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#採用#定着・離職#人材育成
Management Column · 2026.10.29

外から課長を入れる前に、
誰の役割が変わるかを書いた(想定事例)

現場をまとめる人が足りず、外から課長を採りました。経験は十分で、面接の評価も高い。
入って一か月後、現場からの報告が止まりました。
止まった理由は、その人の能力ではありませんでした。以下は想定事例です。

1.【before】一度目は、入った翌月に報告が止まった

従業員36名の設備工事業。現場が三つに増え、社長が全部を見るのが限界になっていました。

外から採った課長は、同業で十年の経験があり、同じ種類の工事を仕切っていた人でした。

入社の挨拶は朝礼でしました。現場をまとめてもらいます、と社長が紹介した。それだけでした。

一か月後、現場からの報告が課長を飛ばして社長に来るようになりました。そして課長本人からも、判断を求める相談が増えました。

両方から来ている。誰が決めるのかが、どこにも書かれていなかった。

2.止まった理由は、能力ではなかった

社長が個別に聞いて回って分かったのは、二つのことでした。

一つめ、既存の職長が自分の権限が減ったと思っていた。実際には減らしていません。ただ課長が入れば減るはずだ、と本人たちが考えていました。

二つめ、減るかどうかが分からないので、確かめずに従来どおり社長に上げていた。これは合理的な行動です。

権限を減らしたわけではない。減ったかどうか分からない状態が、全員を元の経路に戻した。

課長の側も困っていました。自分がどこまで決めていいのか、聞かれていない。

つまり全員が、同じ一点で止まっていました。誰の決裁範囲がどう変わったのか。

この課長は半年で退職しました。決める場所がないまま、仕事がなかったという理由でした。

3.【turn】二度目は、入る三週間前に紙を配った

一年後、もう一度外から採ることになりました。社長が今度やったのは、入社の前に紙を配ることでした。

配った相手は、課長の下に入る六人と、関係する部署の三人。合計九人に、入社の三週間前です。

紙はA4一枚でした。内容は、誰の役割がどう変わるかだけ。新しく入る人の経歴は書いていません。

4.紙に書いた、四つのこと

①誰の決裁範囲が、どう変わるかを名前で書く
部署名ではなく名前で書きます。『山田さんの材料発注の決裁は、これまでどおり本人。金額が五十万円を超える分は新任の課長に相談』のような形。変わる人だけ書くと、書かれていない人が不安になります。関係する全員について一行ずつ書く。九人なら九行です。書くのに一時間かかりません。ポイント:部署ではなく名前で、一人一行書く
②変わらない人には、変わらないと書く
これが一度目に抜けていた点でした。何も変わらないことは、言われないと伝わりません。『職長三名の現場での判断は、これまでと変わりません』と明記する。変わらないと書いてあれば、確かめるために社長に上げる必要がなくなります。報告の経路が元に戻る原因は、ここにありました。ポイント:変わらないことは、書かないと伝わらない
③新しい人に、最初の三か月で任せないことを書く
全部を任せると宣言すると、既存の社員は自分の仕事が奪われると読みます。『人の評価と、取引先との価格の話は、三か月は社長が持ちます』と範囲を切る。切った範囲は、新しい人にも先に伝えます。本人にとっても、できないことが明示されているほうが動きやすい。三か月後に見直すと書き添えます。ポイント:任せない範囲を切り、新任にも先に伝える
④困ったときに言う相手を、名前で書く
新しい上司に言いにくいことが必ず出ます。その場合に誰に言えばいいかを、課長以外の名前で一人決めて書く。社長でも、別の部署の長でもいい。経路があると、不満が溜まる前に出てきます。経路がないと、辞めると言われた日に初めて知ることになります。言ってきた内容を課長に伝えるかどうかも、先に決めておきます。ポイント:新任以外の相談先を、名前で一人置く

5.入る人に、先に伝えたこと

紙は既存の社員だけでなく、入る本人にも同じものを渡しました。

さらに本人には、二つを口で伝えました。

一つめ、既存のやり方を三か月は変えないでほしい。経験があるので、改善点はすぐ見えます。ただし最初に変えると、変えられた側は否定されたと受け取ります。

二つめ、三か月後に変えたいことを三つ挙げてほしい。見たものを溜めておいてもらう形にする。

この二つを伝えると、本人が我慢ではなく観察の期間として受け取ります。何もしないでくれ、とだけ言うと手持ちぶさたになります。

なお、職務内容や決裁の範囲、処遇を変更する場合には就業規則および労働契約にもとづく定めがあります。紙に書く前に、変更が可能な範囲を確認しておく必要があります。

6.【after】三か月後に出てきた三つ

二度目の課長は、三か月後に変えたいことを三つ持ってきました。

社長が驚いたのは、三つのうち二つが社長自身の仕事だったことでした。見積の承認待ちと、現場間の人の調整。

外から来た人には、内部の人が当たり前だと思っている滞りが見えます。三か月黙って見てもらったぶん、具体的でした。

報告の経路も、一度目のようには戻りませんでした。紙に書いてあるので、確かめる必要がない。

一年後、この課長は在籍しています。既存の職長も六人全員が残りました。

7.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。外から人を入れる場面が何度もありました。

失敗した側に共通していたのは、入る人の紹介に力を入れて、既存の社員の変化を説明していなかったことでした。経歴を立派に紹介すると、むしろ既存の社員は身構えます。

効いたのは、紙を一枚配ることでした。内容は入る人の話ではなく、読む人自身の役割の話にする。読む側が知りたいのは、自分がどうなるかです。

もう一つ。変わらないと書く行が、いちばん効きました。変わる人の説明より、変わらない人への一行のほうが、現場を落ち着かせました。

やって失敗したのは、紙を入社当日に配ったことでした。当日だと、本人の目の前で読むことになります。三週間前に配ると、疑問が出てから入社日が来ます。

いま外から管理職を入れる予定があるなら、最初に一つだけ書いてください。関係する社員について、決裁範囲が変わるか変わらないかを一人一行。変わらない人の行を省かないことです。

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8.PACK は、受け入れ側の設計から一緒に立つ

PACK(BEYOND PLAYBOOK)は、採用の手法を外から持ち込むのではありません。BEYOND Holdings 自身が外から人を迎えてきた当事者として、決裁範囲の棚卸し → 一人一行の紙づくり → 新任に任せない範囲の設定 → 相談先の指名までを、貴社の組織の形に合わせて一緒に整理します。

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※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の人数・期間・件数はすべて説明のための仮の数値です。従業員の職務内容、決裁の範囲、役職や処遇を変更する場合には、就業規則および労働契約にもとづく定めがあり、変更が可能な範囲、手続、本人への説明について法令上の取扱いがあります。採用時の労働条件の明示にも定めがあります。個別の対応については社会保険労務士および顧問弁護士に必ずご確認ください。

記事はここまで

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