白書の数字は、因果ではなく関連を示すものです。買収したから伸びたのか、伸びる力のある会社が買収まで手を伸ばせたのか、この集計だけでは分かれません。だからこの4.3ポイントは『買え』という指示ではなく、『買うという選択肢を検討の土俵に載せている層が一定数いて、その層が伸びている』という程度に読むのが正確です。
そのうえで、環境の側は明らかに動いています。譲る側の会社が増え、規模の小さい案件も相手が見つかるようになりました。中小企業庁はM&A支援機関登録制度を運用し、登録された支援機関の一覧を公表しています。相談先を探す段階でつまずく、という状態ではなくなってきました。
にもかかわらず、新規事業の会議で『買えないか』という問いが一度も出ない会社は、まだ多い。作ることが前提になっているせいで、比較の対象がそもそも存在していません。
ゼロから作るとき、最初に手元にないものを並べてみます。顧客がいない。実績がない。人がいない。許認可がない。仕入先との取引履歴がない。そして何より、それらが揃うまでの時間がない。
事業計画に載るのは通常、初期投資と運転資金です。載らないのは、顧客がゼロから一に変わるまでの十数か月と、その間に社内の熱が冷めていくことのほう。ここが、作る側の一番大きなコストです。
買う場合、そこには最初から顧客・売上・人・許認可・仕入先があります。つまり買っているのは事業そのものというより、時間と信用です。値段が高く見えるかどうかは、自社がその時間をどれだけ惜しいと思っているかで変わります。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。事業を引き取る側にも、引き渡す側にも立つ機会があります。
その経験から言えるのは、これは安く買う競争ではないということです。問われるのは値段より、買った後にそれを回せる人と体制が自社にあるか。回せないなら、いくら安くても高い買い物になります。逆に回せる体制があるなら、多少高くても、作る場合の十数か月と比べれば十分に見合います。
それでも私たちが勧めたいのは、買うことそのものより、新規事業の会議で必ず一度『これ、買えないか』と聞く習慣のほうです。作る前提を一度崩すだけで、期間とコストの見積もりが現実的になります。買わないという結論でも構いません。比較したうえで作ると決めた会社と、比較せずに作り始めた会社とでは、途中でつまずいたときの粘りが違います。
次の企画会議で一つだけ試すなら、これです。提案された新規事業について『同じことを既にやっている会社を引き取る場合、いくらまでなら出すか』を、その場で全員に書いてもらう。金額が書けなければ、その事業の価値をまだ誰も測れていない、ということです。
既存資産・市場性・体力・撤退基準の4観点から、次の一手が自社の地続きにあるかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 新規事業の種・診断をはじめる 無料で相談するSEED(BEYOND PLAYBOOK)は、新規事業をゼロから立ち上げるだけの立場ではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、作る場合と買う場合の比較 → 欲しいものの絞り込み → 残る人の確認 → 引き継ぎ条件の設計までを、貴社の状況に合わせて一緒に進めます。狙うのは、比較したうえで選んだと言える一手です。
まずは無料の新規事業の種・診断で、いまの取り組みが自社の地続きにあるかを確かめてみてください。結果を見ながら、作るか買うかを一緒に整理しましょう。
※データに関する記述は、2026年版中小企業白書がM&A(買収)の実施有無別に付加価値額増加率を比較し、買収実施企業22.8%、非実施企業18.5%としていることを参照しています。この差は両者の関連を示すものであり、買収が増加をもたらしたことを示すものではありません。M&A支援機関登録制度は中小企業庁が運用する制度で、登録された支援機関の一覧が公表されています。事業譲渡・株式譲渡の法務・税務・労務の取扱いは案件ごとに異なります。実行にあたっては弁護士・税理士・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。