紙を電子にする作業は、実は二段階あります。①画像として残す、②探せるようにする。
①は数秒で終わります。スマホで撮るだけです。重いのは②で、ファイル名の規則を決め、付ける項目を決め、誰がいつ付けるかを決め、付け忘れを点検する。ここに運用の負荷が全部乗っています。
そして多くの会社が、①と②をまとめて『電子化』と呼び、全部の紙に②まで適用しようとします。結果、始めた月に止まる。
分けて考えれば話は簡単です。②が要るのは、あとで特定の一枚を探す必要がある紙だけ。それ以外は①で足ります。
社内の紙を、保存の目的で分けます。判断は『あとで一枚だけ探すことがあるか』です。
①探す紙。見積書、契約関係、取引先ごとの記録。特定の一件を後から引っ張る必要があります。ここは索引まで要ります。
②まとめて見返す紙。日報、作業記録、現場の写真付きメモ。個別に探すことはほとんどなく、あの週はどうだったかという形で範囲で見ます。日付のフォルダに入れた写真で足ります。
③その場限りの紙。手書きのメモ、会議中の走り書き。撮る必要すらない場合が多い。撮らないと決めることも、立派な電子化です。
この三分類をやると、多くの会社で①は全体の2割前後に収まります。残りの8割に索引をつける労力を、丸ごと省けるということです。
写真だからといって、無秩序に撮ると結局使えません。決めるのは三つだけです。
①保存先を一か所にする。共有フォルダでも業務用のチャットでも構いませんが、置き場所が二つあるとどちらにも溜まりません。
②日付のフォルダに入れる。年月まででよく、日は撮影日時が残るので不要です。範囲で見返すなら、これで届きます。
③一枚に全部を写さない。読めないと意味がないので、A4なら1枚ずつ。見返して読めるかどうかが唯一の品質基準です。
ファイル名は付けません。付け始めると②の工程に戻ります。
ここが最も大事な工程です。何でも写真でよいわけではありません。
国税関係の帳簿書類には電子帳簿保存法に定めがあり、スキャナ保存を行う場合は同法令上の要件を満たす必要があります。対象となる書類の範囲や保存方法の判断は、顧問税理士に確認するのが確実です。
また、契約書や検査記録のように、法令や契約で原本の保存が求められているものもあります。こちらも個別の確認が要ります。
実務上の進め方としては、先に別扱いの紙を棚ごと分離してしまうことです。分離してから、残ったものに対して三分類を当てる。順番を逆にすると、判断の途中で不安になって全体が止まります。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。紙の整理は、どの会社でも一度は行き詰まりました。
失敗の形はいつも同じでした。読み取りの仕組みを先に検討してしまう。見積もりを取り、比較表を作り、半年経っても一枚も電子になっていない。その間も紙は増え続けています。
うまくいったのは、現場の一人がスマホで撮り始めた部署でした。日報を撮って月のフォルダに入れるだけ。道具の検討はゼロです。三か月後、その部署だけ『先月の現場の様子を確認したい』という問い合わせに数十秒で答えられるようになっていました。
そこで初めて、探す必要のある紙が何かがはっきりしました。撮り始めてから、索引が要る紙が分かった。順番はこちらが正しいと思います。検討して分けるのではなく、軽いほうを先に動かして、足りない場所を見つける。
GEARで伴走する場合、道具の比較から入りません。まず別扱いにする紙を棚ごと分離し、残りに三分類を当てるところから始めます。この作業は半日で終わることがほとんどです。
そのうえで、写真で足りる紙の置き場所を一か所に決め、月のフォルダの形を決め、撮る担当を決める。索引づけの仕組みを検討するのは、そのあとです。探す必要が実際に生じた紙にだけ、手をかければ足ります。
国税関係書類の取扱いおよび原本保存が必要な書類については、顧問税理士等への確認とセットで進めます。
まずは無料の業務ムダ診断で、いま現場のどこに手間が溜まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に撮り始める一種類を一緒に選びます。
※本記事の分類および手順は、中小企業の現場でよくある状況をもとにした一般的な整理です。国税関係帳簿書類の保存については電子帳簿保存法に定めがあり、スキャナ保存を行う場合には同法令上の要件を満たす必要があります。本記事はこれらの要件について助言するものではありません。対象となる書類の範囲および保存方法は、顧問税理士に必ずご確認ください。また、契約書・検査記録など法令や契約で原本の保存が求められる書類については、個別にご確認ください。