従業員42名の食品加工会社。二代目社長は、理念を作るにあたって全社員を巻き込むことに決めました。押し付けたくなかったからです。
まず全社員にアンケートを配り、大切にしたい価値観を書いてもらいました。次に部署ごとのワークショップを3回。出てきた言葉を集約し、投票で絞り込む。半年かけて、丁寧に進めました。
できあがった理念は『お客様に誠実に、仲間を大切に、地域とともに成長する』。発表会での反応は悪くありませんでした。全員が関わっているので、否定する人もいません。
ところが1年後、社長は気づきます。この言葉が判断の場面で持ち出されたことが、一度もない。
何が起きていたか。工程を振り返ると、はっきりしています。
ワークショップの途中、実は鋭い言葉も出ていました。『安さで選ぶお客様とは取引しない』。営業からは反対が出ました。既存客に該当する会社があるからです。もっともな反対だったので、この案は消えました。
同じことが何度も起きます。誰かの担当領域に触れる表現が出るたびに、その人が反対し、和らげた表現に置き換わる。絞り込みの各段階で、判断に使える言葉から順に落ちていったのです。
ここが要点です。理念とは、何かを選び何かを捨てる基準です。捨てる話が含まれる以上、必ず誰かが不利になる。全員の合意を条件にすると、捨てる話は構造的に生き残れません。
翌年、この会社はやり直しました。全社員参加はやめ、役割を三つに分けました。
書くのは社長。白紙から議論するのではなく、社長が草案を書きます。捨てるものを含んだ、角のある言葉で。
確かめるのは幹部3人。ここで頼むのは賛成か反対かではありません。『この言葉で、去年のあの案件は判断できたか』を検証してもらう。実務で使えるかどうかのテストです。
使うのは全員。作る段階ではなく、使う段階で参加してもらう。巻き込みが必要なのは、作るところではなく使うところだったというのが、この会社の結論でした。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。連合という形をとっている以上、合意形成の難しさは日常的に経験しています。
その実感として言えるのは、合意が必要な場面と、合意を取ってはいけない場面があるということです。やり方や進め方は、関わる人の合意があったほうが確実に回ります。ところが何を捨てるかという決定に合意を求めると、捨てるものがなくなります。全員が少しずつ譲った結果、何も選んでいない状態になる。
そしてもう一つ。社員は、社長が決めたことに対して、思ったほど反発しません。反発が起きるのは、決めた理由が説明されないときです。『この方針でいく。理由はこうだ』と言い切られたほうが、むしろ動きやすい。全員で決めた形にすることが、実は誰も責任を持たない状態を作っていることがあります。
巻き込むこと自体は正しい。問題はどこに巻き込むかです。書く場面ではなく、確かめる場面と使う場面。ここを間違えなければ、社員参加は理念を強くします。
理念の言語化・共有・浸透・運用の4観点から、旗が判断の場面で使われているかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 経営理念・浸透度診断をはじめる 無料で相談するNORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、ワークショップを運営して終わりではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、草案づくりの伴走 → 幹部による実務検証の設計 → 削る言葉の見極め → 使う場面での巻き込みまでを、貴社の組織に合わせて一緒に進めます。狙うのは、反対が出るくらい具体的な言葉です。
まずは無料の経営理念・浸透度診断で、旗が判断の場面で使われているかを確かめてみてください。結果を見ながら、誰をどこで巻き込むかを一緒に決めましょう。
※本文中の会社・人物・数値は、よくある状況をもとに構成した想定事例です。特定の企業を指すものではありません。手順は、BEYOND Holdings が複数の実業を運営する中で用いている一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。