右腕が育たない会社で、社長に『何を任せていますか』と聞くと、答えは『現場全般』や『営業まわり』になります。悪気はなく、そういう感覚で渡している。
ところが本人の側から見ると、この指示は極めて曖昧です。値引きはどこまで自分で決めていいのか。人を一人採る判断はしていいのか。取引先を断ってもいいのか。どれも現場全般に含まれますが、勝手に決めて後で叱られるのが怖い。
だから確認しに来ます。社長は『そんなことまで聞くのか』と思い、本人は『聞かないと怒られる』と思っている。両方が相手のせいだと感じている状態が、右腕不在の会社でよく見られる光景です。
もう一つの失敗が、本当に全部渡してしまうことです。『来期から現場は君に任せる。私は口を出さない』。潔く見えますが、これも続きません。
理由は単純で、大きな判断が必ず来るからです。設備投資、主要取引先とのトラブル、幹部の処遇。ここで社長が黙っていられるはずがなく、結局は介入します。そして一度介入すると、周囲は『やはり最後は社長が決める』と学習します。
全部任せるは、育成ではなく放棄です。しかも放棄したものを途中で取り返すので、渡された側の立場だけが悪くなる。最初から渡さないものを決めておくほうが、はるかに誠実です。
部署や業務で区切ろうとすると、境界が曖昧になります。判断の種類で分けるほうが実務的です。
種類は大きく三つ。お金の判断、人の判断、時間の判断。渡す順番もこの通りが扱いやすい。お金は金額で線が引けるので最も明確、人は影響が長く残るので慎重に、時間は納期や優先順位の変更で、日常的に発生します。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。連合の各社でも、右腕づくりは共通の課題でした。
やってみて分かったのは、渡す側の問題のほうが大きいということです。候補者の能力不足に見えていた場面の多くは、実際には渡す範囲が言葉になっていなかっただけでした。金額の線を引いた翌週から、それまで確認に来ていた案件が来なくなる。能力は最初からあった、ということです。
そしてもう一つ。渡した後に口を出さない、が本当に難しい。自分ならこうしないという場面は必ず来ます。そこで一言言ってしまうと、次から本人は社長の顔色を見て決めるようになる。結果として、判断は社長のものに戻ります。渡すというのは、自分より下手なやり方を一度は通すということです。
右腕は、探すものではなく作るものです。そして作るのに必要なのは、時間より先に、境界線を紙に書くこと。金額、配置、渡さないもの。この3点を書き出すだけなら、今日のうちに終わります。何年も右腕がいないと言い続けている会社の多くは、この紙をまだ書いていません。
採用・受け入れ・育成・定着の4観点から、人が根づかない原因をレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 組織体力診断をはじめる 無料で相談するPACK(BEYOND PLAYBOOK)は、研修を実施して終わりではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、渡せる金額の線引き → 配置権限の移譲 → 渡さない領域の明示 → 社長が介入しない運用までを、貴社の体制に合わせて一緒に組み立てます。狙うのは、社長が現場を離れても判断が止まらない状態です。
まずは無料の組織体力診断で、人が根づかない原因がどこにあるかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に渡す範囲を一緒に決めましょう。
※本文中の手順は、BEYOND Holdings が複数の実業を運営する中で用いている一般的な整理です。組織の規模・業種・体制により有効性は異なり、成果を保証するものではありません。