粗利率が同じなら、売上が大きい客ほど利益も大きい。理屈はそうです。ずれるのは、売上と原価の間に入っていない費用があるからです。
一つ、値引きとリベート。大口ほど単価が甘くなります。年間の値引き総額を客ごとに引くと、粗利率は数ポイント単位で動きます。二つ、対応工数。見積を5回出し直す客と、一度で決まる客。訪問が月4回の客と年2回の客。この差は原価表のどこにも載っていません。三つ、物流と小口。同じ金額でも、月1回まとめて出す客と、週3回小分けで出す客ではコストがまるで違う。四つ、支払サイト。入金が90日後の売上は、その間の資金を自社が立て替えています。借入で回しているなら、その利息は実質的にその客のコストです。
これらは全部「営業努力」や「サービス」と呼ばれ、誰の原価にも計上されないまま利益を削ります。
顧客別採算と聞くと、全社の経費を客ごとに配賦する精密な計算を思い浮かべる人がいます。その方向に進んだ会社は、ほぼ確実に途中で止まります。家賃や役員報酬をどう割るかで議論が始まり、答えが出ないまま半年が過ぎるからです。
目的は正確な決算ではありません。順位を知ることです。順位は、上位数社と下位数社が入れ替わるかどうかが分かれば用が足ります。だから足すのは前節の4項目だけ。1円まで合わせる必要はなく、桁が合っていれば判断は変わります。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。自社でこの表を作って一番驚くのは、たいてい社長本人です。手のかからない中堅の客が、実は一番稼いでいたという結果が、かなりの確率で出ます。
大事なのは、その後の使い方です。順位が出ると「下位を切ろう」という話になりがちですが、切るのは最後の手段です。多くの場合、下位に沈んでいる理由は相手の性格ではなく、こちらが決めていない条件にあります。最低ロットがない、緊急対応の追加料金がない、支払条件を一度も見直していない。条件を整えるだけで、下位の客が中位に戻ることは普通に起きます。
そして取適法の施行は、この見直しに追い風です。協議に応じない一方的な代金決定は禁じられ、条件を話し合うこと自体が制度の前提になりました。制度が交渉の場を用意してくれても、持っていく数字がなければ座れません。半日で作れる表を、先に作っておいてください。
数字の可視化・鮮度・活用・仕組み化の4観点から、目標と行動のあいだの詰まりをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 意思決定スピード診断をはじめる 無料で相談するLENS(BEYOND PLAYBOOK)は、分析レポートを納品して終わりにはしません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、4項目の集計 → 顧客別の利益順位 → 下位に沈む理由の切り分け → 条件見直しの優先順位づけまでを、貴社の商売に合わせて一緒に進めます。数字は、次の一手に変わってはじめて意味を持ちます。
まずは無料の意思決定スピード診断で、数字が判断につながるまでのどこで詰まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に条件を見直す一社を一緒に決めましょう。
※背景データは、2026年1月1日に下請法が改正され中小受託取引適正化法(取適法)として施行されたこと、手形払いの禁止や協議に応じない一方的な代金決定の禁止が加わったこと、従来の資本金基準に従業員基準(300人・100人)が追加され規制対象取引に製造委託に必要な運送委託が含まれるようになったこと=公正取引委員会・中小企業庁の公表資料を参照しました。本文中の計算例・進め方は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。