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#新規事業#人手不足#採用
Management Column · 2026.09.30

取引先が畳むと聞いて、
設備ではなく四人を引き受けた

廃業する会社から何かを引き取るとき、多くは顧客か設備を見ます。
ところが引き取る価値がいちばん高いのは、動いているチームであることがあります。
設備を断り、四人をまとめて受け入れた会社の想定事例を追います。

1. 【before】仕事はあるのに、人が足りない

従業員27名の内装工事会社。受注は伸びていました。ところが施工できる人が足りず、断っている案件が月に何件もありました。

採用は続けていました。二年で五人採り、三人が一年以内に辞めています。経験者を採っても、既存の職人と組ませる段階で摩擦が起きて離脱する。原因は本人の能力ではなく、一人で新しい現場に入ることの難しさでした。

そこへ、長く付き合ってきた同業の社長から連絡が来ます。『来春で畳むことにした』。後継者がおらず、本人も体調に不安がある、という理由でした。

最初に持ち上がったのは、設備と工具を買い取る話でした。

01一人で入る経験者は、実力とは別の理由で折れる
新しい現場に単独で入ると、段取りも人間関係も一から作り直しになります。離脱の多くはここで起きています。ポイント:採用の失敗は、技能ではなく入り方で起きる

2. 【turn】設備を断り、人に話を切り替えた

この会社の社長が確かめたのは、先方の従業員の状況でした。職人が四人、全員が続けて働く意思がある。しかも三人は十年以上同じ組で動いていました。

そこで話を切り替えます。設備は不要、四人をそのまま受け入れたい。

理由は三つありました。

①組ごと入れば、段取りが最初から回る。誰が何をするかを決め直す必要がない。

②四人の中に、教えられる人がいる。若手を任せられる相手が一人増えることの価値は、頭数以上でした。

③一人で入るのではないので、折れにくい。過去三年の離脱の原因が、そのまま回避されます。

設備については、必要なものだけ後から個別に買い取りました。まとめて引き取ると、使わないものの保管と処分が付いてきます。

3. 受け入れの前に決めた、四つ

この会社が先に決めたことです。順番が重要でした。

①給与と条件を一人ずつ提示する。四人まとめての条件提示はしません。チームで来てもらうが、雇用は個別という線を最初に引きました。

②組の扱いを決める。四人をそのまま一つの班として残すのか、既存の班に分けて入れるのか。この会社は最初の半年は組のまま、その後に混ぜると決めて伝えています。

③リーダーの位置を明示する。前職で現場を仕切っていた人に、こちらでどの範囲を任せるのかを文書で示しました。ここを曖昧にすると、既存の職長との間で線が引けません。

④既存社員に、先に説明する。四人が来ることを、決定後ではなく検討段階で共有しました。後から知らされるほうが、必ずこじれます。

労働条件の明示、社会保険や雇用保険の手続、退職金や有給休暇の取扱い、前職との競業避止や秘密保持の有無。これらは社会保険労務士および弁護士に確認しながら進めています。

02チームで来てもらうが、雇用は一人ずつ
まとめて条件を出すと、個々の納得が確認できません。組として迎えることと、契約が個別であることは両立します。ポイント:集団で迎えて、個人と契約する

4. 半年で起きた摩擦

うまくいった話だけではありません。二つ起きました。

一つ目、やり方の違いが表面化した。段取りの順番、資材の置き方、報告の粒度。どちらが正しいという話ではないのに、現場では毎回どちらかに合わせる必要がありました。

この会社の処理は単純でした。安全と品質に関わるものはこちらの手順に揃える。それ以外は班の裁量に任せる。線を一本引いただけで、議論が減りました。

二つ目、既存社員から不公平だという声が出た。四人が組のまま入ったことで、既存の班より動きやすく見えたのです。

ここは説明で処理しました。半年後に混ぜると最初に決めてあったので、期限を示せた。決めていなければ、感情の話になっていました。

5. 【after】一年後

一年で、断っていた案件を受けられるようになりました。それ以上に効いたのは、若手の育成が回り始めたことでした。教えられる人が一人増えたことで、既存の職長の負担が下がった。

四人のうち一人は、一年以内に別の会社へ移りました。全員が残るとは限りません。それでも三人が残り、そのうち一人が班を持っています。

社長の言葉はこうでした。『採用で三人採るより、確実で速かった』。

6. 実業の当事者として言えること

BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。人ごと受け入れる形は、グループ内でも経験があります。

分かったのは、この選択肢は、こちらから探しても見つからないということです。廃業の話は公開されません。取引先や同業との関係の中から入ってきます。だから普段の付き合いが、そのまま機会の入口になります。

そして一つだけ、条件があります。受け入れ側に、その人たちの仕事が実際にあることです。人が足りないから引き受けるのではなく、断っている仕事があるから引き受ける。この順番でないと、双方にとって不幸になります。

もう一つ。設備や顧客を引き取るより、確認すべきことは多い。人の話は、書類の話では終わりません。私たちは必ず、全員と個別に一度会ってから決めています。

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7. SEEDは、受け入れの設計から一緒に立つ

SEEDで伴走する場合、まず確かめるのは自社に断っている仕事があるかです。ここが空なら、この選択肢は成り立ちません。

そのうえで、個別の条件提示、組の扱いと混ぜる時期、リーダーの範囲の文書化、既存社員への事前共有まで。手順・条件・法令面の確認は、社会保険労務士および弁護士とセットで進めます。

まずは無料の新規事業の種・診断で、自社の新規事業がどこで詰まりやすいかを確かめてみてください。結果を見ながら、いま断っている仕事の棚卸しから一緒に始めます。

※本記事に登場する会社および経緯は、中小企業の現場でよくある状況をもとに構成した想定事例であり、特定の企業の実例ではありません。本文中の人数・数値はいずれも説明のための仮設例です。従業員の受け入れにあたっては、労働条件の明示、社会保険・雇用保険の手続、退職金や有給休暇の取扱い、前職との競業避止や秘密保持の有無など確認すべき事項が多くあります。実施にあたっては社会保険労務士および弁護士に必ずご確認ください。