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#新規事業#価格・値上げ#意思決定
Management Column · 2026.09.15

最初の一社に安く出したら、三年上げられなかった

ある製造業(想定事例)が新しいサービスを始めたとき、最初の一社には特別価格を出しました。実績が欲しかったからです。
その価格は、三年後もそのままでした。しかもその一社が同業に紹介するたびに、『あそこはこの値段でやってくれる』という情報が一緒に流れていきます。
安く出すこと自体は、間違いではありません。間違っていたのは、安い理由と、その期限を書かなかったことです。

1.定価を決める前に、売ってしまった

この会社は、原価は把握していました。分からなかったのは、いくらで売れるかです。だから『まず一社、安くてもいいから』と決めました。判断としては自然です。

ところがここで起きたのは、定価を決めないまま最初の価格が世に出たということでした。以後、その価格が実質の定価になります。

二社目に本来の価格を出そうとしたとき、社内から声が上がりました。『一社目より高いと説明できない』。もっともな指摘です。結局、同じ価格で出しました。三社目も同じでした

安く出すこと自体は間違いではない。安い理由と期限を書かなかったことが間違い

2.定価を先に置き、割引を期間で切った

やり直したのは順番です。先に定価を決め、その上で『導入期間の特別価格』として期限と条件を明記しました

定価は、原価と必要な工数から先に置きます。特別価格のほうには条件を付けました。『○年○月末まで』『先着3社』『事例として社名を公開させていただける場合』

条件を付けると、値引きが対価のある取引になります。相手も納得し、こちらも惜しくない。そして契約書に『○か月後に定価へ移行します』と書きました。この一行の有無で、三年後がまったく変わります。

3.最初の値付けの、四つの手順

定価を先に決める。売れるかどうかは別問題として
売れる価格を探すのではなく、この仕事を続けるために必要な価格を先に出します。原価に、必要な利益を乗せる。それだけです。その価格が高すぎて売れないなら、それは価格の問題ではなく中身の問題です。価格を下げて解決すると、問題が見えないまま事業が続きます。ポイント:定価は市場ではなく、自社の必要額から先に出す
値引きには、必ず対価を付ける
事例として公開する。感想を書いてもらう。同業を紹介してもらう。何かと引き換えにすれば、値引きは交換になります。相手も納得しやすく、こちらも惜しくない。後々まで効いてくるのは、無条件の値引きだけです。理由のない安さは、理由がないまま続きます。ポイント:無条件の値引きだけが、後を縛る
期限と移行条件を、契約書に書く
口頭の『そのうち上げます』は、必ず揉めます。開始時点の書面に、いつから定価かを書いてください。相手にとっても利点があります。いつから上がるかが分かっていれば、社内で予算を組めるからです。黙っていて突然上げるほうが、相手を困らせます。ポイント:値上げは、始める日に書いておく
最初の一社は、条件ではなく相手で選ぶ
安くすれば、誰でも受けてくれます。それでは学習になりません。選ぶべきは、その分野に厳しい目を持っている相手、改善の意見をくれる相手です。その人に安く出す。最初の一社から得るべきは売上ではなく、二社目以降に効く情報です。ポイント:最初の一社は、条件ではなく相手で選ぶ

4.やってみて分かること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。新しい商売を立ち上げるたび、値付けでは迷ってきました。

実感として、新規事業の失敗で多いのは、売れないことではなく、安すぎて続かないことです。初年度は社長と数人で回るので黒字に見える。二年目に人を増やした瞬間、赤字になります。そして値上げしようとすると、既存客の全部が対象になる。

そして、価格は下から上げるより、上から下げるほうが圧倒的に楽です。上げるには説明が要りますが、下げるのに説明は要りません。だから最初は高めに置いて、必要なら期間を切って下げる。この順序を逆にできる場面は、ほとんどありません。

もう一つ。最初の一社の価格は、必ず外に漏れます。同じ業界の人は横でつながっていて、価格の話は特に速く伝わります。『御社だけ特別に』は成立しない前提で設計してください。だからこそ、条件と期限が要ります。

注意点を一つ。期限を書いていても、実際に上げるときには抵抗があります。そのとき効くのは『書いてありましたので』ではありません。この期間に何を改善したかの説明です。値上げの根拠は、時間の経過ではなく中身の向上にしかありません。

最初の一歩は、いま考えている新サービスの定価を、原価と必要な工数から先に出すことです。売れるかどうかは、その後で考えてください。

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5.SEED は、値付けの設計から一緒に立つ

SEED(BEYOND PLAYBOOK)は、新規事業のアイデアを出して終わりではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、定価の算出 → 値引きの対価設計 → 期限と移行条件の書面化 → 最初の一社の選び方までを、貴社の商売に合わせて一緒に進めます。狙うのは、二年目に続けられる価格です。

まずは無料の新規事業の種・診断で、いまの取り組みが自社の地続きにあるかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初の定価を一緒に置きましょう。

※本記事の会社の場面は、中小企業でよくある状況をもとに構成した想定事例であり、特定の企業を指すものではありません。価格の設定・表示・改定にあたっては、景品表示法および独占禁止法をはじめとする関係法令に留意し、既存の契約内容を確認してください。個別の取扱いは弁護士等の専門家にご確認ください。本文中の手順は一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。