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#人材育成#定着・離職#意思決定
Management Column · 2026.08.04

課長がいない会社で、エースを課長にしたら潰れかけた話
── 中間管理職を育てる順番(想定事例)

社長と現場が直接つながっている、社員20人の会社。決裁も段取りも社長が握っていて、それで長く回ってきました。ところが受注が増え、社長の手が回らなくなる。そこで一番仕事のできる社員を課長にする。よくある展開で、よくある失敗です。リクルートマネジメントソリューションズが2026年2月に発表した調査では、現管理職の約6割が引き続き管理職として働く意思を持つ一方、一般社員の6割以上は管理職になりたくないと答えました。やってみると悪くない。でも外から見ると罰ゲームに見えている。この落差を放置したまま肩書きだけを渡すと、たいてい壊れます。以下は想定事例です。

1.【before】肩書きを渡した3か月後に起きたこと

課長になったのは、現場で一番数字を持っていた33歳の社員でした。社長の意図は明快です。自分の代わりに現場を見てほしい。ところが3か月で、三つのことが同時に起きました。

一つ、本人の生産量が落ちた。部下の相談に応じる時間が増えた分、自分の担当が回らない。それでも数字の責任は残っているので、結局夜と土曜で埋めるプレイングマネージャーになりました。二つ、部下が課長を飛ばした。困ったら今までどおり社長に聞くほうが早いからです。三つ、本人が『前のほうが良かった』と言い出した。手取りはほぼ変わらず、責任だけが増えた実感しかない。

ITエンジニアを対象とした別の調査では、管理職になりたくない理由の最多が業務量や責任が増える割に報酬が見合わない(54.7%)、次が上司と部下の板挟みのストレス(44.8%)でした。職種は限られた調査ですが、この会社で起きたことと綺麗に重なります。周りの社員は、その姿を毎日見ています。次の課長候補は、この時点でもういなくなりました

肩書きを渡しただけの人は、仕事が二つになっただけの人になる。

2.何が抜けていたのか ── 渡したのは肩書きだけだった

この会社が渡したのは、名刺の肩書きと『現場を見てくれ』という曖昧な期待だけでした。渡していないものが三つあります。決めていい範囲手放していい仕事、そして報酬の裏づけです。

とくに大きいのが一つ目です。部下が課長を飛ばして社長に聞くのは、部下が悪いのではありません。課長が何をどこまで決めていいのかを、誰も知らなかったから。決裁の線が引かれていない組織では、全員が最短経路である社長に向かいます。肩書きは、権限が伴ってはじめて機能します。

3.【turn】どう組み直したか ── 渡す順番を逆にする

肩書きより先に『決めていい金額と範囲』を紙に書く
この会社は、見積は◯万円まで課長決裁、シフトと残業の承認は課長、値引きは社長、と一枚に書いて全社に配りました。部下が飛ばさなくなったのは、この紙を配った翌週からです。権限は、本人にではなく組織全体に知らせて初めて効きます。ポイント:権限表は本人ではなく、部下全員に配る
増やす前に、本人の担当を先に減らす
管理の仕事を足すなら、プレイヤーとしての担当を同じ量だけ外す。この会社は担当顧客の3割を他の社員に移してから、正式に課長の役割を始めました。順番が逆だと、必ず夜と休日で埋めることになります。ポイント:足す量と同じだけ、先に引く
手当は『責任の対価』ではなく『時間の買い取り』として設計する
残業代が減って手取りが下がるなら、誰も引き受けません。この会社は役職手当を、部下の育成や段取りに使う時間の対価と定義し、金額の根拠を本人に説明しました。納得は、金額の大きさよりも根拠の有無で決まります。ポイント:手当の根拠を、本人に言葉で説明できるようにする
いきなり課長にせず、半年の『代行期間』を置く
月イチの現場会議の進行、新人1名の指導、シフトの一次案づくり。この三つだけを先に半年任せ、向き不向きと本人の意思を見てから任命する。合わなければ肩書きが付く前に戻せるので、本人も会社も傷つきません。ポイント:任命の前に、小さく試す期間を必ず挟む

4.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。自分たちで人を引き上げてきて痛感するのは、中間管理職が育たない会社の原因は、候補者の資質ではなく渡し方にあるということ。優秀な人ほど、準備のない肩書きを渡されると疲弊して離れます。

冒頭の調査の落差が、本質を突いています。現管理職の約6割は続けたいのに、一般社員の6割以上はなりたくない。中に入れば意味も手応えもあるのに、外からは損な役回りにしか見えていない。この差は、やりがいを語って埋まるものではありません。埋まるのは、権限・仕事量・報酬という具体を先に整えたときだけです。

そしてもう一つ。中間管理職を置く本当の目的は、社長の負担軽減ではありません。社長がいなくても判断が下りる場所を、社内に一つ増やすことです。だから最初に渡すべきは仕事ではなく、決めていい範囲。ここを逆にした瞬間、課長は『社長の伝令役』になり、誰もなりたがらない役職が一つ増えるだけになります。

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5.PACK は、任せられる組織の順番から一緒に作る

PACK(BEYOND PLAYBOOK)は、研修を一度実施して終わりにはしません。BEYOND Holdings 自身が実業の当事者として、決裁範囲の線引き → 担当の引き算 → 手当の根拠づくり → 代行期間の設計と見極めまでを、貴社の人数と商売に合わせて組み立てます。人を育てる前に、育つ枠組みのほうを先に作ります。

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※背景データは、現管理職の約6割が引き続き管理職として働く意思を持つ一方で一般社員の6割以上は管理職になりたくないと回答=株式会社リクルートマネジメントソリューションズ『管理職のあり方に関する実態調査』(2026年2月24日発表)、管理職になりたくない理由として業務量や責任が増える割に報酬が見合わない54.7%・上司と部下の板挟みのストレス44.8%=株式会社キッカケクリエイション『25〜39歳のITエンジニアに聞いた管理職離れの実態』(2026年6月公表、対象はITエンジニアに限定)を参照しました。本文中の会社・数字は、よくある状況をもとに構成した想定事例です。