地方の製造業A社(想定事例)が、自社技術を活かした自社ブランド製品の新規事業を立ち上げました。最初の半年は試作と展示会で手応えあり。ところが発売してみると注文は想定の3割。社長は「認知が足りないだけ」と広告を足し、「もう少し改良すれば」と仕様を直し続けました。毎回『あと少し』。気づけば本業の利益を一年半つぎ込み、運転資金まで細り始めていた。
A社が止まれなかった理由ははっきりしています。ここでやめたら、これまでの投資が全部ムダになる——この感覚です。行動経済学でいうサンクコスト効果。過去に使ったお金は戻らないのに、惜しさが判断をゆがめ「ここまで来たのだから」と傷を広げてしまう。やめる基準を持たないまま走ると、撤退は判断ではなく我慢比べになります。
転機は、顧問の一言でした。「始める前に、どうなったらやめるかを決めていましたか」。A社は決めていなかった。そこで遅まきながら基準を引きます。「次の四半期で受注が損益分岐の半分に届かなければ撤退」。期限がくると数字は届かず、社長は決められた通り事業をたたみました。痛みは残りましたが、本業は無事。傷が浅いうちに止血できたのです。
大手の作法も同じ発想です。ある先進企業は新規事業に「四半期で利益5,000万円」といった具体的な数値基準を先に置き、届かなければ撤退かピボットを検討する。別の有名企業は、進出前に『ご臨終』の条件を明確にしてから始めるといいます。共通するのは、撤退基準は冷静な時にしか引けないということ。渦中で熱くなった頭は、サンクコストに引きずられ、必ず「もう少し」と言い出します。
BEYOND自身も複数の事業を立ち上げ、当たらなかったものは畳んできました。痛みなく畳めたのは、たいてい始める前に引き際を決めていたからです。SEEDが見る強みの棚卸し・需要検証・収益設計・撤退基準の観点で、次の三段を勧めます。
順番が肝です。①始める前にやめる条件を書き、②サンクコストを判断から外し、③期限を区切ってゲートで見る。撤退を『敗北』ではなく『設計の一部』にする。これでA社のように、本業まで傾ける事態は避けられます。
強みの棚卸し・需要検証・収益設計・撤退基準の観点から、種の有望度と次の一手をレーダーで可視化します。登録不要・その場で結果。
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