受注のたびに配電盤を設計してつくる会社があります。同じ盤は二つとありません。見積を出す前に製造原価を積み上げますが、それは営業が図面を見ながら表計算に手で打ち込む仕事でした。
材料の単価は、いつの価格か分からない。作業の手間は、経験から見込む。人の手間は間接費にまとめて扱う。結果として、一台ごとに本当はいくらかかったのかを、誰も言えない状態でした。
見積を承認する立場の方の言葉です。積算した本人にしか中身が分からない。打ち間違いがあっても、承認する側には気づく手段がない。
困っていたのは、計算の手間そのものより、数字の根拠が人の頭と手元の表にしか無いことでした。
画面の流れは一本道です。図面を上げる。箱、材料、人の手間の順に原価を積む。盤ごとの製造原価を出す。見積金額に進む。
図面は読み取り、部品表から材料の候補を品目の台帳と突き合わせます。箱の重さと金額は、図面の寸法から出します。材料の単価は台帳の一か所に集め、仕入の実績から更新されるようにしました。計算の式はすべて画面で言葉として読めるので、承認する人が内訳を一行ずつたどれます。
候補が二つ以上あるときや、単価が無いときは、機械が勝手に一つを選びません。「ここを確かめてください」と、足りないものを画面に出します。推測した数字は出しません。人が直したところは、図面を読み直しても上書きしません。
原価の数字は、一度でも信用を失うと誰も見なくなります。見える化でいちばん守るべきものは、この信用だと考えています。
画面の並びは、その会社がもともと使っていた見積の算出表と同じにしました。過去の積算資料と突き合わせて、同じ答えが出るまで式を直しています。
つまずきもありました。図面によって部品表の書き方が二通りあったこと。予備品の別表が混ざって、数量が狂ったこと。いまは現場の担当の方が本番で使い、責任者の方が実際に触って気づいたことを寄せてくださり、それを直すという回し方をしています。
進める順番も、その会社の言葉で組み替えました。最初は商談の管理から提案しましたが、本当に困っているのは原価だと分かり、そちらを先にしました。
原価が、特定の人の頭や個人の表計算の中にあるなら、それは見えていないのと同じです。見える化とは、グラフを並べることではありません。誰が見ても、数字の根拠をたどれることです。
この記事は、BEYONDが伴走している会社で実際に動いている仕組みをもとに書いています。社名と数字は伏せています。
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