この会社では、誰かが手が空いたら請求書を作る形になっていました。忙しい人の分は他の人が拾う。助け合いとしては理想的です。
ところが、この形には決定的な弱点があります。誰もやらなかった場合に、誰も気づかない。担当が決まっていれば、その人が忘れたときに他の人が『あれ、まだ?』と言えます。全員の仕事だと、誰も他人の遅れとして認識できません。
もう一つ、判断が止まります。取引先から条件変更の相談が来たとき、受けた人は『自分が決めていいのか』が分からない。社長に聞くまで止まる。五人の会社で、五人が全員社長の判断を待っている状態が生まれます。
この会社が変えたのは一点だけです。業務の兼務はそのまま残し、責任だけを一人ずつに割り当てました。
請求業務は、これまでどおり全員が作業します。ただし、最終確認をする人を一人だけ決めた。その人は自分で全部やる必要はなく、月末に一覧を見て抜けがないかを確かめるだけ。作業は分散、確認は一点です。
この形にすると、忙しい月に他の人が作業を代わっても構いません。確認者が変わらないので、抜けは必ずそこで止まります。兼務のまま、抜けだけがなくなりました。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。数人でやっている会社も中にあります。
実感として、少人数の会社に職務記述書を持ち込むと、たいてい失敗します。書いた瞬間に実態と合わなくなるからです。実際には全員が全部やらないと回らない。形式を整えることが目的化すると、現場は二重帳簿のように運用しはじめます。
効いたのは、責任の一点集中だけでした。兼務は前提として認める。そのうえで、最後に見る人だけを決める。これは職務の分担ではなく、抜けを止める仕組みの話です。
もう一つ、意外だった効果があります。確認者を決めると、その人がその業務を勉強しはじめます。最後に見る立場になると、分からないままでは済まなくなる。結果として、五人の会社に五つの専門ができました。育成の仕掛けとしても働きます。
注意点も一つ。確認者を決めた直後は、その人の負荷が上がったように見えます。実際に増えているのは作業ではなく気の張りです。ここで『やっぱり全員でやろう』に戻すと、元の状態に帰ります。三か月は続けてから判断してください。
最初の一歩は、直近で抜けが出た仕事を一つ選び、その最終確認者を一人決めることです。全業務を整理する必要はありません。抜けた一つから始めるほうが、納得も得やすい。
採用・受け入れ・育成・定着の4観点から、人が根づかない原因をレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 組織体力診断をはじめる 無料で相談するPACK(BEYOND PLAYBOOK)は、組織図を納品する立場ではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、業務の区切り方 → 確認者の割り当て → 権限の金額と範囲の設定 → 一覧の掲示と運用までを、貴社の人数に合わせて一緒に整理します。狙うのは、兼務のままで抜けが止まる状態です。
まずは無料の組織体力診断で、人が根づかない原因がどこにあるかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に確認者を決める業務を一緒に選びましょう。
※本記事の会社の場面は、中小企業でよくある状況をもとに構成した想定事例であり、特定の企業を指すものではありません。職務の分担や責任の範囲を明確にする際は、労働契約や就業規則との整合を確認してください。労働条件の変更にあたる可能性がある場合は、社会保険労務士にご確認ください。本文中の手順は一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。