作るか・どこで合格とするかは自社が握り、その基準に沿って手を動かす部分は外に出す。

この分け方が機能する条件は一つだけで、判断基準が言葉になっていることです。基準が書かれていなければ外注先には渡せず、結局すべてを社内で抱えることになる。逆に言葉にできた業務は、外注にも、新しい社員にも、自動化にも同じように渡せます。私たちが受注・発注まわりで自動化できたのも、先にその形にできた業務だけでした。外注か内製かで迷う手前に、言語化という共通の工程があります

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6.GEAR は、二択にする前に業務を仕分ける

GEAR(BEYOND PLAYBOOK)は、外注化も内製化も勧めません。先にやるのは仕分けです。業務を洗い出し → 選ばれる理由に触れる業務を特定し → 判断と作業を切り分け → 波の谷を基準に持ち方を決める。ここまで整えてから、初めて外か内かを決めます。判断基準を紙に落とす具体的な進め方はチェックリストが最も安い品質保証である理由、手順を残す形はマニュアルの作り方でも扱っています。

まずは無料の業務ムダ診断で、いまどの業務が属人化しているかを掴むところから。結果を見ながら、最初に切り分ける業務を一緒に決めましょう。

※本文中の企業事例は、実在の特定企業ではなく、中小企業の現場で起こりやすい状況を再構成した想定事例です。最低賃金に関する記述は、2026年7月28日に中央最低賃金審議会が示した2026年度の改定目安(全国加重平均55円引き上げ・1,176円、現行1,121円)および2026年7月21日閣議決定の骨太方針2026・日本成長戦略に明記された全国平均1,500円の目標に基づきます。改定額は今後の各都道府県審議会で決定されるため、実際の適用額・時期は地域により異なります。人手不足倒産227件(うち建設業65件・2026年上半期・過去最多更新)は株式会社帝国データバンクの集計、賃上げを実施・実施予定の企業71.3%は日本商工会議所の中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査を参照しています。