利益率の低い取引をやめれば、平均は上がります。ただし平均が上がることと、利益額が増えることは別です。
理由は三つあります。
①固定費は残ります。取引を一つやめても、家賃も人件費も減りません。その取引が固定費の一部を負担していたなら、やめた瞬間に残りの取引の負担が重くなります。
②稼働の穴はすぐ埋まりません。空いた時間に別の仕事が入る保証はない。埋まるまでの期間の売上はゼロです。
③戻れません。一度断った相手は、条件が変わっても戻ってこないことが多い。切る判断だけが、取り消せない判断です。
順位が出た後に取れる手は、次の四つです。切るのは最後です。
①条件を変える。価格、数量、納期、支払サイト。いちばん先に検討すべきで、いちばん後回しにされている手です。
②コストを変える。その取引の原価側に手を入れる。ロットをまとめる、仕様を標準に寄せる、配送の便を減らす。相手の価格を動かさずに採算が改善します。
③そのまま維持する。低採算でも、閑散期を埋めている・技術の維持に必要・紹介の起点になっているなら、残す理由があります。これは消極的な選択ではなく、意図した選択です。
④取引を解消する。赤字が固定的に出ている、対応の負荷が他の取引を圧迫している、支払いに不安がある。この三つのどれかが当てはまる場合だけです。
四つのうちどれを選ぶか。判断に使う軸は二つです。
軸①:採算が低い原因が、価格か原価か。単価が低いのか、その取引にかかる手間が大きいのか。原因が原価側なら、値上げ交渉より先に工程を見ます。
軸②:その取引に、金額以外の役割があるか。稼働の平準化、技術の維持、紹介、情報。役割がある取引は、採算だけで判断してはいけません。
この二軸で並べると、④に落ちる取引は驚くほど少なくなります。多くは①か②、そして意外に多いのが③です。
全部を同時に動かすと、現場が持ちません。順番を決めます。
①原価側から着手する。相手との交渉が要らないので、こちらの裁量で進められます。効果が出れば、交渉すべき件数がそもそも減ります。
②条件変更は、上位の取引から。金額の大きい取引のほうが、わずかな条件改善でも効果が出ます。小さい取引から始めると、労力に見合いません。
③解消の検討は、年に一度だけ。常に議題にしていると、現場が顧客を値踏みする空気になります。時期を決めて、そのときだけ判断する。
そして順位は年に二回だけ見直します。月次で追う数字ではありません。頻度を上げても、取引の構造はそんなに速く変わらないからです。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。採算表は各社で作っています。
失敗したのは、出した順位をそのまま現場に配ったときでした。下位に並んだ顧客の担当者が、その顧客への対応を落とし始めた。順位は評価ではないのに、評価として受け取られたのです。
それ以来、順位表は配らず、そこから決めた打ち手だけを配るようにしています。『A社は次回から最小ロットを引き上げる』『B社は配送を週2便から1便に』。現場が受け取るのは、順位ではなく行動です。
もう一つ。条件変更の交渉は、断られても失注しないことがほとんどでした。想像より相手は柔軟です。切る話をする前に、まず聞いてみる価値があります。取引条件の変更や解消は、契約内容と関係法令に照らした確認とセットで進めてください。
LENSで伴走する場合、採算表を作って終わりにしません。順位が出た後、一件ずつ四つの選択肢のどれに当てるかを決めるところまでやります。表があっても、次の行動が決まらなければ何も変わらないからです。
そのうえで、原価側から着手する順番、条件変更を持ちかける文面、年に一度の解消検討の時期、そして順位表そのものは配らず打ち手だけを配る運用まで。採算の算定方法については、顧問税理士および会計事務所への確認とセットで進めます。
まずは無料の意思決定スピード診断で、いま見ている数字が判断につながっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に手を入れる一件を一緒に選びます。
※本記事の分類および手順は、中小企業の実務で用いられる一般的な整理であり、特定の企業の実例ではありません。本文中の数値はすべて説明のための仮設例です。取引条件の変更および取引の解消にあたっては、既存の契約内容および関係法令に照らして個別にご確認ください。原価配賦の方法は会社ごとに異なるため、採算の算定については顧問税理士および会計事務所にご確認ください。