まず事実から。日本経済新聞の報道によれば中小企業の約6割は人事評価制度を持たず、規模が小さいほど導入率は下がります(従業員101人超で87.2%に対し、5〜20人ではわずか35.0%)。そして制度を運用している中小企業は、92%が賃上げを実施し、半数以上が業績向上につながったとする調査もある。定着率『7割以上』の割合も、制度を持つ会社のほうが明確に高い。『評価制度=あった方が強い』は、データ上ほぼ正しいのです。
ところが、ここに罠があります。同じ調査群で、評価制度を入れた会社が最も多く挙げる不満が『導入しても効果を感じにくい』。作ったのに現場が変わらない、むしろ評価面談が形式だけの儀式になり、社員の不満がかえって表面化する──これが『形骸化』です。制度は、作った瞬間に効くのではない。運用されて初めて効く。そこを取り違えると、手間だけ増えて逆効果になります。
形骸化する評価制度には、共通の作られ方があります。他社の立派な制度をそのまま持ち込むことです。大企業向けのコンピテンシー評価、細かい評価項目が数十個、5段階×多面評価──中小企業がこれを真似ると、運用が回りません。評価に時間がかかりすぎ、社長も現場も疲弊し、翌年には『去年のシートをコピペ』になる。立派な制度ほど、続かない。
もう一つの落とし穴が『評価のための評価』です。何のために評価するのかが曖昧なまま、点数をつけること自体が目的化する。社員から見れば『何を頑張れば評価されるのか分からない』ままで、点数だけ告げられる。これでは納得のしようがありません。納得感は、評価の精密さからではなく、『基準の分かりやすさ』と『対話の量』から生まれる。中小企業の武器は、精密さではなく、社長と社員の距離の近さです。そこを活かさない制度は、必ず形骸化します。
中小企業が形骸化させずに評価制度を作るなら、順番はこうです。最初から完璧を目指さないのが鉄則です。
いま評価制度が効く理由は、もう一つあります。賃上げの局面です。最低賃金が上がり続け、多くの会社が賃上げを迫られている今、『誰を・何を基準に上げるのか』を説明できない会社は、原資も納得も失います。評価制度は、限られた賃上げ原資を『頑張った人に厚く配る』ための物差しになる。一律のベアだけでは、活躍する社員ほど報われず、静かに辞めていきます。
だからこそ順番はシンプルです。①評価したい行動を絞る → ②対話の場を先に作る → ③粗く一年回す → ④賃上げ・処遇と結びつけて説明する。BEYONDグループも9社それぞれで人を評価し、時に不公平だと言われながら、この『小さく始めて回しながら直す』やり方に落ち着きました。立派な制度より、続いて、納得される制度を。それが定着の分岐点になります。
定着・属人化・採用・育成評価の4観点から、組織の弱点をレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 組織体力診断をはじめる 無料で相談するPACK(BEYOND PLAYBOOK)は、立派な評価シートを納品して終わりではありません。BEYONDグループ自身が複数の実業で人を評価し続けてきた当事者として、評価したい行動の言語化 → 対話の場の設計 → 粗い試行版での運用 → 賃上げ・処遇との接続まで、貴社の規模で実際に回る形に一緒に作ります。作って終わりの制度ではなく、毎年育っていく制度へ。そこまで並走します。
まずは組織体力診断で、評価・定着・育成のどこが弱点かを掴むところから。結果を見ながら、最初に整える一点を一緒に決めましょう。
※背景データは、中小企業の約6割が人事評価制度を持たない・従業員規模で導入率に差(101人超87.2%/5〜20人35.0%)=日本経済新聞ほかの報道、人事評価制度を運用する企業は92%が賃上げ・半数以上が業績向上/未導入企業の理由の最多が『導入しても効果を感じにくい』28.0%=日本人事経営研究室ほかの調査を参照しました。本記事の打ち手は一般的な考え方に基づくもので、個別の設計は自社の状況に合わせてご検討ください。