従業員18名の設備メンテナンス会社。営業は社長と若手2名です。若手のひとりは、社内でいちばん資料が丁寧でした。図解も入り、体制図も価格表も整っている。それでも受注率は3人の中で最も低い。
失注の理由を聞くと、返ってくる答えはいつも似ていました。『内容は良かったんですが、今回は金額で』。社長は当初、価格設定の問題だと考えていました。
転機は、社長が若手の商談に同席したときです。初回訪問で相手が言ったのは『年に2回の点検をお願いしたい。他社さんにも見積りを出してもらっている』の一言。若手はその場で必要事項を確認し、翌週、完璧な提案書を持っていきました。他社も同じ内容の見積りを持ってきていました。
ここで起きていたことは単純です。『年2回の点検』は、相手が自分で考えた解決策でした。困りごとそのものではありません。
社長が同席した次の商談で、一つだけ質問を足しました。『いま、何かお困りのことがあって点検を増やそうとされているんですか』。すると相手の話が変わりました。前年に設備が止まって半日ライン停止した。その報告を本社に上げる立場になったので、再発したときに説明できる状態にしておきたい――。
本当の要件は点検の回数ではなく、止まったときに説明できる記録が残ることでした。これが分かると、提案の中身が変わります。点検回数は年2回のまま、代わりに異常値の記録と、止まった場合の初動手順書を付ける。金額はほぼ同じで、相手の困りごとには直接効く。
この時点で、他社と同じ表には並ばなくなります。他社は『年2回の点検』を見積り、こちらは『再発時に説明できる状態』を見積っているからです。比べる項目が違えば、価格だけの勝負にはなりません。
そしてもう一つ効くのが、相手の社内での立場です。担当者は本社に説明する必要があった。こちらの提案は、その説明をそのまま楽にします。相手の社内稟議を代わりに書いてあげているのと同じことになる。
ここが、ヒアリングが受注を決めるという言葉の実際の中身です。聞くのは情報収集のためではなく、要件を一緒に作るためです。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。売る側と買う側の両方を日常的にやっている立場から言えることがあります。買う側として印象に残るのは、提案書の厚さではありません。
覚えているのは、こちらがうまく言えていなかったことを、言葉にして返してくれた相手です。『つまり、御社が困っているのはここですよね』と整理された瞬間に、この人に頼もうと決まっている。提案書はその後の確認作業でしかありません。
逆に、こちらが言ったことをそのまま丁寧に見積もってくる会社は、良い会社だと思っても金額で比べる相手になります。悪気はまったくないのに、そうなる。言われたとおりに応えることが、価格競争への最短ルートだというのは、営業の現場では見落とされがちな事実です。
だから、提案書を作る時間を30分削ってでも、聞く時間を先に取る。資料は要件が正しければ薄くても通り、要件が違えばどれだけ厚くても通りません。
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▶ 売上診断をはじめる 無料で相談するSURGE(BEYOND PLAYBOOK)は、営業トークを教える立場ではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、失注案件の要件の振り返り → 聞くべき4枠の設計 → 確認1枚の型づくり → 提案の組み立てまでを、貴社の商材に合わせて一緒に整理します。狙うのは、価格以外で比べてもらえる状態です。
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※本文中の会社・人物・案件は、よくある状況をもとに構成した想定事例です。特定の企業を指すものではありません。手順は、BEYOND Holdings が複数の実業を運営する中で用いている一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。