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#経営理念#意思決定#人材育成
Management Column · 2026.10.31

引退68.5歳、新社長52.8歳
── 古参が従わない理由

帝国データバンクが2026年2月に発表した分析で、社長交代率は3.84%。4年ぶりに上昇しました。
交代前の社長は平均68.5歳、交代後の新社長は52.8歳。差は約16歳です。
この16歳が、社内に構造として残ります。

1.十六歳の差が、社内に残る

交代の平均像を見ると、引退する側が68.5歳、受ける側が52.8歳です。

このとき社内にいる古参社員は、たいてい先代と同世代か、その少し下です。先代と一緒に会社を作ってきた人たちです。

つまり多くの会社で、古参社員は新社長より年上になります。これは例外ではなく、平均的な姿です。

年上の社員が年下の社長の指示に従わない、という話として語られがちですが、年齢そのものが原因ではありません。

原因は別のところにあります。その業務を誰がいちばん長くやってきたかです。

2.権限を渡しても、従わない理由

代表が交代すれば、権限は形式として移ります。登記も変わり、決裁の名義も変わります。

ところが現場の判断は、その判断を何年やってきたかで動いています。

二十年その仕事をしてきた職長から見ると、新社長の判断は根拠が見えません。間違っていると思うから従わないのではなく、理由が分からないから確かめたい。

確かめようとすると、新社長を飛ばして先代に聞きます。先代が残っていれば、答えてしまいます。

これで経路が二本になります。経路が二本ある状態が『従わない』と呼ばれている。

だから打ち手は、権限を強く宣言することではありません。渡す順番を区切ることです。

3.決裁を渡す順番を、業務で区切る

①渡す決裁を、金額ではなく業務で切る
金額で切ると、全業務が同時に動きます。業務で切ると、一つずつ渡せます。材料の発注、人の配置、客への納期回答、値段の決定。この単位で、いつ誰に渡すかを書く。一度に全部渡すから、古参の側も何が変わったか分からなくなります。一つ渡して三か月置く。それから次を渡します。ポイント:業務単位で一つずつ、三か月置いて渡す
②古参がいちばん強い業務は、最後に回す
新社長は自分の弱い領域から手を付けたくなりますが、逆です。古参の専門領域に最初に手を入れると、全部が止まります。先に渡すのは、古参があまり関わっていない業務。新しい取引先、新しい商品、数字の管理。そこで実績が見えてから、専門領域に入る。順番を変えるだけで、同じことが通ります。ポイント:古参の専門領域は、実績が見えてから
③渡した業務を、先代と古参の両方に名指しで伝える
新社長が自分で宣言しても、経路は変わりません。先代が『この業務はもう自分に聞くな』と言う必要があります。そして古参にも、名前で伝える。『材料の発注は、今月から社長が決めます。私には聞かないでください』。先代が言うかどうかで、この一行の効き方が変わります。新社長から頼むのが難しければ、ここは外の人が間に入る場面です。ポイント:経路を閉じるのは、先代の口からでないと効かない
④渡していない業務は、古参が決めると明言する
ここが抜けると、古参は全部を取られると読みます。渡していない業務については、これまで通りあなたが決めると書く。書いてあれば、確かめる必要がありません。全部をいつか取る前提だと伝わると、協力は得られません。三年かけて渡す計画なら、その期間も伝える。期間が見えると、引き継ぎに協力する側に回ります。ポイント:渡さない範囲を書くと、協力する側に回る

4.『従わない』の中身を、三つに分ける

同じ言葉で語られますが、中身は三つに分かれます。打ち手が違います。

一つめ、判断の根拠が見えない。これがいちばん多い。渡す順番と、判断の理由を言葉にすることで解けます。

二つめ、自分の立場が下がると感じている。役割や処遇の話です。渡す計画と同時に、本人の役割をどう位置づけるかを決める必要があります。処遇に影響が及ぶ場合には定めがあるので、確認が要ります。

三つめ、先代への忠誠。これは時間がかかります。先代自身が経路を閉じない限り、動きません。

社長が『従わない』と言うとき、三つのどれなのかを分けずに語っていることが多い。分けると、一つめは数か月で解けます。

5.先代が残っている場合の難しさ

交代の多くは、先代が会社に残った状態で起きます。顧問、会長、相談役。

このとき先代は悪意なく経路を開き続けます。聞かれたら答えるのが親切だと思っているからです。

必要なのは、先代と新社長が二人で決める一行です。渡した業務について相談が来たら、社長に聞いてと返す。

この返し方を、その場で考えると答えてしまいます。言い方まで先に決めておくほうが確実です。

そして先代の役割そのものの整理は、別の議題として立てます。混ぜると、どちらも決まりません。

6.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。代表が交代した会社を複数見てきました。

共通していたのは、交代の日に全部の決裁が名義として移ることでした。登記は一日で変わります。

ところが現場の経路は、一日では変わりません。名義と経路の間に、半年から二年の差があります。

うまくいった会社に共通していたのは、渡す順番を紙に書いていたことでした。どの業務を、いつ渡すか。三年分の計画になっていました。

失敗した会社では、新社長が最初に古参の専門領域に手を入れていました。正しい指摘だったのですが、全部が止まりました。

いちばん効いたのは、先代が自分の口で経路を閉じたことでした。新社長が百回言っても、先代の一回に及びません。

いま交代の前後にあるなら、最初に一つだけ書いてください。渡す業務を四つに分けて、渡す順番と時期を並べる。古参が強い業務を最後に置くことです。

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7.NORTH は、渡す順番の設計から一緒に立つ

NORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、承継の手順書を外から渡すのではありません。BEYOND Holdings 自身が代表交代を複数見てきた当事者として、業務単位での切り分け → 渡す順番と時期の計画 → 先代が経路を閉じる言い方 → 渡さない範囲の明記までを、貴社の組織の形に合わせて一緒に整理します。

まずは無料の経営理念・浸透度診断で、いま言葉がどこまで現場に届いているかを確かめてみてください。結果を見ながら、どの業務から渡すかを一緒に決めましょう。

※統計の記述は、帝国データバンクが2026年2月16日に発表した社長交代および社長の年齢に関する分析について、社長交代率3.84%(前年3.75%から0.09ポイント上昇し2021年以来4年ぶりの増加、ただし2009年の4.34%より低い水準)、交代前の社長の平均年齢68.5歳、交代後の新社長の平均年齢52.8歳として複数の媒体が一致して伝える数値を参照しています。同分析は企業概要ファイル(約150万社収録)をもとにしており、別の調査会社の集計では母集団が異なるため平均年齢の水準も異なります。本稿執筆時点で発表資料の原文は参照できていないため、原文での確認を推奨します。本記事に記載の人数・年数・金額はすべて説明のための仮の例です。決裁権限や職務内容の変更が従業員の処遇に影響する場合には就業規則および労働契約にもとづく定めがあり、役員の選任および登記については会社法上の手続があります。個別の対応については社会保険労務士・顧問弁護士および司法書士にご確認ください。

記事はここまで

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