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#数字・見える化#意思決定#財務・資金繰り
Management Column · 2026.09.06

在庫金額は横ばいなのに、現金だけが減っていた|在庫を日数で見る

ある卸売会社(想定事例)の月次資料では、在庫金額はほぼ横ばいでした。前年同月と比べても、ほとんど動いていない。
それなのに、手元の現金だけが毎月じわじわ減っていきます。原因が分からないまま、半年が過ぎました。
見つかったのは、総額は同じでも、中身が入れ替わっていたことです。売れる在庫が減り、売れない在庫がその分だけ増えていた。金額で見ている限り、この入れ替わりは見えません

1.総額は同じ、中身は別物

この会社が月次で見ていたのは、在庫金額の一行だけでした。前月比と前年比。数字が動いていないので、会議でも議題になりません。『在庫は問題ない』で一秒で通過していました。

実際に起きていたのは、こういうことです。よく売れる品番は、発注するたびにきれいに消えていきます。回転しているので、いつ見ても在庫は少ない。一方、売れない品番は減らないので、そのまま残り続けます

結果、総額を維持したまま、構成だけが売れないものに寄っていきます。現金が減っていたのは、売れる在庫を買い足すための資金が、売れない在庫に固定されていたからでした。

総額が動かないことは、健全さの証拠ではない。入れ替わりが止まっているだけかもしれない

2.金額をやめて、日数で持つ

やったことは一つです。在庫を金額ではなく、あと何日分あるかに置き換えました

計算は単純で、品番ごとの在庫数量を、直近3か月の1日あたり平均出荷数で割るだけ。これで、その品番が何日分残っているかが出ます。

この形にすると、金額が小さくても2年分ある品番と、金額が大きくても10日分しかない品番が区別できます。前者は減らすべき在庫、後者はむしろ増やすべき在庫です。金額で見ている限り、前者は『大した額じゃない』の一言で毎月見送られます。いちばん寝ている在庫が、いちばん議題に上がらない——これが金額表示の弱点です。

3.日数で回す、四つの手順

分母は年間平均ではなく、直近3か月の出荷にする
年間平均を分母にすると、需要が落ちた品番ほど日数が短く出ます。落ちた事実こそ早く拾いたいので、分母は直近3か月。季節性の強い商材だけ、前年同期を併用します。分母を直近にすると、鈍化がその月のうちに数字へ出ます。ここを年間平均のままにすると、気づくのが半年遅れます。ポイント:分母を直近にすると、鈍化がすぐ数字に出る
しきい値は品番ごとではなく、分類ごとに一本決める
全品番に個別の基準を作ると、作った本人しか運用できません。定番は60日、季節品は45日、特注は在庫を持たない——このくらいの粗さで十分です。分類は3つか4つまで。細かい基準より、全員が言える基準のほうが機能しますポイント:基準は品番ごとではなく、分類ごとに決める
しきい値を超えた品番だけを、毎月一枚に出す
全在庫の一覧表は、誰も読みません。出すのは超過した品番だけを、日数の長い順に並べた一枚。行数が少ないほど、会議は動きます。20行なら議論になりますが、200行だと『あとで見ておきます』で終わります。見せる量を減らすことが、判断を進めるための設計ですポイント:全部を見せず、超えたものだけを見せる
落とし方を、値引き以外に三つ用意しておく
出口が値引きしかないと、損を確定させたくない気持ちが判断を止めます。セット販売にする、既存客に案内する、仕入先へ返品や引き取りを交渉する、別の用途に振り替える。選択肢を先に持っておくと、決断が早くなります。滞留品の議論が毎月先送りになる会社は、たいてい出口を一つしか持っていません。ポイント:出口を先に用意すると、決断が早くなる

4.やってみて分かること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。在庫を持つ商売も、持たない商売もやっています。

実感として、在庫の議論が進まない最大の理由は、金額で語ることにあります。金額で語ると、出てくる結論は『減らせ』しかありません。減らせと言われた現場は、売れる在庫まで薄くして欠品を出す。そして『やっぱり在庫は必要だ』に戻る。この往復を何年も繰り返している会社は珍しくありません。

日数で語ると、議論の形が変わります。この品番を何日にするかという具体の話になり、担当者も答えられる。指標を変えるだけで、会議の生産性が変わります

もう一つ。滞留在庫を落とす判断が遅れるのは、損を認めたくないからです。しかし在庫は、持っているだけで場所代と資金を食い続けます。決算でまとめて落とすより、毎月少しずつ落とすほうが痛みは小さい。金額が大きくなるほど決断できなくなるので、小さいうちに動くのが結局は安くつきます。

注意点を一つ。日数に切り替えた直後は、想像より悪い数字が出ます。ここで『計算方法がおかしい』と言って元に戻す会社があります。悪く見えるようになったのではなく、いままで見えていなかっただけです。

最初の一歩は、出荷額の上位20品番と、金額の小さい品番から無作為に20品番、この40品番だけ日数を出すこと。全品番でやろうとすると、着手する前に終わります。

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5.LENS は、指標の置き換えから一緒に立つ

LENS(BEYOND PLAYBOOK)は、システムを入れて終わりではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、在庫日数の算出 → 分類ごとのしきい値決め → 超過一覧の月次化 → 出口の選択肢づくりまでを、貴社の商材の性質に合わせて一緒に整理します。狙うのは、寝ている在庫が毎月見える状態です。

まずは無料の意思決定スピード診断で、数字が判断につながっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に日数へ置き換える指標を一緒に決めましょう。

※本記事の会社の場面は、中小企業でよくある状況をもとに構成した想定事例であり、特定の企業を指すものではありません。在庫日数の算出方法やしきい値の水準は、業種・商材・仕入条件によって適切な形が異なります。棚卸資産の評価損や処分の税務上の取扱いについては顧問税理士にご確認ください。本文中の手順は一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。