まず数字の読み方から。BtoC-ECとBtoB-ECは集計の対象範囲が違うので、単純な大小比較には限界があります。それでも、いま自社が取引している企業間の市場が、消費者向けより桁違いに大きいことは変わりません。BtoC-ECの物販系分野のEC化率は9.8%で、消費者向けの商取引でさえ大半はまだ店頭です。
そのうえで、BtoBの会社がBtoCに惹かれる理由は、どれも本物です。単価を自分で決められる。値引き圧力の連鎖から離れられる。使った人の反応が直接返ってくる。自社の名前が残る。下請けの構造に長くいる会社ほど、この四つは切実です。
だから止める話ではありません。ただし『伸びている市場に出る』という理由だけでは弱い。数字を見れば、伸び率も規模もBtoB側のほうが大きいからです。出る理由は、市場規模ではなく自社の事情の側にあります。
①販路。BtoBは既存の商流に乗せれば届きます。BtoCは自分で集客する。ここが最大の違いであり、最大のコストです。商品ができた時点で、まだ半分も終わっていません。
②単価と数量。BtoBは1件が大きく件数が少ない。BtoCはその逆です。1件あたりの処理にかかる手間が同じなら、件数が増える分だけ管理業務が膨らみます。
③回収。BtoBは掛け売り、BtoCは前払いが基本なので、資金繰りはむしろ有利です。ただし返品・キャンセル・問い合わせ対応という、BtoBにはなかったコストが乗ります。
④相手の決め方。BtoBは仕様と条件で買います。BtoCは印象と納得で買う。同じ説明資料は使えません。カタログの文章をそのまま載せても、消費者には何も伝わりません。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。企業向けの商売も、消費者向けの商売も中にあります。
BtoCに出た会社で一番多い誤算は、売れないことではなく、売れた後の手間でした。10件売れた翌週に、梱包と発送と問い合わせで現場が止まる。売上が小さいうちに手間で音を上げる——これが典型的な失敗の形です。
そして、やってみて分かった本当の価値は、売上ではありませんでした。使っている人の声が直接返ってくることです。BtoBでは商社や元請けを経由するため、最終的に誰がどう使っているかが見えません。その情報は、本業の商品改良にそのまま効きます。
だから位置づけを変えることを勧めます。BtoCを『第二の柱』ではなく『本業の研究開発の場』として始める。この置き方にすると、判断がかなり楽になります。売上規模で評価しなくて済むからです。
注意点も一つ。BtoCの数字を、BtoBと同じ基準で評価しないでください。初年度の売上は、BtoBの1件に負けます。そこで撤退すると、一番価値のある情報を手に入れる前に終わります。
最初の一歩は、いま作っているもので、そのまま消費者に売れるものを一つ選ぶことです。開発はしない。選ぶだけです。
既存資産・市場性・体力・撤退基準の4観点から、次の一手が自社の地続きにあるかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
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※データに関する記述は、経済産業省が2025年8月26日に公表した令和6年度電子商取引に関する市場調査において、2024年の日本国内のBtoC-EC市場規模が26.1兆円(前年比5.1%増)、BtoB-EC市場規模が514.4兆円(前年比10.6%増)であり、BtoC-ECの物販系分野のEC化率が9.8%であったことを参照しました。BtoC-ECとBtoB-ECは集計の対象範囲が異なるため、規模の単純比較には限界があります。本文中の手順は一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。既存の販路との取引条件の変更や、消費者向けの表示については、下請代金支払遅延等防止法・景品表示法・特定商取引法など関係法令に留意し、専門家にご確認ください。