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#新規事業#意思決定
Management Column · 2026.10.23

客を一社にまとめて渡すと、
客が損をする

やめる事業の客は、信頼できる同業一社にまとめて紹介する。
義理が立つように見えます。ところが渡された客は、乗り換え先の言い値になります。
選択肢が一つしかない状態を、こちらが作っていることになる。

1.畳むと決めた後に残る、いちばん面倒な仕事

撤退の判断そのものは、数字で決まります。続けるか、やめるか。基準があれば結論は出ます。

決めた後に残るのが、客の引き継ぎです。これが残っているせいで、撤退の実行が半年遅れることがあります。

遅れる理由は、面倒だからではありません。渡し方を間違えると、本業の信用まで傷むからです。

やめる事業の客は、本業でも取引がある相手であることが多い。切り方が悪いと、本業の取引まで細ります。

だから社長は慎重になり、慎重になりすぎて止まります。

2.まとめて渡すのが、いちばん楽でいちばん損

ここが逆になるところです。一社にまとめて渡す形は、渡す側にとって最も楽です。

一度の交渉で済み、相手も喜びます。客にも信頼できる会社を紹介しましたと言える。

まとめて渡した相手は、こちらに感謝する。感謝するのは、競争せずに客を得られたから。

ところが渡された客の側から見ると、比べる相手がいません。紹介された一社と、自分で探すかの二択になる。

自分で探す手間を考えると、たいてい紹介先を受け入れます。条件を比べずに受け入れた取引は、最初の条件がそのまま続きます。

一年後に客が気づくのは、前より高いということです。そしてその紹介をしたのは、こちらです。

本業の取引が残っている相手なら、この事実は後から効きます。義理を立てたつもりが、信用を削っていた。

3.渡す先の選び方と、渡し方

①渡す先は、二社以上を用意する
手間は増えますが、ここが核心です。二社に話をつけて、客に選ばせる。客は条件を比べられ、受け入れた取引に納得が残ります。二社に声をかけると、どちらも条件を良くしてきます。これは客のためだけではなく、こちらの信用のためです。二社が難しいなら、一社と『自分で探す場合の目安』を一緒に渡す形でも成り立ちます。ポイント:二社を用意するのは、客のためだけではない
②選ぶ基準は、価格ではなく小口を断らないかどうか
安い会社を探すと、たいてい小口が後回しにされます。やめる事業の客には、小さい取引の相手が必ず混ざっています。大きい客だけ受けて、小さい客を断る会社に渡すと、残された客がこちらに戻ってきます。確かめ方は一つ、いちばん小さい客の条件を先に聞く。そこを受けると言った会社だけを候補にします。ポイント:いちばん小さい客の条件を、先に聞く
③紹介の形を、三つから選んで決める
名前だけ渡す、三者で一度会う、条件を引き継いでもらう。この三つは手間と責任の重さが違います。付き合いの長い客は三者で会う、取引の小さい客は名前だけ、と分けていい。全部を同じ形でやろうとすると、いちばん重い形に引っ張られて進みません。客ごとに形を決めて、一覧に書きます。ポイント:全部を同じ形にしない。客ごとに重さを変える
④対価を受け取るかを、先に決める
紹介料を受け取ると、その後の責任がこちらに残ります。客から苦情が来たときに、紹介しただけですとは言いにくくなる。受け取らないなら、紹介の時点で関係が切れます。どちらでもいいが、曖昧にしない。取り決めの形によって契約上および法令上の取扱いが変わるので、ここは確認が要ります。客に伝えるかどうかも、同時に決めます。ポイント:受け取るなら責任が残る。曖昧にしない

4.渡した後に来る問い合わせの、期限を決める

事業を終えた後も、問い合わせは来ます。来るのは客だけではありません。渡した先からも来ます。

来る内容は三つです。過去の納品の履歴、仕様の経緯、前の担当者への連絡。

これに答え続けると、やめた事業の仕事が無期限に続きます。期限を決めます。

決め方は、いつまで答えるかと、誰が答えるかの二つ。半年なら半年と書いて、渡した先と客の両方に伝える。

そのうえで、期限内に渡し切るものを決めておく。過去の納品履歴と仕様書は、紙でもデータでも渡してしまう。顧客情報を他社へ提供する場合は同意の取得が必要になるので、この点は確認が要ります。

渡し切ってあれば、期限が来たときに断りやすい。渡していないものがあると、期限は守れません。

5.渡せない客が残ったとき

全員に引き継ぎ先が見つかるとは限りません。特殊な仕様、極端に小さい取引、支払が遅れている相手。

ここで無理に渡すと、渡した先に迷惑がかかります。一社に押し込むと、次に頼めなくなります。

残った客には、正直に伝えます。引き継ぎ先が見つからなかった、という事実をそのまま。

そのうえで二つ渡します。自分で探すときの選び方の目安と、最後の納品の記録。記録があれば、客は次の相手に経緯を説明できます。

この対応をした客が、本業のほうで残ったことが何度もあります。最後まで面倒を見た会社として記憶されるのは、きれいに引き継げた客より、引き継げなかった客のほうでした。

6.実業の当事者として言えること

私たちBEYONDは、外から助言するコンサルではなく、中小企業同士が連合して複数の実業を自分たちで回している当事者です。畳んだ事業もあり、他社から客を引き継いだこともあります。

引き継ぐ側に立ってわかったのは、一社にまとめて渡された客は、条件の話をしてこないということでした。比べる相手がいないので、提示した条件がそのまま通ります。

こちらとしては楽ですが、その客は一年後に離れました。比べていないので、後から比べたときに不満が出ます。

渡す側としてやった失敗は、いちばん大きい客から渡したことでした。大きい客は引き取り手がすぐ見つかります。残った小さい客に引き取り手がなく、最後まで残りました。

順番を変えてからは楽になりました。いちばん小さい客から話を始める。小さい客を受けると言った会社なら、大きい客も当然受けます。逆の順番ではこれが確かめられません。

いま畳む事業の客が残っているなら、最初に一つだけやってください。いちばん取引の小さい客の条件を書き出して、候補の会社に先に見せる。受けると言った会社だけが、候補です。

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7.SEED は、引き継ぎ先の選定から一緒に立つ

SEED(BEYOND PLAYBOOK)は、撤退の手順書を外から渡すのではありません。BEYOND Holdings 自身が事業を畳み、他社から客を引き継いできた当事者として、候補先の洗い出し → 小口の条件での選別 → 客ごとの紹介の形の決定 → 問い合わせ対応の期限設定までを、貴社の商売の形に合わせて一緒に整理します。

まずは無料の新規事業の種・診断で、自社にどんな種があるかを確かめてみてください。畳む話と撒く話は、同じ机の上で決めたほうが早く進みます。

※本記事に記載の社数、金額および期間はすべて説明のための仮の例です。特定の企業の実例ではありません。事業の終了にあたっては、既存の契約における解約の条件、最低取引量や専用在庫の取扱い、顧客情報を他社へ提供する場合の同意の取得など、契約上および法令上の定めがあります。顧客情報の第三者提供には個人情報の保護に関する法令上の要件があり、紹介の対価を受け取る取り決めについても契約の形によって取扱いが異なります。事業譲渡の形をとる場合はさらに別の手続が必要です。進める前に顧問弁護士に必ずご確認ください。なお、撤退そのものの進め方の順番については別稿で扱っています。

記事はここまで

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