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#価格・値上げ#売上アップ#差別化
Sales Column · 2026.08.05

原価に利益を乗せて値段を決める会社が、
値上げに失敗する理由

値段の決め方を聞くと、多くの会社がこう答えます。原価を積み上げて、利益を乗せる。真面目で、公平で、社内の誰にも説明できる方法です。そしてこの決め方をしている限り、値上げはたいてい通りません。日本銀行の短観2026年6月調査では、中小企業製造業の仕入価格判断DIがプラス76で前回から14ポイント上昇した一方、販売価格判断DIはプラス40で上昇は9ポイントにとどまりました。コストは上がったが、乗せきれていない。今回はこの構図の原因を、値決めの方法そのものに遡って考えます。

1.原価積み上げに空いている、三つの穴

一つ目。努力するほど、値段が下がる。原価に一定率を乗せる方式では、工程を改善して原価を10%下げた瞬間、正しい売価も下がります。効率化のごほうびが値下げというのは、仕組みとして倒錯しています。頑張った分は、本来なら利益として自社に残るはずのものです。

二つ目。相手には『そちらの都合』にしか聞こえない。「材料が上がったので上げさせてください」は、こちらの内部事情の説明です。相手にとっての判断材料が何もない。だから返ってくる答えは「うちも苦しい」になります。会話が、我慢比べ以外の形になりません。

三つ目。見えない費目ほど通らない。材料費の値上がりは請求書という証拠があります。ところが人件費や段取りの手間には、相手に見せられる紙がない。原価を根拠にする限り、証拠を出せる費目しか交渉できない。賃上げが続く局面で、この穴はそのまま利益の穴になります。

原価で話す限り、証拠を出せる費目しか値上げできない。

2.『価値から決める』とは、高く売ることではない

誤解されやすいところです。価値基準の値決めとは、強気の金額を提示することではありません。相手にとっての判断材料を、こちらが用意することです。

お客様が支払うかどうかを決めるとき、頭の中で比べているのは自社の原価ではありません。払わなかった場合に自分が負う損失と、他の選択肢を選んだ場合の総額です。止まると1日いくら損をするのか。内製したら人件費がいくらかかるのか。安い会社に頼んで不良が出たら、手戻りにいくらかかるのか。ここを言葉と数字にして渡せば、値段は比較可能になります。

短観の数字が示す仕入と販売の上昇幅の差は、交渉が下手だから生まれているのではありません。原価という、相手の意思決定に関係のない土俵で話しているからです。

3.明日から値決めを組み替える、四つの手順

自社が防いでいる損失を、金額で書き出す
納期を守ることで相手のラインが止まらない、不良率が低いので検品工数が要らない、緊急対応ができるので在庫を積まなくて済む。それぞれ相手側でいくらの話になるかを概算します。正確でなくて構いません。桁が合っていれば、会話の土俵が変わります。ポイント:自社の強みを、相手の損益計算書の言葉に翻訳する
比較対象を、こちらから提示する
何もしなければ、相手は一番安い同業と比べます。そうではなく、内製した場合・遠方の安い業者に出した場合・止まった場合という選択肢を並べて見せる。比べる相手を設定した側が、値段の物差しを握ります。ポイント:比較されるのを待たず、比較の枠をこちらで作る
全商品ではなく、まず一つの品目で切り替える
いきなり全体を組み替えると社内が混乱します。粗利が薄く、かつ自社の価値が説明しやすい品目を一つ選んで、そこだけ価値基準で値付けし直す。通った理由と通らなかった理由が、次の品目の材料になります。ポイント:最初の一品目は、説明しやすさで選ぶ
原価は捨てず、『下限』として持ち続ける
価値から決めるといっても、原価が不要になるわけではありません。原価は売価の根拠ではなく、これ以下では受けないという床として使います。床を知らずに価値だけで語ると、通った瞬間に赤字ということが起こります。ポイント:原価は売価の出発点ではなく、撤退ラインとして持つ

4.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を回している当事者です。自分たちで値決めをしてきて痛感するのは、原価積み上げをやめられない本当の理由は、それが一番『説明が楽』だからということ。社内にも、お客様にも、根拠を数字で示せる。価値から決めると、その根拠を自分で作らなければなりません。面倒なのです。

けれど、その面倒を引き受けた会社だけが値段を動かせます。原価は誰でも計算できますが、自社が防いでいる損失を語れるのは自社だけだからです。ここは代わりがききません。

最後に一つ。値決めを変えるとき、先に社内を変えてください。現場が「うちは高い」と思っている状態で価値の話をしても、見積の場でその空気は必ず伝わります。防いでいる損失を数字にする作業は、値上げの準備であると同時に、自社が何で選ばれているかを社員が知る作業でもあります。順番としては、こちらが先です。

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5.SURGE は、値決めの土俵から一緒に組み替える

SURGE(BEYOND PLAYBOOK)は、値上げの文面を用意して終わりにはしません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、防いでいる損失の洗い出し → 相手の言葉への翻訳 → 比較枠の設計 → 一品目からの切り替えと検証までを、貴社の商売に合わせて一緒に進めます。値段は、交渉術ではなく設計で動きます。

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※背景データは、中小企業製造業の仕入価格判断DIがプラス76で前回比14ポイント上昇・販売価格判断DIがプラス40で同9ポイント上昇=日本銀行『全国企業短期経済観測調査(短観)2026年6月調査』(2026年7月1日公表)を参照しました。本文中の値決めの進め方は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。