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#新規事業#意思決定#財務・資金繰り
Management Column · 2026.06.29

『もう少し』で続けた新規事業が、
本業を傾けかけた話

新規事業の失敗率は約9割とも言われます。問題は失敗そのものより、やめられないこと。「あと少しで黒字になる」と続けるうちに、本業の体力まで吸われていく。撤退できない正体は、すでに注ぎ込んだお金と時間が惜しいというサンクコストです。これは想定事例ですが、多くの社長が身に覚えのある話だと思います。引き際は、熱くなる前の冷静なうちにしか決められません。

1.before ── 「あと少し」が口癖になっていく

地方の製造業A社(想定事例)が、自社技術を活かした自社ブランド製品の新規事業を立ち上げました。最初の半年は試作と展示会で手応えあり。ところが発売してみると注文は想定の3割。社長は「認知が足りないだけ」と広告を足し、「もう少し改良すれば」と仕様を直し続けました。毎回『あと少し』。気づけば本業の利益を一年半つぎ込み、運転資金まで細り始めていた。

A社が止まれなかった理由ははっきりしています。ここでやめたら、これまでの投資が全部ムダになる——この感覚です。行動経済学でいうサンクコスト効果。過去に使ったお金は戻らないのに、惜しさが判断をゆがめ「ここまで来たのだから」と傷を広げてしまう。やめる基準を持たないまま走ると、撤退は判断ではなく我慢比べになります。

2.turn ── 「冷静なうちに引いた線」が会社を救う

転機は、顧問の一言でした。「始める前に、どうなったらやめるかを決めていましたか」。A社は決めていなかった。そこで遅まきながら基準を引きます。「次の四半期で受注が損益分岐の半分に届かなければ撤退」。期限がくると数字は届かず、社長は決められた通り事業をたたみました。痛みは残りましたが、本業は無事。傷が浅いうちに止血できたのです。

大手の作法も同じ発想です。ある先進企業は新規事業に「四半期で利益5,000万円」といった具体的な数値基準を先に置き、届かなければ撤退かピボットを検討する。別の有名企業は、進出前に『ご臨終』の条件を明確にしてから始めるといいます。共通するのは、撤退基準は冷静な時にしか引けないということ。渦中で熱くなった頭は、サンクコストに引きずられ、必ず「もう少し」と言い出します。

撤退基準は、自動でやめる引き金ではない。冷静な時に置いた物差しだ。

3.学び ── 三段で「やめる線」を先に引く

BEYOND自身も複数の事業を立ち上げ、当たらなかったものは畳んできました。痛みなく畳めたのは、たいてい始める前に引き際を決めていたからです。SEEDが見る強みの棚卸し・需要検証・収益設計・撤退基準の観点で、次の三段を勧めます。

始める前に『やめる条件』を書く
立ち上げの企画書に、撤退の数値条件と期限をセットで書き込む。「◯か月で受注◯件に届かなければ撤退」のように、後から言い訳できない形で。始める判断と、やめる判断を同時に下す問い:いまの新規事業に、やめる条件は書いてあるか
サンクコストは判断から外す
判断するのは「これまでいくら使ったか」ではなく「ここから先、続ける価値があるか」。過去の投資は戻らない以上、意思決定の材料にしない。惜しさを物差しから追い出すのが、冷静さの正体。問い:続ける理由は『未来』か、それとも『過去の投資』か
期限を区切ってゲートで見る
四半期など期限を区切り、その都度「続行・修正・撤退」を機械的に判定する場を持つ。常時悩むのではなく、決めた日にだけ冷静に見る。感情ではなく、カレンダーに判断させる問い:次に続行可否を判定する日は、決まっているか

順番が肝です。①始める前にやめる条件を書き、②サンクコストを判断から外し、③期限を区切ってゲートで見る。撤退を『敗北』ではなく『設計の一部』にする。これでA社のように、本業まで傾ける事態は避けられます。

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4.SEED は、引き際まで含めて設計する

SEED(BEYOND PLAYBOOK)は、立派な事業計画書を作って終わりにはしません。自社の強みから種を選ぶ → 最小投資で需要を確かめる → 撤退基準を先に引いて小さく回すまで、貴社の現場で動く形に一緒に設計します。私たちは評論家ではなく、自分たちで複数の事業を立ち上げ、当たらなかったものは痛みが浅いうちに畳んできた実業集団。攻めだけでなく引き際の設計まで手を動かせるのが武器です。

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