うちは納期が速い、品質が高い、対応が丁寧。どれも事実かもしれません。
聞いた側がまず考えるのは、それは普通なのか、特別なのかです。判断するには、業界の標準を知っている必要があります。
初めてその業界に発注する人は、標準を知りません。だから速いと言われても、どれくらい速いのか分からない。
分からないまま相見積に入ると、唯一わかる数字が残ります。金額です。比較の軸を渡さなかった結果として、値段で比べられる。
これは客が安さだけを求めているのではありません。他に比べる材料がないからです。
業界の説明を省く理由として、退屈だから、という言い方がされます。これは混同です。
退屈なのは、創業からの沿革と、社長の経歴と、設備の一覧です。これは読む側の判断に使えません。
業界の説明は逆です。どういう工程を誰が担っていて、どこで値段が決まり、何が納期を規定しているか。これは発注の判断にそのまま使われます。
実際に反応が出るのは、業界の説明のほうでした。そういう仕組みだったのか、と言われる。言われた相手は、その後の説明を自分で整理できるようになります。
業界を説明すると、つい踏み込みたくなるものが二つあります。
一つめ、同業の悪口。安い会社がどう手を抜いているか。これを書くと、業界全体への信用が下がります。疑われるのは名指しされた相手ではなく、業界そのものです。結果として、発注そのものが止まります。
二つめ、内情の暴露。実はこの工程は要らない、この慣習は意味がない。言いたくなりますが、客にとっては何を信じればいいか分からなくなる情報です。
書くのは構造だけにします。良い悪いを書かない。構造を示せば、客は自分で判断します。判断を代わりにやってあげる必要はありません。
もう一つ注意があります。同業他社の価格や取引条件に触れる書き方は、独占禁止法上の定めに関わる領域です。書くのは自社の要因だけにして、資料として整えるときは確認を取ります。
作った一枚は、サイトに置くだけでは効きません。使う場面を決めます。
一つめ、初回の面談の冒頭。自社の説明の前に、これを五分で話す。相手が業界に詳しければ飛ばせばいい。詳しくなければ、ここで信用が動きます。
二つめ、見積に添える。金額の紙だけを送ると、金額だけを見られます。値段が動く要因の一枚が付いていると、相手は自分の案件の条件を考え始めます。
三つめ、相手の社内に回る想定で作る。発注の判断が一人で決まらない場合、この一枚が相手の社内を回ります。自社の売り込みが薄いほうが、回りやすい。
更新は年に一度でいい。構造はそう頻繁に変わりません。変わるのは値段の要因なので、そこだけ見直す。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。業種の違う会社が社内にあるので、お互いの業界を説明し合う場面が日常的にあります。
そこで気づいたのは、同じ業界にいる人ほど、業界の説明ができないことでした。当たり前すぎて、何を知らないのかが分からない。
効いたやり方は一つです。業界外の人に説明して、質問された箇所だけを書く。自分で構成しようとすると、必ず自社の話から始まります。
出てきた質問は、意外なものでした。なぜ見積に時間がかかるのか、なぜ同じものの値段が会社によって違うのか、なぜ急ぎは割高なのか。どれも業界の中では説明不要とされていることです。
失敗もあります。最初に作った一枚は、工程の図が細かすぎて誰も読みませんでした。図をやめて、三つの問いに文章で答える形にしたら読まれるようになりました。
いま値段で比べられていると感じているなら、最初に一つだけやってください。業界外の知り合いに、自社の商売を五分で説明して、出た質問をそのまま書き留める。その質問が、一枚の見出しになります。
MAGNET(BEYOND PLAYBOOK)は、きれいな会社案内を外から作って渡すのではありません。BEYOND Holdings 自身が業種をまたいで互いの業界を説明し合う当事者として、業界外からの質問の採取 → 商流・値段の要因・納期の構造の整理 → 自社の一行の接続 → 使う場面の設定までを、貴社の商売の形に合わせて一緒に整理します。
まずは無料の差別化診断で、いま何で選ばれていないかを確かめてみてください。結果を見ながら、どの問いから書くかを一緒に決めましょう。
※本記事に記載の金額、割合、日数および件数はすべて説明のための仮の例です。特定の企業や業界の実数ではありません。業界の商流や価格の決まり方は業種・地域・取引の形態によって大きく異なり、本文の整理は自社の説明資料を作る際の考え方として示したものです。同業他社の価格や取引条件に関する情報の取り扱いには独占禁止法上の定めがあり、競合と価格情報を共有する形にならないよう注意が必要です。資料として整える際は顧問弁護士にご確認ください。