理念づくりを工程で見ると、おおむね次の三つに分かれます。①素材を集める、②言葉に磨く、③何を捨てるかを決める。
①素材を集めるのは、社史の棚卸し、創業者へのヒアリング、社員が語る仕事の意味、実際に断ってきた仕事の記録。手間はかかるが、誰がやっても集まるものです。
②言葉に磨くのは、集まった素材から表現を作る工程。語順、長さ、比喩。ここは訓練された人のほうが確実に上手い。社長が何日もうなるより、素直に頼んだほうが早い。
③何を捨てるかを決める。これだけが性質が違います。やらない仕事、付き合わない相手、諦める市場を確定させる工程で、決めた瞬間に会社は何かを失います。失うものを引き受けられるのは、その損を実際に被る人だけです。
『外注した理念は使えなかった』という話をよく聞きます。中身を確かめると、多くの場合、①と②だけでなく③まで委ねていたケースです。
支援者は、集めた素材から最大公約数を作ります。誰も反対しない、きれいな言葉になる。当然です。外部の立場では、特定の顧客層を切り捨てる判断も、儲かる仕事を諦める判断もできません。責任を負えない人が決められるのは、角の立たない案だけです。
結果として出てくるのは『お客様第一』『地域とともに』『社員の幸せ』。間違ってはいませんが、迷った場面で何も教えてくれない。理念が使えないのは外注したからではなく、捨てる判断が入っていないからです。
ここも押さえておきます。全部を自社でやると、たいてい途中で止まります。日常業務の合間に社史を掘り、社員に話を聞き、表現を練る。半年経っても草案のまま、というのが典型です。
そして自前には別の弱点があります。社内の人間には、当たり前になっている強みが見えません。外の人が『それは普通じゃない』と指摘して初めて、素材として認識できることが多い。①の工程こそ、外の目を入れる価値が最も高いとも言えます。
つまり判断は外注するかどうかではなく、どこを渡してどこを渡さないか。この一点です。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。自分たちの会社の言葉も作ってきましたし、連合内の各社が同じ作業をするのも見てきました。
その経験で言えば、いい支援者は③に踏み込んできません。むしろ『ここは社長が決めてください』と押し返してきます。逆に、決めきれない社長に代わって案を出してくれる支援者は、その場は楽ですが後で効きません。押し返してくれるかどうかが、選ぶときの一番の見分け方だと思っています。
もう一つ。③を決める作業は、想像よりずっと孤独です。売上のある仕事を『これはうちの仕事ではない』と書くのは、経営者にとって痛みを伴います。だから多くの人が無意識に先送りし、当たり障りのない言葉に落ち着く。その痛みを避けた分だけ、理念は判断の役に立たなくなります。
言葉は借りられます。表現も借りられます。借りられないのは、失うものを引き受ける立場だけ。そこさえ間違えなければ、外注はむしろ積極的に使ったほうがいい工程です。
理念の言語化・共有・浸透・運用の4観点から、旗が判断の場面で使われているかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 経営理念・浸透度診断をはじめる 無料で相談するNORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、理念を代わりに作って納品する立場ではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、素材の集め方 → 表現の複数案づくり → 捨てるものの言語化 → 過去の判断での検証までを、社長が決めるべき部分は押し返しながら一緒に進めます。狙うのは、迷った場面で答えが出る言葉です。
まずは無料の経営理念・浸透度診断で、旗が判断の場面で使われているかを確かめてみてください。結果を見ながら、どこを任せてどこを自分で書くかを一緒に決めましょう。
※本文中の工程の切り分けと決めごとは、BEYOND Holdings が複数の実業を運営する中で用いている一般的な整理です。支援会社の関与範囲や成果物は契約により大きく異なり、本稿は特定の事業者を評価するものではありません。