典型が、週次会議で粗利率を見る会社です。粗利率は間違いなく重要な数字です。しかし一週間で動く幅はごくわずかで、動いたとしても仕掛の計上タイミングのような会計上の揺れであることが多い。
すると会議はこうなります。『先週より0.3ポイント下がっています』『気を引き締めましょう』。以上。これを毎週やると、参加者は数字を見なくなります。見ても何も起きないことを学習するからです。
逆の失敗もあります。本来は週次で追うべき数字が月次に置かれている。見積もりの提出件数や返答待ちの案件数は、月末に知っても遅い。気づいたときには、その月の商談はもう終わっています。
『この数字が悪かったら、来週までに何かできますか』。
答えが具体的な行動で返ってくるなら、その数字は週次です。『追客の電話を増やす』『見積もりの返答を催促する』『シフトを組み替える』。どれも一週間以内に着手でき、翌週の数字に跳ね返ります。
答えが『価格を見直す』『取引条件を変える』『人を採る』のように、一週間では動かないものなら月次です。動かないものを毎週眺めても、判断は一度しか下せません。
この質問の良いところは、現場で答えられることです。指標論に詳しくなくても、来週できるかどうかは全員が判断できます。
一つ目、比率の数字。粗利率、労働分配率、回転率。分母と分子の両方が動くので、週単位では意味のある変化が読めません。比率は月次で、推移として見る。
二つ目、締めないと確定しない数字。仕掛や引当が絡む利益系は、週の途中では仮の数字です。仮の数字で会議をすると、翌月に訂正が出て信用が落ちます。
三つ目、担当者が動かせない数字。為替、原材料の市況、金利。重要ですが、週次会議の議題にすると『どうにもならない』という無力感を毎週配ることになります。月次の報告事項で十分です。
逆に週次に向くのは、件数と日数です。見積もり提出件数、返答待ち日数、納期遅れ件数、問い合わせ件数。数えるだけで確定し、翌週に手が打てる。
①いまの会議で読み上げている数字を全部書き出す。週次と月次の両方です。だいたい15から25個になります。
②一つずつ、先ほどの質問を当てる。来週までにできる行動が言えるか。言えないものには印をつけます。
③印のついたものを月次に移す。消すのではなく移す。消そうとすると抵抗が出ますが、移すだけなら通ります。
④週次に残す数字を5個以内にする。5個を超えると、会議が報告会に戻ります。多すぎる週次は、月次を週に4回やっているのと同じです。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。グループ各社の会議を横で見ていると、頻度の設計ミスはかなり多い。
私たちがやった振り分けで、いちばん効果が大きかったのは週次から金額を外したことでした。売上金額を毎週追っていたのをやめ、見積もり提出件数と返答待ち日数の二つに置き換えた。金額は結果であって、週の途中で動かせるのは手前の行動だけだからです。
結果として、会議が短くなりました。そして会議中に『では誰がいつやるか』という会話が増えた。動かせる数字だけを並べると、議論は自動的に行動の話になります。
もう一つ。頻度は固定ではありません。繁忙期や新しい取り組みを始めた直後は、一時的に週次へ上げる数字があります。上げるときは、いつ月次に戻すかを同時に決める。戻す約束がないと、週次の項目は増え続けます。
LENSで伴走する場合、新しい指標を提案するところから始めません。いまの会議で読み上げている数字を全部書き出し、来週までに手が打てるかで振り分けるところから始めます。この作業だけで、週次の項目は半分以下になることがほとんどです。
そのうえで、週次に残す5個の選定、月次に移す数字の見せ方、臨時に上げる場合の戻す期限まで。ダッシュボードより先に、会議の議題表のほうを直します。数字が判断に変わるのは、画面ではなく会議の場だからです。
まずは無料の意思決定スピード診断で、いま見ている数字が判断につながっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に月次へ移す一つを一緒に選びます。
※本記事の振り分け基準および運用手順は、中小企業の実務で用いられる一般的な整理であり、特定の企業の実例ではありません。本文中の数値はすべて説明のための仮設例です。指標の定義や集計方法は業種・会計処理によって異なるため、自社での適用にあたっては個別にご確認ください。