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#経営理念#意思決定
Management Column · 2026.10.28

買った会社の朝礼を、
三か月変えなかった(想定事例)

同業の会社を引き受けました。従業員は向こうが14名、こちらが38名。
最初にやろうとしたのは、理念を揃えることでした。
着手して二週間で、現場が止まりました。以下は想定事例です。

1.【before】理念を揃えようとして、現場が止まった

引き受けたのは、隣県で同じ工事を請けている会社でした。前の社長が高齢で、後継者がいませんでした。

こちらの社長が最初に用意したのは、自社の理念の説明資料でした。朝礼で読む言葉も、自社のものに差し替える段取りでした。

説明会の翌週から、向こうの現場で報告が上がってこなくなりました。質問も来なくなった。

理由を聞きに行くと、ベテランの職長から言われました。自分たちのやってきたことは、間違いだったんですか。

社長にその意図はありませんでした。ただ資料の作りは、そう読めるものでした。

2.揃えたかったのは、不安だったから

社長が後から整理した動機は、経営の都合ではありませんでした。

買った会社の中身が見えない。どういう判断基準で仕事をしているか分からない。分からないことが不安で、揃えようとした。

揃えれば分かるようになるはずだ、という理屈です。ところが揃えても、分かるようにはなりません。

理念を揃えても、相手の判断基準は見えてこない。見えるのは、こちらの言葉を覚えたかどうかだけ。

相手の判断基準を知る方法は別にあります。現場で何を断っているか、何に時間をかけているかを見ること。

この会社の場合、見に行くと分かりました。向こうは納期を守ることに異常に厳しく、そのために利益を削っていました。

こちらは逆で、利益の線を先に引いて、無理な納期は断っていました。どちらも間違っていません。

3.【turn】守る一点だけを重ねた

社長が方針を変えました。理念は統合しない。朝礼の言葉も、向こうのまま。

代わりにやったのは、一点だけを重ねることでした。重ねた一点は、やらないことでした。

両社に共通して、これはやらないという一行を作る。作り方は、両社の社長が過去に断った案件を三件ずつ持ち寄ることでした。

六件を並べると、理由が一つに重なりました。検査の記録を残せない仕事は受けない。

4.決めた、四つのこと

①相手の理念は変えない、と最初に言う
引き受けた直後に明言します。朝礼の言葉、社名の呼び方、式典の形。変えないと言い切る。言わないと、いつ変えられるのかという不安が続きます。不安が続いている間、報告は上がってきません。変えないと決めるのは諦めではなく、順番の話です。変える必要が出たときに、改めて議題にすればいい。ポイント:変えないと明言するまで、報告は上がらない
②重ねるのは、やらないことを一行だけ
やることを揃えると、相手の商売の形を壊します。やらないことなら、両社の既存のやり方を残したまま重ねられます。作り方は、両社の社長が過去に断った案件を三件ずつ出し、理由の重なりを探す。重なりが見つからないなら、まだ重ねる時期ではありません。無理に作った一行は守られません。ポイント:断った案件を三件ずつ持ち寄り、理由の重なりを探す
③人の行き来を、言葉より先に作る
理念の説明より効いたのが、現場の相互応援でした。月に一度、互いの現場に一人ずつ入る。言葉で説明されるより、やり方を見るほうが早く伝わります。そして行き来が始まると、違いが具体的に話題になります。抽象的な理念の議論は起きません。応援は業務なので、処遇の扱いを先に決めておきます。ポイント:言葉で説明するより、現場に一人入れる
④統合を判断する日を、三年後に置く
永久に別々と決めると、いつまでも二社のままです。三年後に統合するかを判断する、と日付で決める。決まっていると、現場も期限付きの話として受け取れます。そして三年の間に、重ねる一行を増やすかどうかも見えてきます。この会社は三年後に判断すると書き、両社の社員に伝えました。ポイント:永久に別々ではなく、三年後に判断と書く

5.一点に、何を選ぶか

重ねる一行の選び方には基準があります。この会社が検査の記録を選んだのは、三つを満たしていたからでした。

一つめ、両社がすでにやっていた。新しく始めることではなく、両方が自然にやっていたことを言葉にした。

二つめ、客に対する約束として説明できる。社内の都合ではなく、外に言える内容である。

三つめ、守らなかったときに分かる。曖昧な言葉だと、守っているかどうかが判定できません。

逆に選ばなかったのは、お客様第一のような言葉でした。両社とも同意しますが、守らなかったときに分かりません。

なお、呼称や服務、評価の仕組みを変える場合には労働関係の法令および労働契約にもとづく定めがあります。変えない方針を取る場合も、承継された権利義務の範囲は確認が要ります。

6.【after】一年後に起きたこと

一年後、向こうの朝礼は以前のまま続いています。読む言葉も変わっていません。

変わったのは二つでした。現場の相互応援が月に二回に増えたことと、検査の記録の形が揃ったことでした。

記録の形が揃ったのは、重ねた一行があったからです。やらないことが共通なら、そのための道具は同じになる。

そして離職は一人も出ませんでした。社長が後から言ったのは、こうでした。

揃えようとしていた二週間が、いちばん危なかった。

7.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。会社が増えるたびに、この問題に当たってきました。

何度も見てきたのは、統合を急いだ側が人を失うことでした。理念の説明会をやった翌月に、ベテランが辞めます。

理由は理念の内容ではありません。これまでのやり方が否定されたと受け取られるからです。内容の良し悪しとは関係なく起きます。

連合として機能しているのは、各社の言葉を残しているからだと思われます。共通にしているのは、やらないことの数行だけです。

やって失敗したのは、共通の一行を会議で作ろうとしたことでした。抽象的な言葉が出てきて、誰も反対せず、誰も使いませんでした。

断った案件を持ち寄る形にしてから、使える一行になりました。過去の判断から作ると、守れる言葉になります。

いま会社を引き受けたところなら、最初に一つだけやってください。両社の社長が過去に断った案件を、三件ずつ書き出す。重なった理由が、重ねるべき一行です。

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8.NORTH は、重ねる一点の設計から一緒に立つ

NORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、統合の手順書を外から渡すのではありません。BEYOND Holdings 自身が会社を増やしながら各社の言葉を残してきた当事者として、変えない範囲の明言 → 断った案件からの一行づくり → 現場の行き来の設計 → 統合判断の日付までを、貴社の形に合わせて一緒に整理します。

まずは無料の経営理念・浸透度診断で、いま言葉がどこまで現場に届いているかを確かめてみてください。結果を見ながら、何を一点に選ぶかを一緒に決めましょう。

※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の人数・年数・件数はすべて説明のための仮の数値です。事業の譲受後に労働条件、就業規則、評価制度、呼称や服務の定めを変更する場合には、労働関係の法令および労働契約にもとづく定めがあり、変更の範囲と手続について確認が必要です。株式の取得や事業譲渡の形態によって、承継される権利義務の範囲も異なります。個別の対応については社会保険労務士および顧問弁護士に必ずご確認ください。

記事はここまで

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