この会社が月次で見ていたのは、在庫金額の一行だけでした。前月比と前年比。数字が動いていないので、会議でも議題になりません。『在庫は問題ない』で一秒で通過していました。
実際に起きていたのは、こういうことです。よく売れる品番は、発注するたびにきれいに消えていきます。回転しているので、いつ見ても在庫は少ない。一方、売れない品番は減らないので、そのまま残り続けます。
結果、総額を維持したまま、構成だけが売れないものに寄っていきます。現金が減っていたのは、売れる在庫を買い足すための資金が、売れない在庫に固定されていたからでした。
やったことは一つです。在庫を金額ではなく、あと何日分あるかに置き換えました。
計算は単純で、品番ごとの在庫数量を、直近3か月の1日あたり平均出荷数で割るだけ。これで、その品番が何日分残っているかが出ます。
この形にすると、金額が小さくても2年分ある品番と、金額が大きくても10日分しかない品番が区別できます。前者は減らすべき在庫、後者はむしろ増やすべき在庫です。金額で見ている限り、前者は『大した額じゃない』の一言で毎月見送られます。いちばん寝ている在庫が、いちばん議題に上がらない——これが金額表示の弱点です。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。在庫を持つ商売も、持たない商売もやっています。
実感として、在庫の議論が進まない最大の理由は、金額で語ることにあります。金額で語ると、出てくる結論は『減らせ』しかありません。減らせと言われた現場は、売れる在庫まで薄くして欠品を出す。そして『やっぱり在庫は必要だ』に戻る。この往復を何年も繰り返している会社は珍しくありません。
日数で語ると、議論の形が変わります。この品番を何日にするかという具体の話になり、担当者も答えられる。指標を変えるだけで、会議の生産性が変わります。
もう一つ。滞留在庫を落とす判断が遅れるのは、損を認めたくないからです。しかし在庫は、持っているだけで場所代と資金を食い続けます。決算でまとめて落とすより、毎月少しずつ落とすほうが痛みは小さい。金額が大きくなるほど決断できなくなるので、小さいうちに動くのが結局は安くつきます。
注意点を一つ。日数に切り替えた直後は、想像より悪い数字が出ます。ここで『計算方法がおかしい』と言って元に戻す会社があります。悪く見えるようになったのではなく、いままで見えていなかっただけです。
最初の一歩は、出荷額の上位20品番と、金額の小さい品番から無作為に20品番、この40品番だけ日数を出すこと。全品番でやろうとすると、着手する前に終わります。
数字の粒度・鮮度・共有・判断への接続の4観点から、意思決定が遅れる原因をレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 意思決定スピード診断をはじめる 無料で相談するLENS(BEYOND PLAYBOOK)は、システムを入れて終わりではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、在庫日数の算出 → 分類ごとのしきい値決め → 超過一覧の月次化 → 出口の選択肢づくりまでを、貴社の商材の性質に合わせて一緒に整理します。狙うのは、寝ている在庫が毎月見える状態です。
まずは無料の意思決定スピード診断で、数字が判断につながっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に日数へ置き換える指標を一緒に決めましょう。
※本記事の会社の場面は、中小企業でよくある状況をもとに構成した想定事例であり、特定の企業を指すものではありません。在庫日数の算出方法やしきい値の水準は、業種・商材・仕入条件によって適切な形が異なります。棚卸資産の評価損や処分の税務上の取扱いについては顧問税理士にご確認ください。本文中の手順は一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。