従業員40名の建設資材商社。社長は62歳で、承継を考え始めて三年が経っていました。
候補は二人です。35歳の長男は五年前に入社し、仕入と在庫を見ています。48歳の営業部長は二十年勤め、主要な取引先を押さえています。
社長の迷いは率直なものでした。長男は若く、取引先の信用がまだ薄い。部長は実務で頼れるが、十数年後にまた承継が来る。どちらにも理由があり、決める理由が見つからない。
三年目に入って、社内の様子が変わりました。
案件の報告が、どちらか一方にだけ上がるようになった。社員がどちらに付くかを選び始めていました。悪意ではなく、将来どちらが上に立つかを読もうとした結果です。
そして二人の側にも変化がありました。互いの領域に口を出さなくなった。衝突を避けることが、連携を避けることになっていました。
社長が決めかねている理由は『どちらも悪くないから』でしたが、社内で起きていたのは決まらないことによる分断でした。
やったことの順番が肝でした。誰にするかを決める前に、いつ決めるかを決めて宣言した。
宣言したのは、二人と、幹部数名に対してです。『来年の三月に決める。基準はこれ』。決める日が決まると、それまでの期間が競争ではなく準備の期間になります。
役割を用意しても、辞める選択はあり得ます。これは失敗ではありません。
備えとして二つ決めておきます。その人が持っている取引先と業務の引き継ぎ範囲を事前に把握しておくこと。そして辞める場合の時期と条件を、本人と話せる関係のうちに決めておくこと。
決めないまま三年置くことのいちばんの危険は、関係が悪くなってから辞められることです。決めてから辞めるのと、決まらないまま辞めるのでは、引き継ぎの質がまったく違います。
なお、役員の選任や退任にともなう処遇、株式の承継には会社法および税法にもとづく取扱いがあり、顧問の弁護士および税理士への確認が前提です。
決定後、長男が後継となり、営業部長は営業全体の責任者として権限を広げました。
変化として見えたのは、案件の報告が両方に上がるようになったことです。どちらに付くかを読む必要がなくなったからです。
社長の振り返りは一言でした。決めるのが難しかったのではなく、決めないことの害を見ていなかった。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。承継の場面は何度も見てきました。
候補が二人いる会社で共通していたのは、社長が『まだ時間がある』と考えていることでした。本人の感覚では保留ですが、社内では毎日が選抜です。保留は、社長だけが使える言葉でした。
そして効いたのは、決定の中身より順番でした。日付を先に、基準を次に、決定と処遇を同じ日に。この順番を守った会社では、選ばれなかった側が残っています。決定と処遇を別の日にした会社では、ほぼ辞めていました。
もう一つ。二人を競わせて選ぶ、という設計は機能しませんでした。競争は短期の成果に向かうので、長く効く判断が後回しになります。見るべきは成績ではなく、十年単位で会社を持てるかでした。
いま候補が複数いるなら、決めるのは一つで足ります。いつ決めるかを、今月のうちに口に出す。誰にするかは、そのあとで間に合います。
NORTH(BEYOND PLAYBOOK)は、承継の手続きを代行するのではありません。BEYOND Holdings 自身が実業を回す当事者として、決める日の設定 → 基準の三つへの絞り込み → 選ばれなかった側の役割づくり → 二人で立つ発表の設計までを、貴社の事情に合わせて一緒に整理します。
まずは無料の経営理念・浸透度診断で、決めたことが社内にどこまで届いているかを確かめてみてください。結果を見ながら、決める日と基準を一緒に置きましょう。
※本記事の事例は、中小企業で起こりうる場面を想定して構成したものです。特定の企業の実例ではなく、記載の年数・人数はすべて説明のための仮の数値です。役員の選任、株式の承継、退任にともなう処遇については会社法および税法にもとづく取扱いがあり、個別の判断は顧問の弁護士および税理士にご確認ください。
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