廃業は、倒産のように知らせが来ません。気づいたときには、担当者の携帯が繋がらなくなっている。そして退出の中心は高齢の経営者です。60代以上が9割、80代以上が34.0%。長く付き合ってきた取引先ほど、静かに消えていく側にいます。
ところが多くの会社の営業目標は、前年の売上に上乗せする形で作られています。自然減の分が計算に入っていない。だから毎年、実感より目標が遠い。
ここで新規開拓を倍にしようとするのが、いちばん高くつく選択です。一度も取引したことがない相手に一から入るコストは、取引実績のある相手に戻るコストと比べものになりません。
取引が止まった先を一括りにすると、連絡の仕方が決められません。分けるのは三つです。
①自然に止まった先。案件が一区切りついて、そのまま次がなかった。理由らしい理由がない。いちばん数が多く、いちばん戻りやすい層です。
②他社に替わった先。比較されて負けた、あるいは担当が代わって関係が切れた。戻るには、こちら側に変わった事実が要ります。
③こちらの落ち度で切れた先。納期遅れ、品質の問題、対応のまずさ。数は少ないが、扱いを間違えると関係が完全に終わります。
連絡する順番は、この番号のとおりです。①から始める。理由は単純で、成功体験が必要だからです。③から始めると、担当者が二件目で折れます。
『その節はご迷惑をおかけしました。何が原因だったか、お聞かせいただけませんか』。
誠実に見えますが、これは相手に不快な記憶を思い出す作業を頼んでいるだけです。しかも相手は答えを用意していません。多くの場合、返ってくるのは『いえ、特に』という社交辞令で、会話はそこで終わります。
理由の聞き取りが要るのは、負けた直後です。半年、一年と経った相手に聞き直しても、記憶は薄れ、当時の担当者はもういないことすらある。離れた理由を掘る作業と、戻ってもらう作業は別物です。
代わりに伝えるのは一つだけ。こちらで変わったことです。設備が増えた、対応できる範囲が広がった、納期が短くなった、担当が代わった。事実を一つ、具体的に。謝罪も近況報告も要りません。
①一覧を作る。昨年取引があって今年ゼロの先を、請求データから抜き出します。会計ソフトか販売管理から出せるはずです。ここに30分以上かけません。
②三分類を付ける。営業担当の記憶で構いません。分からないものは①扱いにします。
③①の先から、週に5件だけ連絡する。一気にやらない理由は、変わった事実の伝え方を修正しながら進めるためです。5件やって反応がなければ、伝える事実のほうを変えます。
④反応の有無を一覧に書き戻す。返事がなかった先も、半年後にもう一度回ってくるようにしておきます。相手の事情は変わります。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。この一覧作りは、グループ各社で毎年やっています。
最初にやったとき、一覧に載った先の数に全員が驚きました。感覚では数件のつもりが、実際には二桁ありました。止まったことに誰も気づいていなかったのです。日々の業務は動いている取引で埋まっているので、止まった取引は視界から消えます。
もう一つ。③の落ち度で切れた先に、あえて連絡した年があります。戻った先はわずかでしたが、副産物がありました。当時の対応の何が決定的だったかが、社内の記録より具体的に分かった。戻ってもらえなくても、次の失注を減らす材料にはなります。ただしこれは、①と②を回し切ってからやることです。順番を守らないと、現場の心が先に折れます。
SURGEで伴走する場合、新規チャネルの設計から入ることはしません。まず請求データから、止まった先の一覧を出すところから始めます。ここで穴の大きさが分かると、新規に必要な件数の議論が現実的になります。
そのうえで、三分類の付け方、伝える変わった事実の選び方、週5件の回し方、半年後に再訪する仕組みまで。一度きりの掘り起こしではなく、毎年同じ時期に回る作業として定着させることを目指します。
まずは無料の売上診断で、いま売上のどこに取りこぼしが溜まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に連絡する5件を一緒に選びます。
※背景データは、東京商工リサーチが2026年1月9日に公表した2025年『休廃業・解散企業』動向調査において、2025年の休廃業・解散が6万7,210件で前年比7.2%増となり過去最多の更新が3年連続となったこと、休廃業企業の代表者年齢で60代以上が90.6%、80代以上が34.0%となったことを参照しました。同調査は市場からの退出動向を示すものであり、個別企業の取引継続状況を示すものではありません。本文中の手順は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。