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#経営理念#意思決定
Management Column · 2026.10.12

会長室に毎朝来る先代と、
決められない社長(想定事例)

株も代表権も渡した。登記も済んだ。手続きとしては完了しています。
それでも先代が毎朝会社に出てくると、現場は新社長を飛ばして相談に行きます。
悪意ではありません。二十年相談してきた相手が、そこに居るだけです。以下は想定事例です。

1.【before】手続きは終わったのに、決まらない

従業員31名の設備工事会社。二年前に代表が交代しました。先代は会長として残り、株の大半も譲渡済みです。

新社長は四十代で、現場も数字も分かっています。それでも決裁が進みません。

理由は分かっていました。先代が毎朝八時に出社し、現場の責任者が立ち寄って相談していく。社長が知らないうちに方針が決まっていることがありました。

2.決裁が二本になると、何が起きるか

現場から見ると、相談先が二つあるのは便利です。通らなかったらもう一方に持っていける。

結果として起きるのは、通したい案件は先代へ、通らなくてよい案件は社長へという選別です。社長に上がってくるのは、難しい案件と、面倒な案件だけになります。

相談先が二つあると、現場は選ぶ。社長には、通しにくい案件だけが残る。

そして先代の側にも理由があります。聞かれたら答えるのが礼儀だと思っている。断るのは冷たいと感じる。だから答える。これが毎日続きます。

二年経って、新社長は『自分が決めた案件が一つも思い出せない』と言いました。

3.【turn】居場所を、一枚に書いた

二人で決めたのは、役職の整理ではありませんでした。口を出す範囲と、出さない範囲を一枚に書くこと。

書いたのは四項目だけです。これを社内に配りました。

4.一枚に書いた、四つの線

①出さない範囲を、先に書く
出す範囲から書くと際限がなくなります。先に『これには関与しない』を書く。この会社が書いたのは、人の採用と配置、値段の決定、取引先の選定の三つ。いちばん毎日発生するものから外すのが要点でした。ポイント:関与しないものから先に決める
②出す範囲は、頼まれたときだけに限る
残す役割は社長から相談されたときに答えることに限定しました。自分から口を出さない。相談するかどうかを決める権利を、社長側に置くのが肝でした。これで決裁の経路が一本になります。ポイント:相談するかを決めるのは、受ける側ではない
③現場から相談が来たときの返し方を、決めておく
ここが実務でいちばん効きました。『それは社長に聞いて』と返す一文を決めておく。冷たく聞こえないよう、言い方まで二人で決めます。その場で考えると、つい答えてしまいます。ポイント:断り方を用意しないと、つい答える
④居る時間と場所を、変える
毎朝同じ席に居ることが、相談の入口になっていました。出社を週二日にし、席を事務所の奥に移した。精神論ではなく物理的な配置の話です。通りがかりで相談できる位置から外すだけで、件数は目に見えて減りました。ポイント:気持ちより、座っている場所が効く

5.残す役割は、はっきりさせたほうがいい

線を引くと、先代の役割が減ります。ここを放っておくと、別の問題が出ます。

この会社が残したのは二つでした。長い付き合いの取引先への顔つなぎと、地域の付き合い。どちらも関係が人に付いていて、すぐには移せないものです。

重要なのは、残した役割にも終わりを書いたことです。取引先の引き継ぎは三年で完了させる、と期限を入れました。期限の無い役割は、そのまま十年続きます。

6.【after】相談が社長に戻った

半年後、現場の相談はほぼ社長に集まるようになりました。

変化として大きかったのは、社長の側ではなく先代の表情でした。線を引く前は、毎日呼ばれて答えているのに自分の立場が曖昧で、本人がいちばん落ち着かなかったそうです。

関与しないと書いてあると、答えないことが怠慢ではなくなる。これは引く側にとっても救いでした。

7.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。代替わりの場面は何度も見てきました。

揉める会社と揉めない会社の差は、先代の人柄ではありませんでした。むしろ面倒見のいい先代のほうが、相談を断れずに決裁が二本になります。

差が出たのは、渡したあとの役割を紙に書いたかどうかでした。口約束では毎日の場面に勝てません。現場が相談に来た瞬間に、書いてあるかどうかで対応が変わります。

もう一つ。この一枚は現場のために書くものです。二人の間の取り決めだと思って共有しないと、現場は今まで通り相談に行きます。配って初めて効きます。

いま承継を考えているなら、株や税の話と同じ時期に渡したあとの一枚を作ってください。渡してから書くより、渡す前に書くほうが角が立ちません。

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8.NORTH は、渡したあとの一枚づくりから一緒に立つ

NORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、承継の手続きを代行するのではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、関与しない範囲の書き出し → 相談を受ける条件の限定 → 現場への返し方の文面 → 残す役割と期限の設定までを、貴社の事情に合わせて一緒に整理します。

まずは無料の経営理念・浸透度診断で、決めたことが社内にどこまで届いているかを確かめてみてください。結果を見ながら、一枚に書く四つの線を一緒に決めましょう。

※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の年数・人数はすべて説明のための仮の数値です。役員の地位・報酬・権限に関する定めは会社法および定款にもとづく取扱いがあり、個別の判断は顧問の弁護士・税理士にご確認ください。

記事はここまで

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