数字が良い月の報告は短い。社長が労い、担当が恐縮し、次の議題に移ります。
この進め方は自然です。悪い月に原因を問うのは、改善のためだという了解があります。良い月に問うと、疑っているように聞こえる。
結果として、良い月の記録には数字だけが残ります。なぜ良かったかは、どこにも書かれていません。
半年後に同じことをやろうとしても、何をやったのか分からない。再現できないのは、記録していないからです。
そしてもう一つ起きます。良い月の数字が、実力として扱われます。
ここが逆になるところです。良い月を調べないことの損は、再現できないことだけではありません。
良い月が続くと、社長は判断を動かします。人を採る、設備を入れる、家賃の高い場所に移る。
良い月の中身が一過性なら、増えた固定費だけが残ります。大口の一件、競合の一時的な撤退、季節の偏り。
逆に再現できる要因なら、増やす判断は正しい。どちらなのかは、調べなければ分かりません。
つまり良い月を調べる目的は、反省ではありません。増やす判断の材料にするためです。
この説明をすると、良い月に原因を問うことへの抵抗が消えます。疑うためではなく、次に投じるために聞く。
調べないまま次の判断に進むと、起きやすいことが三つあります。
一つめ、目標を上げる。良い月を基準に次月の目標を置く。一過性なら未達が確定します。達成できない目標が続くと、目標そのものが機能しなくなります。
二つめ、固定費を増やす。人、設備、場所。増やした費用は毎月出ていきます。一度増やした固定費を戻すのは、増やすより難しい。
三つめ、値下げを許す。余裕があるので、少し安くても受ける判断が通ります。良い月が終わった後も、その単価が残ります。
三つのうち、二つめがいちばん効きます。だから固定費を増やす判断の前に、直近三か月の印を見る形にします。
新しい仕組みは要りません。いま使っている月次の表に、一列足すだけです。
列の名前は『原因』。中身は一行と、一過性か再現可能かの印。
書く人は、数字を出している人。社長が書くと、社長の見立てが記録になります。
そして一年たつと、十二行の記録ができます。これを並べると、自社の数字が何で動いているかが見えます。
多くの会社で、この十二行が初めての記録になります。それまでは良い月の理由が、誰の記憶にも残っていませんでした。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。月次の数字を会社をまたいで見ています。
やってしまったのは、良い月に人を採ったことでした。三か月続けて予算を超え、これは実力だと判断しました。
後から分かったのは、三か月の超過が同じ一件の分割納品だったことでした。大口が三回に分かれて入っていた。四か月目から元に戻りました。
採った人は残っているので、いまは別の仕事をしています。ただ採る判断の根拠は、間違っていました。
一列足してからは、この誤認が起きていません。印を見れば、超過が一過性かどうかが分かる。
もう一つ気づいたのは、良い月に原因を聞くと、現場が喜ぶことでした。悪い月だけ聞かれる状態は、現場から見れば責められているのと同じです。
いま月次の表があるなら、最初に一つだけやってください。直近で予算を大きく超えた月の原因を、一行書いてみる。書けないなら、その月はまだ記録されていません。
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※本記事に記載の金額、割合、件数はすべて説明のための仮の例です。特定の企業の実例ではありません。本文の整理は社内の管理資料および会議運営についてのものであり、決算書上の数値の取扱い、収益の計上時期については関係法令および会計基準にもとづく定めがあります。計上に関する判断は顧問税理士および会計事務所にご確認ください。
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