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#経営理念#意思決定
Management Column · 2026.10.20

自分が書いた理念を、
自分で変えるとき(想定事例)

十二年前に、自分で書いた理念があります。当時の商売には合っていました。
いまの事業とは、ずれています。変えたい。ところが変えると、自分が言ってきたことを覆すように見える。
先代が作ったものを変えるのとは、別の難しさがあります。以下は想定事例です。

1.【before】自分で書いた言葉が、合わなくなった

従業員38名の内装工事業。創業から十五年、社長が二代目です。

理念は三年目に社長が自分で書きました。『地域の住まいを、長く守る』。当時は個人宅の改修が売上の八割でした。

いまは店舗と事務所の工事が六割を超えています。住まいという言葉が、仕事の中身と合っていません。

社員からも言われていました。朝礼で読む言葉と、その日向かう現場が違う。読み上げる時間が、形だけになっていた。

それでも二年、変えられませんでした。

2.変えられなかったのは、社員のためではなかった

社長の説明はこうでした。社員が混乱する。

ところが聞き取りをすると、混乱を心配していたのは社長だけでした。社員の反応は『むしろ変えてほしい』が多かった。

止めていたのは別のことでした。自分で書いたものを自分で変えるのは、間違っていたと認めることに見える。

先代が作った言葉なら、時代が変わったという説明ができます。自分が十二年前に書いたものだと、その説明が使えません。

自分で作ったものほど、変えにくい。変える理由を、自分の判断の誤りとして説明せざるを得なくなる。

ここで気づいたのは、変える理由を一回ごとに説明しようとしていることでした。だから毎回、自己批判の形になる。

3.【turn】言葉より先に、変える手続きを書いた

順番を変えました。新しい言葉を考えるのを一度やめて、どういうときに理念を見直すかを先に書くことにした。

理由は単純です。手続きがあれば、変更は手続きの実行になる。判断の否定ではなくなります。

書いたのは紙一枚です。四つのことだけを決めました。

4.手続きに書いた、四つのこと

①提案できるのは、社長だけではない
見直しを提案できる人を三人にしました。社長、現場の責任者、入社五年以上の社員の代表。社長だけが提案できる形にすると、変更はいつも社長の気分に見えます。複数の人が提案できる形にすると、提案そのものが制度の一部になります。実際に最初の提案は現場の責任者から出ました。ポイント:提案の入口を複数にすると、変更が個人の話にならない
②見直す頻度は、三年と、事業が変わったとき
毎年見直すと決めると、毎年揺れます。三年ごとの定期と、売上構成が大きく動いたときの臨時の二本立てにしました。臨時の基準は数字で書く。この会社は『主要な事業の売上構成が三割以上動いたとき』としました。曖昧なままだと、臨時はいつまでも来ません。ポイント:臨時の基準を数字で書くと、先延ばしが止まる
③根拠にするのは、売上ではなく迷った場面
業績を根拠にすると、悪い年に理念を変える話になります。根拠に使うのは、現場が判断に迷った場面の記録。受けるか断るか迷った仕事、客に説明しにくかったこと。この記録を三年ぶん集めると、言葉のどこが使えていないかが具体的に出ます。抽象的な議論になりません。ポイント:迷った場面の記録が、改訂の材料になる
④旧版を消さず、変えた理由を一行添えて残す
新しい言葉に差し替えて、古いものを消す会社が多い。消すと、変えたこと自体が隠れます。年と言葉と、変えた理由を一行。これを並べて残す。三代目が見たときに、この会社が何を見て判断を変えてきたかが読めます。残すと決めてあると、変えることへの抵抗も下がります。ポイント:変更の履歴が残ると、次の変更が軽くなる

5.言葉を変えるとき、変えない一点を先に決める

手続きを書いた後、言葉の検討に入りました。ここで最初にやったのは、変えない一点を決めることでした。

この会社が選んだのは『長く守る』の部分でした。対象が住まいから建物全般に広がっても、一度やった仕事を見続ける姿勢は変えない。

変えない一点があると、社員への説明が短くなります。変えたのは対象、変えていないのは姿勢。一文で済みます。

逆に全部を変えると、何を信じればいいかわからなくなります。混乱が起きるのは変えたときではなく、全部変えたときです。

なお、理念の言葉を変えるのに法令上の手続はありませんが、定款の目的や就業規則、社外に公表している表示と連動して書き換える場合は、それぞれに定めがあります。この会社は社外向けの表記だけを先に直し、他は専門家に確認してから進めました。

6.【after】残ったのは、言葉よりも手続きだった

半年後、新しい理念は朝礼で読まれています。社員の反応は、特別なものではありませんでした。

社長が意外だと言ったのは別のことでした。手続きを書いた紙のほうが、社内で話題になった。

理念は見直せるものだ、という前提が共有されたことで、他のことも言いやすくなった。評価の基準、朝礼の形、現場のルール。

変えられないものとして置かれていた一番上のものが動いたので、下のものも動かせると伝わったのだと思われます。

そして次の見直しは三年後です。日付が決まっているので、それまでは迷いません。

7.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。自分たちで書いた言葉を、自分たちで直してきました。

何度やってもわかるのは、変えにくさの正体が社員ではなく自分だということです。社員が混乱すると言っているとき、たいてい混乱しているのは書いた本人です。

効いたのは、手続きを先に書くことでした。変更が制度の実行になると、人格の話から離れます。

もう一つ。迷った場面の記録を取り始めたことが、思った以上に効きました。理念が使えていないという感覚は、記録がないと言葉にできません。記録があると、どの場面でどの言葉が足りないかが出ます。

逆にやって失敗したのは、社員全員で新しい言葉を考える会をやったことでした。出てきたのは平均的で、誰も反対しない言葉でした。言葉は社長が書き、手続きと材料を全員で持つ。この分け方のほうが機能しました。

いま理念が合っていないと感じているなら、最初に一つだけやってください。自社の理念は誰がどうやって変えられることになっているか、を確かめる。決まっていないなら、言葉の前にそれを決めるほうが先です。

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8.NORTH は、改訂の手続きから一緒に立つ

NORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、きれいな理念を外から書いて渡すのではありません。BEYOND Holdings 自身が自分たちの言葉を直してきた当事者として、改訂手続きの設計 → 迷った場面の記録の取り方 → 変えない一点の特定 → 旧版と理由の保存までを、貴社の商売の形に合わせて一緒に整理します。

まずは無料の経営理念・浸透度診断で、いま言葉がどこまで現場に届いているかを確かめてみてください。結果を見ながら、手続きのどこから書くかを一緒に決めましょう。

※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の年数・人数・回数はすべて説明のための仮の数値です。経営理念そのものは法令上の定めがある事項ではありませんが、定款の目的、就業規則、評価制度、社外に公表している表示などと連動して記載を変更する場合には、それぞれに手続および法令上の定めがあります。変更の範囲によっては司法書士・社会保険労務士・顧問弁護士への確認が必要です。

記事はここまで

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