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#数字・見える化#意思決定#人手不足
Management Column · 2026.08.09

一人当たり『売上』で見るから、
人を増やすほど良く見える

日本生産性本部が2025年12月に公表した『労働生産性の国際比較2025』によると、2024年の日本の時間当たり労働生産性は60.1ドル(5,720円)でOECD加盟38カ国中28位一人当たりでは98,344ドル(935万円)で29位でした。順位の話はさておき、ここで測られているのが売上ではなく『付加価値』だという点に注目してください。国際比較では当たり前のこの前提が、自社の点検になると急に外れます。多くの会社が使うのは一人当たり売上。この指標は、人を増やすほど、外注を増やすほど良く見えるという性質を持っています。

1.一人当たり売上で見ると、判断を三つ間違える

一つ目、外注を増やすほど数字が良くなる。仕事を外に出せば、社内の人数は変わらないまま売上が積み上がります。一人当たり売上は上がる。けれど外注費を引いた後に社内へ残る金額は減っているかもしれない。指標が改善しながら、体力が落ちていくのがこの型です。

二つ目、値引きしても大きくは下がらない。粗利が10%減っても売上は数%しか動かないことがあります。安く受けて数をこなす方向に進んでも、一人当たり売上は悪化しません。いちばん止めたい動きに、ブレーキが効かない指標です。

三つ目、分母がいい加減になる。正社員だけを数え、パートや派遣を分母から落とすと、人を増やしたのに数字が改善したように見えます。国際比較が『時間当たり』も併記しているのは、働いた量をそろえないと比較にならないからです。

改善したい方向と、指標が良くなる方向がずれている。

2.使うのは、粗利 ÷ 人数だけでいい

難しい計算は要りません。年間の粗利(売上 − 変動費)を、その年の人数で割る。それだけです。製造や建設なら、材料費と外注費を引いた後の金額を使います。付加価値の厳密な定義はいくつかありますが、自社の推移を見る目的なら、毎年同じ計算式で出し続けることのほうがはるかに重要です。

この数字を3年並べると、多くの会社で共通の景色が出ます。売上は伸びているのに、一人当たり粗利は横ばいか微減。人を増やして売上を作り、増えた粗利がそのまま人件費に消えている状態です。悪いことではありませんが、この状態で賃上げを続けると、どこかで必ず苦しくなります

3.点検を回す、四つの決めごと

分子は売上ではなく粗利にする
外注と材料に払った分は、自社が生み出した価値ではありません。売上から変動費を引いた残りを分子に置くと、外注を増やしても数字は上がらなくなります。指標が、正しい方向にだけ反応するようになる。ここが出発点です。ポイント:外注費を引いた後の金額を分子にする
分母にパート・派遣を時間換算で入れる
正社員だけで割ると実態を見誤ります。総労働時間を正社員の所定労働時間で割った人数を分母にする。パートが多い会社ほど、この修正で数字が現実に近づきます。国が時間当たりを併記しているのと同じ発想です。ポイント:頭数ではなく、働いた時間で分母をそろえる
月次ではなく12か月移動平均で見る
月ごとの粗利は繁閑で大きく振れるので、単月では判断できません。直近12か月の合計を使って毎月更新すると、季節変動が消えて傾向だけが残ります。上を向いているか下を向いているか、それだけ分かれば十分です。ポイント:見るのは水準ではなく、向きと傾き
上げ方は分子から。分母を削るのは最後
一人当たり粗利は、人を減らしても上がります。ただしそれはいちばん体力を削る上げ方です。先に手を付けるのは分子――単価、商品構成、内製化率。人手不足で採用が難しい今、減らして上げた数字は、次に受注が来たときに機会損失として跳ね返りますポイント:分母に手を付ける前に、分子を三つ試す

4.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。自分たちで数字を追ってきて痛感するのは、一人当たり粗利は『採用してよいか』の判断に直結するということ。

使い方は単純です。いまの一人当たり粗利を、採用しようとしている人の人件費と比べる。一人当たり粗利が600万円で、採る人の年間人件費が500万円なら、その人が平均並みに働けば会社は成り立ちます。逆に一人当たり粗利が400万円の会社が同じ人を採れば、採った瞬間に赤字が確定します。増員の可否は、意欲や忙しさではなく、この比較で決まります。

国際比較の数字は、順位を嘆くために見るものではありません。あの指標が付加価値で測られているという一点を、自社に持ち帰るだけで十分です。売上ではなく、自社が生み出した分を人数で割る。これを毎月1回見る会社と、見ない会社の差は、3年で人件費の重みとして表に出ます

5.計算式の整理 ── 「一人当たり」と「人時」の使い分け

よく混ざる指標を、ここで一度並べておきます。分子(売上か粗利か)と分母(人数か時間か)の組み合わせは4つしかありません。

4つの計算式
①一人当たり売上高=売上高 ÷ 従業員数。②一人当たり粗利=粗利(売上総利益)÷ 従業員数──本文で勧めた点検指標。③人時売上高=売上高 ÷ 総労働時間。④人時生産性=粗利 ÷ 総労働時間。目安:パート比率が高く労働時間がばらつく業態(小売・飲食・介護など)は「人数」でなく「時間」で割る③④が実態に合う

どれを使うにせよ原則は同じで、分子を売上でなく粗利に寄せるほど、判断を間違えにくくなります。売上で割る指標は「人を増やすほど良く見える」錯覚(1章)をそのまま引きずるからです。まず②を月次で、シフト制の現場は④を週次で。それだけで「人を増やすか・削るか・単価を上げるか」の議論が同じ土俵に乗ります。

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6.LENS は、指標が判断に変わるところまで一緒に作る

LENS(BEYOND PLAYBOOK)は、分析資料を納品して終わりにはしません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、粗利の定義そろえ → 分母の時間換算 → 12か月移動平均での可視化 → 増員判断への接続までを、貴社の商売に合わせて組み立てます。数字は、次の一手に変わってはじめて意味を持ちます。

まずは無料の意思決定スピード診断で、数字が判断につながるまでのどこで詰まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、来月から見る一つの数字を一緒に決めましょう。

※背景データは、2024年の日本の時間当たり労働生産性が60.1ドル(5,720円)でOECD加盟38カ国中28位、一人当たり労働生産性が98,344ドル(935万円)で29位であること=公益財団法人日本生産性本部『労働生産性の国際比較2025』(2025年12月公表)を参照しました。本文中の計算例・進め方は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。