移行がうまくいかない会社を見ると、電話の性質を過小評価していることが多いものです。電話には、文字にしにくい情報を運ぶ機能があります。
一つ目、急ぎの度合い。メールには『至急』と書けますが、本当に至急かは分かりません。電話は、かけてきたという事実そのものが緊急度を伝えます。
二つ目、言いにくい話。クレームの前段階、支払いの相談、条件の打診。文字に残したくない内容ほど、電話で来ます。ここを塞ぐと、相手は言わなくなる。言わなくなった不満は、次の見積りで消えるという形で現れます。
三つ目、言葉にできない状況。『なんか変な音がする』『いつもと違う』。フォームの入力欄には書けませんが、現場では重要な一次情報です。
とはいえ、電話対応の負担が大きいのも事実です。ここで見るべきは件数ではなく、かかってくる理由の内訳です。
1週間だけ記録を取ると、たいてい似た構成が出ます。①同じ質問(納期、営業時間、場所)、②取次だけで自分は答えない用件、③自分にしか答えられない用件。
①は情報の出し方を変えれば減ります。②は取次のルールを決めれば減ります。減らしてはいけないのは③だけです。ところが全廃の議論は、この三つをまとめて扱ってしまう。だから、残すべき電話まで塞いで、必要な情報が届かなくなります。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。電話対応の負担は、どのグループ会社でも共通の悩みでした。
試して分かったのは、電話を減らすことを目的にすると失敗するということです。件数を目標にした瞬間、現場は取りにくくする方向に動きます。留守番電話にする、担当を出さない。数字は下がりますが、客の側の不便は増えています。
効いたのは、電話に来る内容を選ぶという発想でした。定型の質問は他の経路に流し、電話は『判断が要る用件』のために空けておく。結果として件数は3割ほど減り、1件あたりの中身は濃くなりました。現場の疲労感は、件数以上に下がっています。
そしてもう一つ。電話をやめた会社は、顧客の変化に気づくのが遅れます。文字のやり取りは用件しか運びません。世間話の中に出てくる『来期は工場を止めるらしい』のような情報は、電話でしか来ない。効率だけで測ると、この価値が計算から抜け落ちます。
減らすべきは負担であって、接点ではありません。ここを混同しないだけで、打ち手はかなり変わります。
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※本文中の手順は、BEYOND Holdings が複数の実業を運営する中で用いている一般的な整理です。業種・顧客層・体制により有効性は異なり、成果を保証するものではありません。