サイトに並ぶ言葉が増えるほど、読む側はこの会社が何屋なのか分からなくなります。そして分からないものは、比較のときに一番単純な軸に落とされます。価格です。
もう一つ、実務側の損失があります。合わない問い合わせの処理コスト。見積もりを作り、訪問し、提案して、条件が合わずに終わる。この一連に何時間かかっているかを計算している会社はほとんどありません。問い合わせは多いのに忙しいだけ、という状態の正体はここです。
そして最も静かな損失が、合う客が来なくなることです。自社に合う相手ほど、探している条件がはっきりしています。全方位に見える会社は、その条件に引っかかりません。
問い合わせ件数は、実際に減ります。ここをごまかしても仕方がない。減ったうえで、中身が変わります。
一つ目、条件を読んだうえで来る。『それでもお願いしたい』という前提で連絡が来るので、初回の会話が値段から始まりません。
二つ目、社内の判断が速くなる。書いた条件は、そのまま受注可否の基準になります。営業が社長に確認しに行く回数が減ります。
三つ目、紹介の精度が上がる。既存客が誰かに紹介するとき、合わない相手を紹介しなくなる。向き不向きが書いてあると、紹介する側も判断できるからです。
ただし、書き方を間違えると単に感じの悪い会社になります。避けるべき型が三つあります。
相手の属性を否定する書き方。『予算のないお客様はお断りします』のような表現は、条件ではなく相手の値踏みです。書くのは相手の属性ではなく、自社の提供条件。
理由を書かない書き方。『短納期は承れません』だけでは拒絶に見えます。『工程を詰めると品質の確認が省略されるため、短納期は承っていません』のように、断る理由が自社の約束から来ていることを示す。ここで断りが姿勢に変わります。
代わりの選択肢を示さない書き方。向いていないと伝えるなら、どういう先が向いているかを一言添える。これがあると、断りが案内になります。紹介先の名前まで出す必要はありません。
①直近1年で受けて失敗した案件を書き出す。赤字になった、揉めた、担当が疲弊した。断る基準は、理想から作るのではなく実績から作ります。
②共通点を三つに畳む。納期、規模、進め方。だいたいこの三つのどれかに集約されます。
③自社の約束と対で書く。『こういう進め方をしているので、こういうご依頼は承っていません』という形にします。約束が先、断りが後。順番が逆だと拒絶文になります。
④問い合わせフォームの手前に置く。会社概要の奥ではなく、連絡する直前に読む場所に置く。ここを間違えると、読まれないまま合わない問い合わせが来ます。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。グループ内でこれをやったとき、最初に起きたのは反対でした。『わざわざ客を減らす文章を載せるのか』と。
実際、問い合わせ件数は落ちました。ところが三か月後、受注率のほうが上がっていた。さらに、見積もりを作ったのに失注する件数が減ったので、営業の実働時間が空きました。件数を追っていたときには見えなかった数字です。
もう一つ気づいたことがあります。断る条件を書く作業は、自社の強みを言語化する作業とほぼ同じでした。なぜそれを受けないのかを説明しようとすると、自分たちが何を大事にして仕事をしているのかを言葉にせざるを得ない。強みを探すより、断る理由を書くほうが速い。これは想定していませんでした。
MAGNETで伴走する場合、キャッチコピーを考えるところから始めません。直近1年の失敗案件を並べ、共通点を三つに畳むところから始めます。ここから出てくる言葉のほうが、外から借りてきた表現より具体的で、社内の納得も得られます。
そのうえで、約束と断りを対にした文面、掲載する場所、問い合わせフォームの直前への配置まで。減る件数と上がる受注率を、三か月後に並べて確認するところまでを設計に含めます。
まずは無料の差別化診断で、いま自社の輪郭がどれくらい伝わっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に書く一行を一緒に決めます。
※本記事の表現例および手順は、中小企業の現場でよくある状況をもとにした一般的な整理であり、特定の企業の実例ではありません。取引の可否や条件の表示にあたっては、不当な差別的取扱いに当たらないか、関係法令および自社の契約条件に照らして個別にご確認ください。