従業員34名、受注生産で金属部品を加工している会社です。二年前に主要工程の手順書を整えました。
作りはよかった。写真があり、注意点も書いてある。新しく入った人も、最初の一週間はそれで動けます。
ところが二週目から質問が始まります。『この図面のときはどうするんですか』。聞かれた社長が答え、その場は流れる。これが二年続いていました。
社長は手順書の精度が足りないと考えて、追記を繰り返していました。ページは増え、読まれなくなりました。
転機は、工場長の一言でした。『そもそも、手順書のとおりに流れる案件が半分もないです』。
客先ごとの指定、図面の特殊な公差、急ぎの差し込み、材料の在庫切れによる代替。どれも例外ですが、どれも毎月起きています。
この状態だと、手順書をどれだけ良くしても質問は減りません。質問は手順書の外側から来ているからです。
やったことは単純でした。例外が起きたら、ホワイトボードに名前を書いて線を一本足す。これだけを一か月続けました。
名前は社長が考えませんでした。現場が普段呼んでいる言い方をそのまま採用しました。『◯◯社の梱包』『手直しの差し込み』『材料替え』。
一か月後、ボードには十一種類が並んでいました。そして件数には、はっきりした偏りがありました。
この作業をやると、手順書の項目は増えます。減らすつもりで始めた人は、ここで戸惑います。
ただ、増えたのはもともと毎月やっていた仕事です。書いていなかっただけで、作業量は増えていません。
減るのは別のものです。判断の回数。手順書に載った時点で、その案件は考えずに流れます。標準化の効き目は、手順の数ではなく、判断を挟まずに進む件数で測るのが正しい見方でした。
三か月後、十一種類のうち四種類が標準に昇格し、五種類が『誰に聞く』の一覧に入り、二種類は数えてみると一度も起きませんでした。
社長への質問は、体感で半分以下になりました。減ったのは標準に昇格した四種類の分です。残りは聞きに来ますが、聞くこと自体が決まっているので迷いがない。
副産物もありました。見積の精度が上がった。例外に名前と件数があるので、どの客先の仕事に手間がかかっているかが数で言えるようになりました。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。手順書やマニュアルは何度も作ってきました。
わかったのは、標準化がうまくいかない会社は、例外を見ないようにしているということです。例外は失敗の記録に見えるので、数えると現場が責められている気になる。だから誰も数えません。
だから最初に言う一言が要ります。『これは減らすために数えるのではなく、認めるために数える』。実際に、数えた例外の多くは認めて標準に入れることになります。これを先に言うかどうかで、集まる線の数が変わりました。
もう一つ。例外の件数は、値段の話にもつながります。特定の客先の例外が月に五回起きているなら、その手間は見積に乗っているかを確かめる根拠になる。業務の整理として始めた作業が、価格の交渉材料になるのは、やってみて分かったことでした。
GEAR(BEYOND PLAYBOOK)は、仕組みを外から当てはめるのではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、例外の呼び名の採取 → 一か月の計数 → 頻度での線引き → 標準への昇格と聞く相手の一覧化までを、貴社の現場の流れに合わせて一緒に組みます。
まずは無料の業務ムダ診断で、いまどの業務に負荷が溜まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、最初に数える一か月の置き方を一緒に決めましょう。
※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の件数・人数はすべて説明のための仮の数値です。本文中の手順は一般的な整理であり、成果を保証するものではありません。