従業員8人の金属加工の町工場。社長が一番頼りにしていたのが、勤続15年のベテラン・田中さん(仮名)でした。難しい図面の読み解き、段取り、主要客との細かなやり取り——核心の仕事はいつの間にか田中さん一人に集まり、他の職人は『田中さんに聞けば早い』が口癖になっていました。社長もそれを頼もしく思い、あえて手を入れずにいた。
ところがある日、田中さんが家庭の事情で退職を申し出ます。引き継ぎ期間はわずか。翌月、主要客の特殊案件が『田中さんじゃないと無理』と回らなくなり、受注は実質半分近くまで落ち込みました。頼れる一人がいたのではなく、一人に頼りきっていた——それが牙をむいた瞬間でした。人手不足倒産の77%が10人未満というのは、こういう現場の連なりです。
社長が最初にやりかけたのは、慌てて田中さんの仕事を若手一人に丸ごと引き継ぐことでした。が、これは②の轍——一人依存を別の一人依存に付け替えるだけです。踏みとどまって順番を変えました。まず田中さんの仕事を『工程』に分解して紙に並べた。図面解読・段取り・加工・検査・客対応。すると、全部が難しいわけではなく、本当に田中さんにしかできないのは図面解読と客対応の2つだけだと見えてきた。
残りは手順書と数回の同席で、他の職人でも回せる。そこで『誰が何をできるか』を一覧にしたスキルマップを作り、各工程に『できる人を最低2人』という目標を置きました。多能工化とは、全員が何でもできる超人になることではありません。一つの工程を任せられる人を、一人から二人にすること。それだけで会社は驚くほど折れにくくなります。
BEYONDも9社の現場で同じ痛みを何度も見てきました。エースは宝ですが、依存はリスク。この事例から抽出できる、今週から着手できる三手はこうです。
①分解し、②急所を炙り出し、③二人目に移す。多能工化は大がかりな制度改革ではなく、『各工程の二人目を作る』小さな積み重ねです。人手不足倒産が過去最多の今、採用で頭数を増やすより先に、いる人材が抜けても折れない体をつくる方が、はるかに現実的で速い打ち手になります。
採用・定着・育成・属人化の観点から、いまの組織のどこが一人依存の急所かをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 組織体力診断をはじめる 無料で相談するPACK(BEYOND PLAYBOOK)は、多能工化の号令をかけて終わり、にはしません。エースの仕事を工程に分解し → スキルマップで急所を炙り出し → 手順書と同席で二人目に移すまで、実際に組織が折れにくくなる形で一緒に進めます。私たちは評論家ではなく、9社それぞれの現場で人の抜けと採用難に向き合ってきた実業集団。エース1人に頼りきる怖さの当事者だからこそ、精神論でなく手順で属人化をほどけるのが武器です。
まずは無料の組織体力診断で、いまどの工程が一人依存の急所かを掴むところから。結果を見ながら、最初に二人目を作る一点を一緒に決めましょう。