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#新規事業#意思決定#財務・資金繰り
Management Column · 2026.09.03

ゼロから作る前に、買えないかを一度考える|小さな事業譲受の入口

新規事業といえば、ゼロから作るものだと思われています。ところが2026年版中小企業白書は、M&A(買収)の実施有無別に付加価値額の増加率を比べ、買収を実施した企業が22.8%、実施していない企業が18.5%と、4.3ポイントの差があることを示しました。
買えば伸びる、という単純な話ではありません。買える体力のある会社が買っているという順序も十分にあり得ます。それでも、選択肢に『作らずに買う』が入っているかどうかで、打てる手の数は変わります

1.いま起きていること ── 買う選択肢が、届く距離まで来た

白書の数字は、因果ではなく関連を示すものです。買収したから伸びたのか、伸びる力のある会社が買収まで手を伸ばせたのか、この集計だけでは分かれません。だからこの4.3ポイントは『買え』という指示ではなく、『買うという選択肢を検討の土俵に載せている層が一定数いて、その層が伸びている』という程度に読むのが正確です

そのうえで、環境の側は明らかに動いています。譲る側の会社が増え、規模の小さい案件も相手が見つかるようになりました。中小企業庁はM&A支援機関登録制度を運用し、登録された支援機関の一覧を公表しています。相談先を探す段階でつまずく、という状態ではなくなってきました。

にもかかわらず、新規事業の会議で『買えないか』という問いが一度も出ない会社は、まだ多い。作ることが前提になっているせいで、比較の対象がそもそも存在していません

2.作る側の、見えないコスト

ゼロから作るとき、最初に手元にないものを並べてみます。顧客がいない。実績がない。人がいない。許認可がない。仕入先との取引履歴がない。そして何より、それらが揃うまでの時間がない

事業計画に載るのは通常、初期投資と運転資金です。載らないのは、顧客がゼロから一に変わるまでの十数か月と、その間に社内の熱が冷めていくことのほう。ここが、作る側の一番大きなコストです。

買う場合、そこには最初から顧客・売上・人・許認可・仕入先があります。つまり買っているのは事業そのものというより、時間と信用です。値段が高く見えるかどうかは、自社がその時間をどれだけ惜しいと思っているかで変わります。

作らずに買うとは、お金で時間と信用を買うということ

3.小さく買うときの、四つの入口

会社を買うのか、事業を買うのかを最初に分ける
株式を譲り受ける形は、その会社の権利も義務も丸ごと引き受けます。簿外の債務や係争が後から出てくる余地が残る。一方の事業譲渡は、引き取る範囲を切って決められます。小さく始めるなら、まずは事業譲渡の形のほうが扱いやすい。どちらの形を前提に話しているのかを、初回の面談で確認してください。ここが噛み合っていないまま進む案件は、必ず後で揉めます。ポイント:最初の面談で、株式なのか事業なのかを確認する
買う理由を、顧客・人・許認可のどれか一つに絞る
『顧客も人も設備も欲しい』と言い始めると、値段が合わなくなります。本当に欲しいものが一つに絞れていれば、交渉で譲れる線が自動的に決まります。顧客が目的なら設備は要らない、人が目的なら売上の規模は二の次、というように。欲しいものを一言で言えない案件は、いま見送っていい案件ですポイント:欲しいものを一言で言えないなら、まだ検討段階ではない
決算書より先に、譲渡後に誰が残るかを確認する
規模の小さい事業は、たいてい人に紐づいています。技術も、顧客との関係も、段取りも、特定の数人が持っている。その人たちが残らないなら、買ったのは顧客名簿と設備だけです。数字の精査より前に、キーパーソンが誰で、その人が譲渡後に残る意思があるかを確かめる。価格の話は、その後で構いません。ポイント:残る人を確認する前に、価格の交渉に入らない
引き継ぎの期間と権限を、契約に書く
前オーナーが何か月、どの権限で残るのか。ここが曖昧なまま始まると、現場が二人の上司を持つ状態になります。顧客も『どちらに言えばいいのか』で迷い、引き継ぎのつもりが関係の切れ目になる。期間と権限はセットで、期日つきで書く。厚意に頼らず条件にしておくほうが、双方にとって後腐れがありません。ポイント:引き継ぎは厚意ではなく、期間と権限の条件にする

4.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。事業を引き取る側にも、引き渡す側にも立つ機会があります。

その経験から言えるのは、これは安く買う競争ではないということです。問われるのは値段より、買った後にそれを回せる人と体制が自社にあるか。回せないなら、いくら安くても高い買い物になります。逆に回せる体制があるなら、多少高くても、作る場合の十数か月と比べれば十分に見合います。

それでも私たちが勧めたいのは、買うことそのものより、新規事業の会議で必ず一度『これ、買えないか』と聞く習慣のほうです。作る前提を一度崩すだけで、期間とコストの見積もりが現実的になります。買わないという結論でも構いません。比較したうえで作ると決めた会社と、比較せずに作り始めた会社とでは、途中でつまずいたときの粘りが違います。

次の企画会議で一つだけ試すなら、これです。提案された新規事業について『同じことを既にやっている会社を引き取る場合、いくらまでなら出すか』を、その場で全員に書いてもらう。金額が書けなければ、その事業の価値をまだ誰も測れていない、ということです。

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5.SEED は、比較の設計から一緒に立つ

SEED(BEYOND PLAYBOOK)は、新規事業をゼロから立ち上げるだけの立場ではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、作る場合と買う場合の比較 → 欲しいものの絞り込み → 残る人の確認 → 引き継ぎ条件の設計までを、貴社の状況に合わせて一緒に進めます。狙うのは、比較したうえで選んだと言える一手です。

まずは無料の新規事業の種・診断で、いまの取り組みが自社の地続きにあるかを確かめてみてください。結果を見ながら、作るか買うかを一緒に整理しましょう。

※データに関する記述は、2026年版中小企業白書がM&A(買収)の実施有無別に付加価値額増加率を比較し、買収実施企業22.8%、非実施企業18.5%としていることを参照しています。この差は両者の関連を示すものであり、買収が増加をもたらしたことを示すものではありません。M&A支援機関登録制度は中小企業庁が運用する制度で、登録された支援機関の一覧が公表されています。事業譲渡・株式譲渡の法務・税務・労務の取扱いは案件ごとに異なります。実行にあたっては弁護士・税理士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。