『安さで勝負しない』『無理な仕事は受けない』。方向としては正しいのですが、現場が案件を前にしたときに使えません。何が無理なのかが書かれていないからです。
結果、現場は社長に聞きます。この確認が一日に何度も発生している会社では、社長は判断の窓口になっています。方針を掲げたのに、判断は集中したままです。
もう一つの症状が、人によって答えが変わることです。同じような案件を、ある営業は断り、別の営業は受ける。基準がないのではなく、書かれていない基準が各人の頭の中にある状態です。
だから、書き方を変えます。掲げる言葉ではなく、迷う場面で引ける条件にする。
やらないことは一つの箱に入りません。迷う場面で分けます。
①受けない案件。当日依頼、仕様未確定のままの着手、指定の材質が使えない条件。営業がその場で断れる範囲を書きます。
②応じない依頼。既存客からの追加要望のうち、無償では受けないもの。ここが空欄の会社では、現場が善意で引き受けて疲弊します。
③やらない投資。回収期間が一定を超えるもの、自社に運用できる人がいないもの。検討する前に外せるものを書く。
④採らない・組まない相手。取引条件や支払いに関する線引き。ここは関係法令と自社の規程に照らした確認が必要です。
四領域それぞれ三行まで。合計で十二行を超えたら、現場は覚えられません。
①価値観。『誠実でない仕事はしない』は判断に使えません。これは理念の側に置くものです。
②例外が多すぎる条件。書いた直後から例外が出るものは、条件の切り方が間違っています。例外を三回認めたら、その行は書き直しです。
③守れていないこと。いちばん危ない。掲げた条件を社長が破ると、そのリスト全体が参照されなくなります。書けるのは、忙しい月にも守れる条件だけです。
額に入れるのをやめます。置くのは次の三か所です。
①見積書を作る画面のそば。物理的な紙でも、ファイルの最初のシートでも構いません。見積を作る瞬間に目に入る場所です。
②電話の横。当日依頼や追加要望は、電話で来ます。
③朝礼の場。毎日読む必要はありません。該当する案件が出た日に、その行を読み上げる。使われた実例が共有されると、定着が速くなります。
ここが本題です。やらないことリストの効果は、社長への確認回数で測れます。
①二週間、社長が受けた確認を数える。内容も一行で記録します。導入前の基準値になります。
②リストを貼って、一か月後に同じ二週間を数える。
③減っていない項目を見る。同じ確認が繰り返し来ているなら、その領域の条件が書かれていないか、書き方が粗いということです。そこを書き足します。
この測定があると、リストが更新される仕組みになります。貼って終わりにならない理由は、測っているからです。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。この種のリストは各社で持っています。
私たちの失敗は、最初に立派な文章で書いたことでした。読めば納得するが、現場では一度も引かれなかった。条件の形に書き直してから、初めて使われました。
そして意外だったのが、現場から行を足す提案が出てきたことです。営業が『この依頼、毎回困るので書いてほしい』と言ってくる。リストが社長の道具から現場の道具に変わった合図でした。
もう一つ。やらないことを書くと、やることが決まります。四領域の条件を書き切ったとき、残った範囲がその会社の仕事の輪郭になっていました。やることリストを先に作るより、こちらのほうが速い。これは何度やっても同じでした。
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▶ 経営理念・浸透度診断をはじめる 無料で相談するNORTHで伴走する場合、方針文を書くところから入りません。まず二週間、社長が受けている確認を数えるところから始めます。数えると、どの領域の条件が足りないかが先に分かります。
そのうえで、四領域それぞれ三行、置く場所の決定、例外が三回出たら書き直すという運用、そして一か月後の再測定まで。理念の言葉づくりは別の作業として分けます。取引や採用の基準については、関係法令と自社の規程に照らした確認とセットで進めてください。
まずは無料の経営理念・浸透度診断で、会社の旗と日々の判断がどれくらい噛み合っているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に書く一領域を一緒に選びます。
※本記事の手順および記載例は、中小企業の現場でよくある状況をもとにした一般的な整理であり、特定の企業の実例ではありません。本文中の数値はすべて説明のための仮設例です。取引の可否や採用の基準を定める場合は、関係法令および自社の規程に照らして個別にご確認ください。