サイトの下部に、四つ五つのロゴが横並びになっている会社があります。取得の努力は本物です。ところが読む側にとっては、意味の分からない記号が並んでいる帯にしか見えません。
そして帯として認識されたものは、まとめて読み飛ばされます。一つだけ載せていれば読まれたかもしれないものが、四つ並べたことで全部読まれなくなる。
もう一つの問題は、取得したことが目的の達成として扱われることです。審査を通り、看板を掲げ、社内で報告して終わる。そこから先の作業が誰の仕事にもなっていません。
認証が保証しているのは、たいてい仕組みや手順です。記録が残っていること、責任者が決まっていること、点検が定期的に行われていること。
一方、客が気にしているのは自分に何が起きるかです。納期が守られるのか、不具合が出たときに原因が分かるのか、担当が代わっても同じ品質で来るのか。
この二つは繋がっていますが、繋げる作業を誰もやっていません。だから認証名だけが置かれ、客は自分に関係があるのか判断できないまま通り過ぎます。
翻訳とは、この間を埋めることです。『この認証を維持している』ではなく『だから、こうなります』まで書く。
①その認証が実際に何を要求しているかを読む。取得のときに作った文書を見れば分かります。ここを代理店や担当者任せにしていると、一歩目から進めません。
②客が不安に思っていることを三つ挙げる。過去の問い合わせや、失注の理由から拾います。想像で作らない。
③①のうち、②に答えているものだけを選んで一行にする。全部は書きません。関係のない要求事項を並べると、また記号の帯に戻ります。
出てくる文は、たとえばこうなります。『作業の記録を全工程で残しています。不具合が出た場合、どの日の誰の作業かを追えます』。認証名は、この文の後に小さく添えるだけで足ります。
翻訳した文は、サイトの下部ではなく判断の直前に置きます。
①見積書の備考欄。相見積もりで比べられるのは、たいてい見積書の上です。ここに一行あるかないかで、比較表に欄ができるかが変わります。
②営業が口で言える形。紙に書いてあるだけでは使われません。30秒で言える長さに削る。
③問い合わせへの返信文。定型の返信に一行入れておくと、毎回届きます。
表示にあたっては、各制度の表示ルールと関係法令の確認が必要です。とくに効果や優位性を示す表現には注意が要ります。
ここまでは取った後の話ですが、本当は取る前に決めるべきことがあります。その認証で、どの不安に答えるつもりなのかです。
取得の動機が『取引先から求められたから』である場合は問題ありません。目的がはっきりしています。危ないのは『あったほうがいいと思って』取るときです。この場合、取った後に使い道を探すことになります。
そして維持の費用と手間を、使い道と並べて見る。維持に年間いくらかかり、それが受注や単価にどう効いているか。効いていない認証を惰性で維持している会社は、実際にあります。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。各種の認証や認定は、グループ内にいくつもあります。
翻訳をやってみて分かったのは、この作業が自社の説明そのものになることでした。認証が要求している項目を読み、客の不安と突き合わせる。その過程で、自社が実際にやっていることの言葉が出てきます。認証は、棚卸しのきっかけとして使えました。
失敗もありました。翻訳した文を長くしすぎたことです。丁寧に説明したくなり、三行になった。営業が使わなくなりました。一行で言えないなら、選んだ要求事項が多すぎるということです。
もう一つ。認証は、客より先に社内に効きました。取得の要求事項を現場の言葉に直す作業を通じて、なぜその手順なのかが共有された。外向けの翻訳が、内向けの説明を作っていた。順序としては、こちらが先に来ることのほうが多いかもしれません。
MAGNETで伴走する場合、新しい認証を勧めることはしません。いま持っている認証が何を要求しているかを読み、客の不安を三つ挙げて突き合わせるところから始めます。半日で一行が出ます。
そのうえで、置く場所を見積書の備考欄・営業の口頭・返信の定型文に決め、維持費用と受注への効き方を並べて見るところまで。効いていない認証を減らす判断も、この作業の結果として出てきます。表示は各制度のルールと関係法令の確認とセットで進めてください。
まずは無料の差別化診断で、いま自社の輪郭がどれくらい伝わっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に翻訳する一つを一緒に選びます。
※本記事の表現例および手順は、中小企業の現場でよくある状況をもとにした一般的な整理であり、特定の企業の実例ではありません。本文中の数値はすべて説明のための仮設例です。認証・認定・表彰の名称および内容の表示にあたっては、各制度が定める表示ルールおよび景品表示法をはじめとする関係法令に照らして個別にご確認ください。