制度の対象や義務の内容は、所管省庁の公表資料で個別に確認が必要です。それでも方向は読み取れます。これまで感覚で語られていた待ち時間が、記録して報告する対象になった。
自社が特定事業者に該当しなくても、影響は来ます。取引先が報告する側になれば、こちらの荷待ちや荷役の時間も数字で問われるからです。『いつも待たせていますよね』ではなく、『平均何分です』という会話になります。
そして、ここで気づくことがあります。自社の受注から出荷までの時間を、工程別に答えられる会社がほとんどない。全体で何日かは言えても、どこで何日止まっているかは言えません。
受注から出荷までを分解すると、ほとんどの会社で同じ構造が出ます。作業している時間より、待っている時間のほうが長い。
待ちが生まれる場所は、だいたい四つです。仕様確定の待ち、材料入荷の待ち、前工程の空き待ち、検査と出荷の段取り待ち。
ここを測らずに納期を短縮しようとすると、現場に速く作れという話になります。作業を2割速くしても、待ちが8割を占めていれば全体はほとんど縮みません。
そして納期遅れの大半は、この待ちのどれかが想定より伸びたときに起きます。作業の遅れではありません。
ここがこの記事の要点です。平均リードタイムを出しても、納期回答には使えません。
理由は単純です。平均で答えると、半分の案件で遅れます。平均14日なら、14日を超える案件が半分あるということだからです。
だから見るのは分布です。実務では三つの数字で足ります。
①いちばん短かった日数。条件が全部揃ったときの最短。
②真ん中の日数。並べて中央に来る案件の日数。
③上位1割の日数。遅い側の1割がどこにいるか。納期回答はここを基準にします。
そして③と②の差が、その会社の不確実性の大きさです。差が小さい会社は短い納期を約束できます。差が大きい会社は、短く答えるたびに遅れます。
工程別の滞留を測るといっても、細かい工数管理は要りません。日付を四つ記録するだけです。
①受注日。②仕様が確定した日。③製造に着手した日。④出荷した日。
これで三つの区間が出ます。受注から仕様確定まで、仕様確定から着手まで、着手から出荷まで。どの区間が長いかが分かれば、手を入れる場所が決まります。
多くの会社で、いちばん長いのは最初の区間です。そして最初の区間は自社だけでは縮められません。相手の決裁や図面待ちが入るからです。それが分かるだけでも、納期回答の仕方が変わります。『仕様確定から何日』で答えられるようになります。
記録は既存の帳票で足ります。新しい様式を作ると続きません。受注伝票に日付の欄を三つ足すだけで始められます。
①納期回答。上位1割を基準に答える。守れる納期を言うほうが、短く言って遅れるより信用されます。
②短縮の対象選び。いちばん長い区間から手を入れる。短い区間を縮めても全体は動きません。
③相手への提示。『仕様確定が遅れると、出荷が何日後ろにずれます』を数字で言えるようになります。催促が交渉材料に変わります。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。この記録は各社で取っています。
いちばん効いたのは、③の相手への提示でした。それまでは納期が遅れると自社の責任として処理していた。区間で分けた記録があると、どこで何日止まったかを事実として共有できます。責める話ではなく、次回の段取りの話になります。
失敗したのは、最初に工程を八つに分けたときでした。記録が面倒で、三か月で止まりました。四つの日付に減らしてから続いています。
もう一つ。平均を出すのをやめたとき、会議の議論が変わりました。平均14日という数字には誰も反応しません。『遅い1割は28日かかっている』と出すと、その1割が何だったのかを全員が知りたがります。数字は、人が反応する形で出さないと動きません。
LENSで伴走する場合、工程分析から入りません。受注伝票に日付の欄を三つ足すところから始めます。二か月分も溜まれば、区間の長短がはっきり出ます。
そのうえで、最短・中央・上位1割の三つの数字の出し方、納期回答の基準の置き方、相手に提示する言い方まで。平均を出さないと決めることも設計の一部です。
なお、物流効率化法上の自社の位置づけや義務の内容は、所管省庁の公表資料にもとづいて個別にご確認ください。
まずは無料の意思決定スピード診断で、いま見ている数字が判断につながっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に測る一区間を一緒に選びます。
※背景データは、改正物流効率化法(流通業務の総合効率化に関する法律等の改正)において、2025年4月から荷主および物流事業者に対し積載効率の向上・荷待ち時間の削減・荷役時間の短縮などの取組が努力義務とされたこと、2026年4月から特定事業者制度が開始され、特定荷主に中長期計画の作成・提出および定期報告が求められることを参照しました。自社が特定事業者に該当するかの判定および具体的な義務の内容は、所管省庁の公表資料にもとづき個別にご確認ください。本文中の数値はすべて説明のための仮設例です。