この二つのニュースを、多くの会社は人件費の話として受け取ります。それは正しい。ただし半分だけです。
思い出してほしいのは、これまでパート・アルバイトの働き方を決めていたのが、本人の意欲でも会社の都合でもなく『壁』だったという事実です。年末が近づけばシフトを削る。繁忙期にいちばん頼りたい人が入れない。会社側は、一人に厚く任せる設計ができず、薄く広く人を並べるしかなかった。人が足りないのに時間が余る、というねじれです。
賃金要件が撤廃されれば、週20時間以上働く人は年収にかかわらず対象になります。つまり『年収を見ながら時間を抑える』という調整の前提そのものが消える。手取りの計算は人によって変わりますが、少なくとももっと働きたいのに働けなかった人が動けるようになる——これは人手不足の会社にとって、間違いなく追い風の側面です。
とはいえ、4.9%の上昇を吸収する話からは逃げられません。ここで一つ、実務の感覚を挟みます。時給が上がって本当に痛いのは、『戦力になっていない人』の時給が上がるときです。一人でレジを締められる、一人で工程を回せる、電話を受けて判断まで返せる——そういう人の時給が50円上がっても、経営は痛くありません。むしろ安いくらいです。
私たちBEYONDは9社の現場を自分たちで回しています。店舗も、加工の現場も、事務も、パート・アルバイトの方々に支えられている。そこで効いたのは、時給の上げ下げの工夫ではありませんでした。効いたのは、『これは正社員しかできない』と思い込んでいた仕事を、一つずつ棚卸ししたことです。並べてみると、理由の多くは権限でも資格でもなく、単にその人が慣れているからでした。慣れなら、渡せます。
秋の改定まで、実質的に動ける時間は多くありません。大きな制度改定を待たず、次の三手から始めれば十分に間に合います。
①範囲を洗い、②段をつけ、③希望を聞く。制度改定は待ってくれませんが、この三手はどれも今週から着手でき、投資がほぼゼロです。逆に、何もしないまま10月を迎えた会社は、上がった時給を、これまでと同じ仕事の範囲に払い続けることになります。
採用・定着・育成・属人化の4観点から、いまの組織のどこに戦力化の余地が眠っているかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 組織体力診断をはじめる 無料で相談するPACK(BEYOND PLAYBOOK)は、制度改定の解説で終わりにはしません。任せられる仕事を洗い出し → 時給の段と条件を言葉にし → 秋以降の働き方の希望を一人ずつ拾うところまで、実際にシフトが組み替わる形で一緒に設計します。私たちはコンサルではなく、9社それぞれの現場で毎月シフトを組み、時給を決めている実業集団です。壁に合わせて人を薄く並べる苦しさも、任せた瞬間に人が変わる手応えも、自分たちで払ってきました。
まずは無料の組織体力診断で、いまどこが戦力化の詰まりかを掴むところから。結果を見ながら、最初に渡す一つの仕事を一緒に決めましょう。
※最低賃金は、2026年7月28日に中央最低賃金審議会が答申した目安(Aランク54円、B・Cランク各56円、目安どおりなら全国加重平均1,121円→1,176円・引き上げ率4.9%)に基づく記述です。各都道府県の実際の改定額は、地方最低賃金審議会の審議を経て各労働局長が決定します。社会保険の適用拡大(月額8.8万円の賃金要件撤廃・企業規模要件51人以上への引き下げ、2026年10月予定/企業規模要件は以降段階的に撤廃予定)についても、個別の適用可否は要件が複数あるため、顧問社労士にご確認ください。