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#意思決定#数字・見える化#業務効率化
Management Column · 2026.07.29

任せられないのではない。
渡す基準が、まだ言葉になっていない

「任せられる人が育ったら、権限を渡す」——多くの社長がそう言います。しかしこの順番では、いつまでも渡せません。判断させたことがない人は、判断が上手くならないからです。2026年上半期の企業倒産は5,335件(前年同期比6.6%増)、うち人手不足倒産は227件で過去最多を更新しました(帝国データバンク)。人が採れない時代に、いる人が判断できない会社は二重に詰まる。権限移譲で渡すべきものは仕事でも役職でもなく、判断の基準です。

1.常識を疑う ── 「育ってから任せる」は永遠に来ない

権限移譲が進まない会社に共通するのは、能力不足ではありません。渡す側が、自分の判断基準を言葉にできていないことです。社長は長年の経験で「この案件は受ける」「この客は断る」を一瞬で決めている。だがその根拠を聞かれると、出てくるのは「なんとなく筋が悪い」「昔こういう客で痛い目に遭った」という感覚の言葉になる。

基準が言葉になっていなければ、部下は当てずっぽうで決めるしかない。当てずっぽうで決めれば外れる。外れれば社長は「やっぱりまだ早い」と権限を引き戻す。こうして『任せられない』が毎年更新されていく。育っていないから渡せないのではなく、渡していないから育っていない。順番が逆なのです。

2.本質を外さない ── 丸投げでも全件承認でもない、第三の道

ここで多くの会社が両極端に振れます。片方は「もう全部任せた」の丸投げ。もう片方は「念のため全件見せて」の全件承認。前者は事故を生み、後者は社長が承認ボトルネックになって会社全体が止まる。

実務で効くのは第三の道、『範囲を数字で切って渡す』です。すべてを任せるのでも、すべてを握るのでもない。金額・利益率・納期という測れる軸で線を引き、線の内側は本人が決めてよい、外側だけ相談に上げる。これなら渡す側は事故の上限をコントロールでき、渡される側は「自分で決めた」経験を積める。判断力は座学では育たず、決めた回数でしか育ちません。

任せるのは仕事ではない。線の位置を、数字で渡すのだ。

3.自社ならこう動かす ── 判断基準を3行だけ書き出す

BEYONDは9社を束ねていますが、私が全社の全案件を見ることは物理的に不可能です。それでも現場が止まらないのは、各社に「ここまでは自分で決めてよい」の線が数字で引いてあるから。立派な職務権限規程はいりません。まず次の3行を紙に書くところから始めてください。

金額の線 ── いくらまでは相談不要か
受注・発注・支出のそれぞれに上限額を置く。決め方は簡単で、『万一その金額を丸ごと損しても、会社が揺らがない額』を上限にする。最初は低めでいい。事故が起きなければ半年ごとに引き上げていく。金額は最も客観的で、最も揉めない軸です。問い:課長が自分の判断で発注してよい上限額を、即答できるか
利益率の線 ── どこから下は相談か
金額だけでは、大きくて薄い仕事が素通りする。粗利率が何%を下回る見積りは相談に上げる、と決めておく。これは値下げ要請の防波堤にもなる。担当者が「うちは◯%を切ると持ち帰りなんです」と言えるだけで、無理な値引きの半分は止まります。問い:自社の『これ以下では受けない』粗利率を、社内の誰が言えるか
例外の線 ── 金額に関係なく必ず上げる案件
新規の取引先、与信に不安がある相手、前例のない契約条件、既存客の値下げ交渉。この4つだけは金額の大小に関係なく必ず相談、と決める。社長が本当に見るべきは金額の大きい案件ではなく、前例のない案件です。ここを明示すると、社長の机から通常業務の書類が消えます。問い:先月あなたが承認した書類のうち、本当にあなたでなければ判断できなかったものは何件か

この3行を書いた瞬間、権限移譲は「気持ちの問題」から運用の問題に変わります。あとは月に一度、線の内側で起きた判断を振り返るだけ。外れた判断が続く軸は線を下げ、外れが出ない軸は上げていく。基準は一度作って終わりではなく、精度を上げていく生き物です。

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4.LENS は、社長の頭の中を判断ルールに翻訳する

LENS(BEYOND PLAYBOOK)がやるのは、権限規程の作成代行ではありません。社長が過去に下した判断を並べ、そこに通っている基準を数字の線として取り出すことです。「なんとなく筋が悪い」の中身を、金額・粗利率・取引条件という測れる形に翻訳する。私たちはコンサルタントではなく、人手不足と価格転嫁の圧力を直接受けながら複数の実業を回している当事者です。だから「その線では現場が回らない」も「その線は緩すぎる」も、実務の感覚で言えます。

まずは無料の意思決定スピード診断で、判断がどこで詰まっているかを掴むところから。結果を見ながら、あなたの会社が最初に引くべき一本の線を一緒に決めましょう。

※背景データは、帝国データバンク『全国企業倒産集計 2026年上半期報』(2026年7月8日発表/倒産5,335件・前年同期比6.6%増、人手不足倒産227件で過去最多、物価高倒産556件)を参照しました。本文中の手順は、よくある状況をもとにした一般的な整理です。