一つ目は母数の小ささです。五人で三対二は、統計的な過半数ではなくほぼ互角。数の差に正当性を託せるほどの人数がいません。一人の欠席で結論がひっくり返る決め方を、会社の重要な判断に使っている状態です。
二つ目は情報量が同じでないこと。現場に近い人と遠い人が、同じ一票を持ちます。一番現場を知っている人が少数派になったとき、その人が持っていた情報ごと捨てられます。多数決は票を数える仕組みであって、情報の重みを扱う仕組みではありません。
三つ目は決定後が定義されないこと。多数決は『決める瞬間』だけのルールです。決まった後に反対側がどう振る舞うかは、何も決めていない。だから『会議では決まったが、現場では止まっている』が起きます。
意見が割れる理由は、多くの場合『情報が違う』ではなく『重視するものが違う』です。価格を守るのか、関係を守るのか。短期の売上を取るのか、長期の看板を守るのか。どちらも正しく、どちらも会社のためを思っています。
だから必要なのは、うちはどちらを取る会社かを示すものです。それが理念です。理念は額縁に入れる言葉ではなく、割れたときにだけ使う判断基準として初めて働きます。
逆に言えば、判断基準がないから多数決に逃げることになる。多数決は、議題の中身とまったく無関係な決め方です。中身で決められないときに、数という中身のない基準を借りている。使うたびに、会社は『何を大事にする会社か』を答えずに済ませてしまいます。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。会社も業種も違う者が集まっているので、意見が割れるのは例外ではなく常態です。
やってみて分かったのは、困るのは対立そのものではなく、決めた後の温度差だということでした。多数決で決めた案件は、うまくいかなかったときに『だから言ったのに』が出ます。基準に照らして決めた案件は、うまくいかなくても『基準の当てはめ方を間違えた』という検証に向かいます。前者は人の問題になり、後者は方法の問題になる。ここが決定的な差です。
そしてもう一つ。基準は、割れる前に作っておかないと使えません。割れてから理念を持ち出すと、どれだけ正しくても後付けの正当化に見えます。平時に一度、『うちは価格と関係のどちらを優先するのか』『短期の数字と長期の信用が衝突したらどうするのか』を言葉にしておく。使う場面が来る前に置いておくのが、理念の実用的な使い方です。
大がかりな制度は要りません。紙一枚に四行で足ります。誰が決めるか。何に照らすか。いつ見直すか。決まった後どう振る舞うか。次に意見が割れる会議の前に、この四行を配ってみてください。議論の中身は変わりませんが、終わり方が変わります。
理念の言語化・共有・浸透・運用の4観点から、旗が判断の場面で使われているかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 経営理念・浸透度診断をはじめる 無料で相談するNORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、理念の文言を納品する立場ではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、優先順位の言語化 → 決め方の明文化 → 見直し条件の設定 → 決定後の振る舞いの共有までを、貴社の会議の実態に合わせて一緒に進めます。狙うのは、割れたときに使える基準です。
まずは無料の経営理念・浸透度診断で、旗が判断の場面で使われているかを確かめてみてください。結果を見ながら、四行の決め方を一緒に書きましょう。
※本記事は経営判断の進め方に関する一般的な整理であり、取締役会設置会社における決議など、会社法上の手続が求められる事項について法的助言を行うものではありません。機関決定が必要な事項の取扱いは、自社の定款および弁護士等の専門家にご確認ください。本文中の手順は成果を保証するものではありません。