この調査は2025年10月から12月に行われたもので、企業と事業所の両方に能力開発の実態を聞いています。8割という数字は、問題意識がないことを示していません。むしろ逆で、ほとんどの現場が困っていると答えている。
ここで注目したいのは、統計として集まっているのが主に費用の話だということです。研修費、教材費、外部講師への支払い。金額なので数えられ、比較でき、前年と並べられます。
一方、社内で先輩が後輩に教えている時間は、どこにも計上されていません。だから『今月、育成にどれだけ使ったか』という問いに、ほとんどの会社が答えられない。答えられないということは、増えたか減ったかも分からないということです。
一つ目。指導時間が売上に紐づきません。工数表が案件別になっている会社では、指導は『その他』か『間接』に入ります。そして『その他』の欄は、しばらくすると誰も書かなくなる。分類がないのではなく、分類の格が低いのです。
二つ目。教える側が評価されません。指導に月3時間使った人と、まったく使わなかった人の評価が同じなら、使わないほうが合理的です。現場は正しく反応しているだけで、責める話ではありません。
三つ目。育たないと、教えられる人がさらに忙しくなります。忙しいから教えられない、教えないから育たない、育たないからもっと忙しい。この輪は、時間を先に確保しない限り自然には止まりません。景気が良くなっても、人が増えても止まらない。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。人が足りない現場も、教える側が潰れかけている現場も、実際に見ています。
並べて分かったのは、育成が進む会社と進まない会社の差は、経営者の熱意ではなかったということです。差がついていたのは、指導時間が数字になっているかどうかだけでした。熱意のある社長が旗を振っても、工数に載っていなければ半年で消えます。
よくある反対意見にも触れておきます。指導時間を計上すると、生産性が下がったように見えるから嫌だ、という声です。しかし、実際に使っていた時間が表に出るだけで、使っていた事実は何も変わりません。むしろ見えていない状態のほうが、原価計算が狂っています。案件の実際の工数に、指導の時間が紛れ込んだままになっている。
もう一つ、正直に書いておきます。教える時間を本気で確保すると、最初の数か月は生産量が実際に落ちます。ここで元に戻す会社が多い。落ちる分を最初から織り込んで計画するかどうかが、分かれ目です。織り込んでいれば、落ちても慌てません。
最初の一歩は、先月、誰が誰に何時間教えたかを、記憶を頼りに書き出してみることです。正確でなくて構いません。書き出せないなら、それがそのまま答えです。
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※データに関する記述は、厚生労働省が2026年7月31日に公表した令和7年度能力開発基本調査において、能力開発に何らかの問題があると回答した事業所の割合が80.1%であったことを参照しました。同調査は2025年10月から12月にかけて実施された標本調査であり、企業票と事業所票で調査対象が異なります。本文中の工数管理の手順は一般的な整理であり、労働時間の管理や評価制度の運用は、就業規則および労働関係法令に沿って行ってください。個別の取扱いは社会保険労務士にご確認ください。