この会社は、原価は把握していました。分からなかったのは、いくらで売れるかです。だから『まず一社、安くてもいいから』と決めました。判断としては自然です。
ところがここで起きたのは、定価を決めないまま最初の価格が世に出たということでした。以後、その価格が実質の定価になります。
二社目に本来の価格を出そうとしたとき、社内から声が上がりました。『一社目より高いと説明できない』。もっともな指摘です。結局、同じ価格で出しました。三社目も同じでした。
やり直したのは順番です。先に定価を決め、その上で『導入期間の特別価格』として期限と条件を明記しました。
定価は、原価と必要な工数から先に置きます。特別価格のほうには条件を付けました。『○年○月末まで』『先着3社』『事例として社名を公開させていただける場合』。
条件を付けると、値引きが対価のある取引になります。相手も納得し、こちらも惜しくない。そして契約書に『○か月後に定価へ移行します』と書きました。この一行の有無で、三年後がまったく変わります。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。新しい商売を立ち上げるたび、値付けでは迷ってきました。
実感として、新規事業の失敗で多いのは、売れないことではなく、安すぎて続かないことです。初年度は社長と数人で回るので黒字に見える。二年目に人を増やした瞬間、赤字になります。そして値上げしようとすると、既存客の全部が対象になる。
そして、価格は下から上げるより、上から下げるほうが圧倒的に楽です。上げるには説明が要りますが、下げるのに説明は要りません。だから最初は高めに置いて、必要なら期間を切って下げる。この順序を逆にできる場面は、ほとんどありません。
もう一つ。最初の一社の価格は、必ず外に漏れます。同じ業界の人は横でつながっていて、価格の話は特に速く伝わります。『御社だけ特別に』は成立しない前提で設計してください。だからこそ、条件と期限が要ります。
注意点を一つ。期限を書いていても、実際に上げるときには抵抗があります。そのとき効くのは『書いてありましたので』ではありません。この期間に何を改善したかの説明です。値上げの根拠は、時間の経過ではなく中身の向上にしかありません。
最初の一歩は、いま考えている新サービスの定価を、原価と必要な工数から先に出すことです。売れるかどうかは、その後で考えてください。
既存資産・市場性・体力・撤退基準の4観点から、次の一手が自社の地続きにあるかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
▶ 新規事業の種・診断をはじめる 無料で相談するSEED(BEYOND PLAYBOOK)は、新規事業のアイデアを出して終わりではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、定価の算出 → 値引きの対価設計 → 期限と移行条件の書面化 → 最初の一社の選び方までを、貴社の商売に合わせて一緒に進めます。狙うのは、二年目に続けられる価格です。
まずは無料の新規事業の種・診断で、いまの取り組みが自社の地続きにあるかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初の定価を一緒に置きましょう。
※本記事の会社の場面は、中小企業でよくある状況をもとに構成した想定事例であり、特定の企業を指すものではありません。価格の設定・表示・改定にあたっては、景品表示法および独占禁止法をはじめとする関係法令に留意し、既存の契約内容を確認してください。個別の取扱いは弁護士等の専門家にご確認ください。本文中の手順は一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。