こちらから見える納品直後は、作業が終わって引き渡した時点です。相手から見ると違います。そこからが評価の始まりです。
相手の社内では、こんなことが起きています。現場が使い始めて不具合が出るかを見ている。導入を決めた担当者が、上司に結果を報告する材料を集めている。費用が妥当だったかを経理が確かめている。
この段階で追加提案が来ると、相手は二つの判断を同時に抱えることになります。前の件が良かったかどうかと、次を受けるかどうか。前者が決まっていないので、後者も決まりません。
そして最悪なのは、追加提案そのものが評価に影響することです。『もう次を売りに来た』と受け取られると、前の件への評価まで下がります。
では何日待つのか。日数で決めると外します。業種と商材で評価が確定する時期がまったく違うからです。
決めるのは条件です。何が起きたら、評価が確定したと見なすか。実務では次のどれかになります。
①一度目の請求が通った。支払いが問題なく行われたということは、社内の承認プロセスを通過したということです。いちばん確実な合図です。
②相手から連絡が来た。質問でも軽い相談でも構いません。向こうから接触があることは、関係が続く前提が成立している証拠です。
③一周した。月次の業務なら一か月、季節商材なら一シーズン。その商材が一回りして問題が出なかったことが確認できた時点。
自社の商材がどれに当たるかを決め、その条件を満たすまでは追加提案を出さないと社内で決めます。
何もしないわけではありません。この期間は、提案の材料を集める期間です。
①使われ方を見に行く。提案ではなく確認として訪問します。『問題なく動いていますか』だけを聞く。ここで出てくる不具合や使いにくさが、次の提案の中身になります。
②誰が使っているかを確かめる。導入を決めた人と、実際に使う人は違うことがほとんどです。使う人の不満は、決めた人に届いていません。
③成果の数字を相手に渡す。導入前と後で何が変わったか。相手の社内報告の材料になります。これを渡した会社は、次の提案を聞いてもらえます。報告を助けた相手だからです。
この三つをやっておくと、条件が満たされた時点で提案の中身がすでに手元にあります。待つ期間は空白ではありません。
条件を満たす前に出していい場合もあります。二つに限ります。
①相手から求められたとき。向こうが次の相談をしてきたなら、評価は済んでいます。
②期限がある制度や価格の話。補助金の締切や、原材料の価格改定。待つと相手が損をする情報は、提案ではなく連絡として出します。この場合も、売る形にしないのが要点です。
逆に、こちらの期末や目標が理由の場合は出しません。相手には関係のない事情で、しかもそれは伝わります。
この考え方は、営業の個人判断に任せると崩れます。月末に数字が足りない人は、必ず前倒しします。
①案件管理に、追加提案の解禁条件を書く欄を作る。『初回請求の入金確認後』など。満たしているかどうかが見える状態にします。
②解禁前の案件を、見込みに入れない。入れると前倒しの圧力が生まれます。
③確認訪問の記録を残す。訪問したかどうかではなく、何が出てきたかを一行。これが提案の材料になります。
BEYONDはコンサルティング会社ではなく、自分たちで複数の事業会社を経営している集まりです。この線引きは、グループ内で揃えました。
変えた直後に起きたのは、提案件数の減少でした。当然です。出せる時期が後ろにずれたからです。
ところが三か月後、提案あたりの成約率が上がりました。保留になる案件が減ったからです。それまでは、出した提案の多くが『検討します』のまま消えていました。消えていたのは中身が悪かったからではなく、時期が早かったからでした。
もう一つ。③の成果の数字を渡す作業が、いちばん効きました。相手の担当者が社内で説明に使う。その説明が通ると、担当者自身の立場が良くなります。次の提案は、その人から聞かれる形で始まります。
売り込む回数を減らして、聞かれる回数を増やす。時期の設計は、結局そこに行き着きました。
SURGEで伴走する場合、提案の中身づくりから入りません。自社の商材で、評価が確定したと言える条件を一つ決めるところから始めます。初回請求の入金、相手からの連絡、一周の通過。どれかに決まれば、運用はすぐ始められます。
そのうえで、案件管理への解禁条件の欄、確認訪問の記録、成果の数字を渡す形まで。解禁前の案件を見込みに入れないという縛りも同時に置きます。
まずは無料の売上診断で、いま売上のどこで案件が止まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に条件を決める一商材を一緒に選びます。
※本記事の手順および日数は、中小企業の現場でよくある状況をもとにした一般的な整理であり、特定の企業の実例ではありません。本文中の数値はすべて説明のための仮設例です。業種や商材によって評価が確定する時期は大きく異なるため、自社での適用にあたっては個別にご判断ください。