全体で5割を超えたという数字は、大きな会社の動きに引っ張られています。前年の時点で、中小とスタートアップの合算は31.9%でした。
この差を予算の差として説明するのは簡単です。ただ実際に社長と話すと、止めているのは金額ではありません。
出てくるのは一つの言葉です。取らせたら、辞めるんじゃないか。
この心配には根拠があります。資格を取ると転職市場での値段が上がる。費用を出した会社が、育てた人を手放すことになる。
だから検討が止まります。止まっている間、現場では別のことが起きています。
支援の制度がない会社で、資格を取る人はゼロではありません。自分の金で、自分の時間で取ります。
自分で取った人は、会社に言いません。言う理由がないからです。そして、その資格を使える場所を社外で探します。
つまり辞めるのを防ぐために支援しないという判断が、辞める動機を作っている。
もう一つ。会社が必要な資格が、誰にも取られないまま残ります。本人の得にならない資格は、自腹では取られません。
結果として、本人の得になる資格だけが社内に増え、会社に要る資格は空いたままになります。
取った後に辞められるのが怖いので、何年か勤めないと費用を返してもらうという形にしたくなります。
この取り決めは、書き方によって法令上の問題になり得ます。労働基準法には賠償を予定する取り決めに関する定めがあり、裁判例でも争われてきた論点です。自己判断で条文を作るのは避けるべき領域です。
実務の面からも、縛りを強くするほど申請が来なくなります。何年も縛られる紙に署名してまで資格を取る人は少ない。
結果として、制度はあるが誰も使わない状態になります。これは支援がないのと同じで、しかも作った手間だけが残ります。
現実的なのは、金額の大きいものだけを貸付の形にして、残りは返還の話を持ち込まないことです。小さい金額で縛ると、割に合いません。
取った直後に辞める例は確かにあります。ただ理由を聞くと、資格そのものではありません。
取ったのに、何も変わらなかった。これが最も多い。手当も付かず、任される仕事も同じ。本人の中では、取ったことが否定されたように受け取られます。
逆に、取った後に任せる範囲が広がった人は残ります。会社がその資格を必要としていたことが、仕事の形で伝わるからです。
つまり辞めるかどうかを決めているのは、取得の支援ではなく取得後の配置です。
だから制度を作るときの順番は、費用からではありません。この資格を取った人に、何を任せるかを先に決める。任せるものが思いつかない資格は、会社としては右列、つまり福利厚生です。
私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。許認可の要件になる資格を抱えている会社が社内にあります。
やってみてわかったのは、左列と右列を分けていなかったことが混乱の原因だったことです。分ける前は、全部を同じ制度で扱って、申請のたびに社長が判断していました。
分けた後に起きたのは、意外なことでした。左列の資格に、こちらが指名する前に手が挙がった。会社が必要としている資格だと紙に書いてあるだけで、受け取り方が変わりました。
失敗もあります。右列の資格に半額を出す制度を作ったとき、申請が一件も来ませんでした。半額でも本人の持ち出しが残るうえ、取った後に何があるかを書いていなかった。
書き足したのは一行でした。取ったら、その分野の相談を担当してもらう。金額は変えていません。それから申請が来るようになりました。
いま支援の制度で迷っているなら、最初に一つだけやってください。自社の仕事に、ないと受けられない資格を書き出す。その一覧が左列です。費用の議論は、その後でできます。
PACK(BEYOND PLAYBOOK)は、支援制度の雛形を外から持ち込むのではありません。BEYOND Holdings 自身が許認可の要件となる資格を抱えて実業を回す当事者として、会社に要る資格の洗い出し → 費用の段の設定 → 試験日の扱いの決定 → 取得後に任せる範囲の明記までを、貴社の商売の形に合わせて一緒に整理します。
まずは無料の組織体力診断で、いま組織のどこに負荷が溜まっているかを確かめてみてください。結果を見ながら、どの資格から手を付けるかを一緒に決めましょう。
※統計の記述は、パーソルイノベーション株式会社が2026年1月8日に発表した『Reskilling Camp』企業におけるリスキリング施策の実態調査(2025年12月版)として複数の媒体が一致して伝える数値を参照しています。本稿執筆時点で当該リリースの原文は参照できていないため、原文での確認を推奨します。この調査は会社員本人が自身の所属企業について回答したものであり、企業を対象とした調査とは集計の基礎が異なります。また調査主体は学び直しの支援サービスを提供する事業者です。規模別の内訳のうち本稿で用いたのは前年の中小企業・スタートアップ合算値です。なお、費用の返還を求める取り決めについては労働基準法上の定めおよび裁判例との関係が問題になり得ます。資格手当の設計、試験日の勤務上の扱い、就業規則への定め方を含め、制度として整備する際は社会保険労務士および顧問弁護士に必ずご確認ください。本文中の金額および人数はすべて説明のための仮の例です。