内製化の計算は、たいていこう組まれます。外注に月30万円払っている業務がある。社内でやればパート1人で回せそうだ。時給1,200円で月120時間なら14.4万円。半分以下になる、だから内製化しよう——。
この計算が正しかったのは、賃金がほとんど動かず、募集すれば人が採れた時代です。その二つの前提が、今どちらも外れています。
つまり今日の時給で計算した内製化は、将来の人件費を先に買う契約に近い。しかも、その先の単価は自社で決められません。加えて日本商工会議所の調査では賃上げを実施・実施予定の企業が71.3%。最低賃金の水準以前に、採り続けるための賃金が上がっていきます。
ここが逆張りの核心です。外注と内製の違いは、価格ではありません。やめられるかどうかです。
外注は変動費です。仕事が減れば止められ、増えれば積める。一方、内製は人件費であり固定費で、仕事が半分になっても給与は半分にできません。同じ金額でも、両者はまったく違う性質のものを買っています。単価だけを並べるのは、賃貸と購入を家賃と月々の返済額だけで比べるのと同じです。
とくに受注量に波のある会社——建設、製造の受託、季節性のある小売や飲食——では、ピークに合わせて人を持つと、閑散期に固定費だけが残ります。だから判断はこうなります。波の谷の分だけ内製で持ち、山の部分は外注で受ける。全部を内製にする必要も、全部を外に出す必要もありません。
この会社が失ったのは、差額の積み上げではありません。波を吸収する余力と、外部との関係と、社内に残るはずだった知識——三つ同時です。そして内製化の判断そのものは、当時の計算としては合っていました。間違っていたのは計算ではなく、計算する項目でした。
三つのうち二つ以上が内製に振れたときだけ内製化する。この一行を先に決めておくと、目先の単価差に引きずられなくなります。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、9社の中小企業を自分たちで経営している当事者です。人が採れない痛みも、外注費が上がる痛みも、自社の損益として引き受けてきました。その中でたどり着いたのは、外注か内製かの二択で考えないこと。実際に効いたのは第三の道——『判断は内製、作業は外注』という分け方でした。何を作るか・どこで合格とするかは自社が握り、その基準に沿って手を動かす部分は外に出す。
この分け方が機能する条件は一つだけで、判断基準が言葉になっていることです。基準が書かれていなければ外注先には渡せず、結局すべてを社内で抱えることになる。逆に言葉にできた業務は、外注にも、新しい社員にも、自動化にも同じように渡せます。私たちが受注・発注まわりで自動化できたのも、先にその形にできた業務だけでした。外注か内製かで迷う手前に、言語化という共通の工程があります。
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▶ 業務ムダ診断をはじめる 無料で相談するGEAR(BEYOND PLAYBOOK)は、外注化も内製化も勧めません。先にやるのは仕分けです。業務を洗い出し → 選ばれる理由に触れる業務を特定し → 判断と作業を切り分け → 波の谷を基準に持ち方を決める。ここまで整えてから、初めて外か内かを決めます。判断基準を紙に落とす具体的な進め方はチェックリストが最も安い品質保証である理由、手順を残す形はマニュアルの作り方でも扱っています。
まずは無料の業務ムダ診断で、いまどの業務が属人化しているかを掴むところから。結果を見ながら、最初に切り分ける業務を一緒に決めましょう。
※本文中の企業事例は、実在の特定企業ではなく、中小企業の現場で起こりやすい状況を再構成した想定事例です。最低賃金に関する記述は、2026年7月28日に中央最低賃金審議会が示した2026年度の改定目安(全国加重平均55円引き上げ・1,176円、現行1,121円)および2026年7月21日閣議決定の骨太方針2026・日本成長戦略に明記された全国平均1,500円の目標に基づきます。改定額は今後の各都道府県審議会で決定されるため、実際の適用額・時期は地域により異なります。人手不足倒産227件(うち建設業65件・2026年上半期・過去最多更新)は株式会社帝国データバンクの集計、賃上げを実施・実施予定の企業71.3%は日本商工会議所の中小企業の賃上げ・賃金改定に関する調査を参照しています。