新規事業の担当を決めるとき、多くの会社が真っ先に考えるのは誰なら本業に穴を空けずに済むかです。合理的に見えます。既存事業は今日の飯の種で、新規はまだ何も生んでいないのだから、と。
ただ、この基準で選ばれた人は社内で最も引き合いの少ない人です。それは能力の問題とは限りませんが、少なくとも現場を動かす力と社内の信用が、相対的に薄い人である可能性は高い。そして新規事業に本当に必要なのは、まさにその二つです。
新規事業の初期は、決裁のない依頼の連続です。試作をちょっと手伝ってほしい、既存客に一度だけ話をさせてほしい、来月の現場を1日空けてほしい。どれも制度ではなく人間関係で動く頼み事です。社内の信用が薄い人が頼むと、全部後回しになります。
誤解のないように書くと、中小企業で新規事業を完全な専任で始めるのは、たいてい非現実的です。兼務そのものは正しい選択です。問題は、兼務の中身が決まっていないこと。
本業の納期と新規事業の締切がぶつかったとき、どちらを優先するのか。これを決めていない会社では、答えは自動的に本業になります。今日の売上があるほうが勝つのは当たり前だからです。その結果、新規事業は「時間が余ったらやる仕事」になり、余る時間は永遠に来ません。
白書が示す差は、投資額の差というより実行され続けたかどうかの差だと私たちは見ています。始めた会社は多い。続いた会社が少ないだけです。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。新しい事業を自分たちで立ち上げる側にいるので、はっきり言えることがあります。エースを外すのは、本当に痛い。本業の数字が落ちるのが目に見えるからです。
それでも出す価値があるのは、エースが動くと社内の空気が変わるからです。あの人が本気でやっているなら本物だ、と周りが判断する。協力が集まり、情報が集まり、失敗しても『やり方が悪かった』で済む。逆に、社内で軽く見られている人に任せた事業は、うまくいかなかった時に『やっぱり無理だった』と結論づけられます。同じ失敗でも、次につながるかどうかがまるで違う。
だから人選は、能力の問題であると同時にメッセージの問題です。誰を置くかで、社内はその事業の本気度を読み取ります。成長投資に取り組む会社と取り組まない会社の差が7ポイント開いているという事実は、裏返せば『続けられた会社』の希少性でもある。続けるための最初の一手が、人選です。
既存資産・市場性・体力・撤退基準の4観点から、次の一手が自社の地続きにあるかをレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
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※背景データは、生産能力の拡大や新事業への進出を目的とした成長投資に取り組んだ企業の付加価値額増加率が中央値22.0%、取り組んでいない企業が15.2%であること、設備稼働率が高い企業ほど付加価値額の増加率が大きい傾向がみられること=中小企業庁『2026年版 中小企業白書・小規模企業白書』(2026年4月公表)を参照しました。本文中の進め方は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。