まず足元の数字を並べます。総務省が2026年7月24日に公表した6月分の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合で前年同月比1.6%。2%を下回る状態が続き、報道の見出しは落ち着きを伝えています。
ところが中小企業の現場の数字は逆を向いています。中小企業基盤整備機構の第184回中小企業景況調査(2026年4-6月期・有効回答17,734社)では、原材料・商品仕入単価DIが78.1と前期から11.6ポイント上昇。一方の売上単価・客単価DIは21.6にとどまりました。上げられているコストと、転嫁できている価格のあいだに、大きな開きがあります。業況判断DIは全産業で▲18.7、4期連続の低下です。
世間の物価は落ち着いた、という前提で予算を組むと外れる。この一点だけでも、期初の原価前提を見直す理由になります。
一つ目は遅さです。月末に締めて翌月中旬に差異が出るころには、その原因が起きてから45日が経っています。打ち手を打てる時期はとうに過ぎている。
二つ目は粗さ。売上が予算比マイナス300万円、と一行で出しても、単価が下がったのか数量が減ったのか、儲かる仕事が減って薄い仕事が増えただけなのかが分かりません。原因が分からない差異は、精神論にしか着地しません。
三つ目は固定です。期初に決めた予算を1年動かさない会社が多い。しかし仕入単価DIが期中に11.6ポイント動く環境で、4月に置いた原価が3月まで有効なはずがない。予算を固定した瞬間、予実管理は現実との比較ではなく、過去の願望との比較になります。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。自分たちで予実を回してきて痛感するのは、予実管理が形骸化する原因は、担当者の怠慢ではなく設計にあるということ。差異を出すことだけが目的の表は、作った人にも読む人にも次の行動を渡さないので、必ず飽きられます。
そしてもう一つ。予算が当たらないことは失敗ではありません。仕入単価DIが期中に二桁ポイント動く環境で、期初の見立てが当たり続けるほうが不自然です。問われているのは当てる精度ではなく、ズレに気づいてから動き出すまでの速さ。当たらない前提で、早く気づいて早く直せる形に組み替える。それが、この局面での予実管理の目的です。
立派なシステムは要りません。三分解の列を足し、着地見込みの一枚を作り、担当と期限の列を書く。既存の表に手を入れるだけで、来月から変わります。
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※背景データは、原材料・商品仕入単価DI78.1(前期比11.6ポイント上昇)・売上単価・客単価DI21.6(同6.8ポイント上昇)・業況判断DI▲18.7で4期連続低下・有効回答17,734社=独立行政法人中小企業基盤整備機構『第184回 中小企業景況調査(2026年4-6月期)』、消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比1.6%=総務省『2026年6月分 全国消費者物価指数』(2026年7月24日公表)を参照しました。本文中の進め方は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。