人に紐づいた数字を出すと、三つのことが起きます。どれも悪意なく起きます。
一つ目は、測られる行為が増える。訪問件数を出せば訪問は増えます。中身は問われていないので、中身は変わりません。
二つ目は、測られない行為が減る。件数に入らない仕事、たとえば他の担当の手伝いや、見込みの薄い客への対応が後回しになります。
三つ目は、分類が動く。手戻りを『追加作業』として記録する、遅延を『客先都合』に寄せる。どこに入れるかは現場が決めているので、ここは必ず動きます。
やめると、元の勘に戻ります。それは解決ではありません。
変えるのは測るかどうかではなく、誰に紐づけるかです。人に当てると歪み、工程や案件に当てると歪みにくい。理由は単純で、工程は自分の評価を気にしないからです。
同じ『納期遅れ15件』でも、担当者別に並べるのと工程別に並べるのでは、返ってくる情報がまったく違います。前者は言い訳が集まり、後者は原因が集まります。
人に紐づけてよい場面もあります。線は一つで、本人が自分の改善に使うときです。
この場合は見せ方を変えます。他人と並べず、本人の過去と並べる。先月の自分と比べた形なら、順位がつかないので歪める理由がありません。
逆にやってはいけないのが、個人別の一覧を全員に配ることです。順位がつくと、数字は順位を上げるために使われます。改善のために出したはずの紙が、競争の道具に変わります。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。数字を出して失敗した経験のほうが多い。
いちばん手痛かったのは、測り始めた数字を半年後に評価へ流用したことでした。悪気はなく、むしろ公平に見えると思った。その翌月から、報告の中身が変わりました。数字は良くなり、現場の実感とずれ始めました。
戻すのに一年かかりました。しかも完全には戻りませんでした。用途の約束は、一度破ると信用が戻らない種類の約束です。
もう一つ。工程別に並べ替えたときに起きた変化が意外でした。現場が自分から数字を出してくるようになった。自分が責められない前提があると、不都合な数字のほうが先に上がってきます。見える化の目的は数字を集めることではなく、都合の悪い数字が上がってくる状態を作ることでした。
いま何か測ろうとしているなら、決めるのは一つです。その数字を、評価に使うか使わないか。先に決めて、先に言う。ここだけで結果が変わります。
数字の粒度・鮮度・共有・判断への接続の4観点から、意思決定が遅れる原因をレーダーで特定します。登録不要・その場で結果。
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※本記事の例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の件数・時間はすべて説明のための仮の数値です。人事評価の制度設計や賃金への反映については関係法令にもとづく取扱いがあり、個別の対応は社会保険労務士および顧問の専門家にご確認ください。
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